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一人と独りの静電気   作者: 枕元
第三章 嘆き散らせど、その線は
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いつか見た君の笑顔は

 あの子はあの笑顔の裏で、いったい何を思っていたのだろうか。


 あの笑顔は、どういうつもりで浮かべたものだったのだろうか。


 どうだろう。あれははたして自然にでるようなものものだったのだろうか。


 

 今の私は、笑えているだろうか。


 

ーーーー



 恵美が学校に来たのは、火曜日のことだった。


 みんな恵美を心配していたようだけど、私は素直に心配することができなかった。


 それほどまでに、私の恵美に対する不信感は大きかった。


 もはや、私の中で喜多見がただの加害者である可能性は完全に排除されていた。


 事情は掴みきれない。だけど、恵美がただの被害者であるとは、その態度からどうしても思えなかったのだ。


 そんな私の態度を見てか、変化は唐突に訪れた。


 「何か舞華、よくわかんないけど今ハブられてるらしいよ?」


 聞いてしまったのだ。私がいるのに気づかなかったのだろう。たまたまその会話を聞いてしまった。


 別に、ハブられてはいなかった。私が恵美に話しかけていなかっただけで、別に遠ざけられたわけではなかった。


 だけど、この話が色んなところに広がったのだろうか、普段教室でよく話すような友達も、私と距離をとっていた。


 早さからしてただ広がるのを待っているとは思えない。

 つまり、故意。明確な、悪意。


 どうして。その答えは、すでに浮かんでいた。


 (多分、恵美だよね)


 それしか、考えられなかった。他に心当たりがなかった。


 何でよっていう気持ちよりも、()()()()って気持ちが強かった。


 やっぱり知られたくないことがあるんだって、そう思った。


 知りたいと思った。それが何なのか。


 だけど、彼は線を引いた。今私が立たされている場所と、一線を置いた。


 私はその線に一歩踏み入れてしまった。だから、こうなってしまった。


 彼は多分、これを恐れていたんだと思う。今更にしてわかった。

 きっと彼には、踏み込めばこうなるって、分かっていたんだ。


 やっぱり優しいなって思った。

 結局彼は自分の都合だけじゃなく、私のことまで考えていたんだって、胸が熱くなった。


 それだけに、申し訳なさもあった。彼が危惧した状況に、あっさりと陥ってしまった。


 彼の優しさを、無下にしてしまった。


 この胸に浮かんでいるのは、後悔だろうか。


 もしそうなら、それを認めたくはない。

 

 あの日見たあの子の笑顔に感じたものを、私は否定したくない。


 私は今、笑えているだろうか。

 

 一人になってなお、自然に笑えているだろうか。


 教室を出ることはなかった。視線が怖くて、机に突っ伏した。


 そんな私を、世界は見つけない。見ていない。


 何もせずに、救われることなんてない。


 だけど、行動するって勇気がいる。

 

 独りで間違いに立ち向かうって、すごく難しいんだ。


 ()()()()()()()()()()()()()


 こんなものには、絶対に屈しない。



 そう、思っていた。



ーーーー


 翌日、水曜日の朝のことだ。


 机が、少しだけ移動していた。


 周りの席から少しだけ距離が空くように、私の席が移動していた。


 私にはそれがすぐに、誰かの悪戯だって、悪意だって分かった。


 たったそれだけだった。


 それだけで私の心は折れてしまった。


 ほんの小さな悪意に見えるかもしれないが、そのほんの少しで、私の心はあっさりと屈したのだ。


 こんなもの耐えられないって、本心が悟ってしまった。


 私はそのまま、早退した。笑顔なんて浮かんでくるわけがなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] メンタル弱いと言うか打たれ弱いな彼女。
[一言] 早退理由ショボくて笑う
[気になる点] 悪い男2匹が目をつけるようなある程度の魅力をもった福村がこうも統率されて追いやられるってのは実際ちょっと不思議ですね。他人を傷つけることを生き甲斐とし、その機会を狙っているようなクズし…
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