表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人と独りの静電気   作者: 枕元
第二章 一人と独りの中間地点
10/75

わたあめ

 甘いものが好きだ。


 私が好きなのは特にわたあめ。

 

 好きだからと言って、毎日食べるわけでもない。食べるのは年に何度か、お祭りとかでだ。


 甘いものが好きだ。食べてて幸せになれる。

 嫌なことがあった時は、いつだって甘いものに逃げる。そして気持ちを切り替えるのだ。


 だけどそれは、甘いものが好きなだけで、元となる砂糖が好きなわけじゃない。


 甘みの元は砂糖だ。それは間違いない。でも、だからって砂糖を舐めたりしない。


 剥き出しのそれは、受け入れるには強すぎる。


 必要な過程を経て、甘さは人に受け入れられるようになるのだ。


 あの時の私は、その過程を経ていなかった。


 ただ責めて、ただ貶めて、ただ許さなかった。

 

 本人の弁解すら聞かずに、ただ決めつけたのだ。


 実際私は、怒ってもいたのだ。いけないことをしたお兄ちゃんに本心から怒ってた。


 もはや、それは糾弾とは呼べない。ただの一方的な暴力だ。

 

 それでもいつか、ちゃんと元通りになるって、そう信じてた。


 だけど気づいた頃にはお兄ちゃんは、すでに不登校になってしまった。


 それでも当時は、いじけているだけだと、自業自得だと思っていた。


 いつかきっと立ち直るって、底に叩き落とした当人のくせに、そう思っていた。


 でも、兄が立ち直ることはなかった。それどころか、家族との距離はたちまち離れていった。


 1番の原因は、お母さんの態度。明らかに、お兄ちゃんのことを煙たがっていた。


 そしてついに、兄は家を出ていってしまった。


 私はお母さんに止めるように言った。お母さんは止めなかったけど、ここで止めなきゃ、取り返しがつかなくなると思ったから。

 私はお兄ちゃんに、どうして出ていっちゃうのって聞いた。


 「言っても()()()()()()


 私にとって、決定的な一言だった。

 取り返しのつかない事態は、とっくに過ぎていたのだ。


 あの時話をちゃんと聞かなかった時点で、すでに手遅れだったのだ。


 そんな事態を引き起こした自分の罪を、今更ながらに自覚したのだった。


 そしてお兄ちゃんは独りになった。


 家を出て行かれてからも、私は何度かお兄ちゃんに会いに行った。


 繋がりが完全に途絶えてしまうのが怖かった。


 お兄ちゃんは、優しい人だった。そんなお兄ちゃんを私は大好きだった。


 そんな大切な人を傷つけた。


 私がわたあめを好きなのは、お兄ちゃんがわたあめを好きだったからだ。


 一つのわたあめを、二人で分け合った。そうやって育ってきた。


 そんな日々を、私は取り戻したい。


 だから私は、ある計画を実行に移すことにした。


 迷惑を承知で、それでも私はするんだ。


 私は覚悟に満ちた目で、お母さんにそれを打ち明けた。


 「私、お兄ちゃんとまた一緒に暮らしたい」

次回から本格的に二章が始まります。

ぜひ!下の☆☆☆☆☆から評価の方をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 妹の視点。 [気になる点] まあ他の方も指摘の通り、主人公の周囲がつくづく主人公の気持ち考えない、良くも悪くも。 妹さんと舞香嬢が主人公のこれからのキーパーソンなんでしょうが、ある意味自己…
[気になる点] 優しい所が好きだったのにそんな兄がイジメをしたと人から聞いただけでそれに全く疑いを持たなかったというのは凄い矛盾を感じるんだが…
[気になる点] 「お兄ちゃんは、優しい人だった。そんなお兄ちゃんを私は大好きだった。」とする心情と一切聞く耳を持たず疑うこともせず批難した言動にさすがに矛盾を感じるのですが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ