メジロと桜
梅の木には梅の蜜を求めてやってきたメジロ達でごった返している。
「梅の蜜は美味しい! 幸せだ。」
「そうッスね、アニキ。」
「だけどもっと美味しい蜜がある所知ってるんだ。」
「! 何処なンスか? アニキ。」
「じゃあ、これから行くか?」
「はい!」
梅の蜜より美味しい蜜があると聞いたメジロは嬉しそうに梅の木から飛び立った。
「アニキ、早く、早く。」
「そんなに慌てなくても逃げないよ。」
2羽メジロが飛び立って行ったが他のメジロ達はその事に気付いていない。余程梅の蜜が美味しいようだ。それよりも美味しい蜜とは何だろうか。
飛び立って少したつと桜の木が満開に咲いている所に着いた。
「桜がキレイッスね。」
「うん。」
「で、梅の蜜より美味しい蜜は何処にあるンスか?」
「ここだよ。」
「えっ、ここなンスか?」
「あぁ、厳密に言うとこれからだけど。」
「?」
「おっ、降ってきたな。少し雨宿りするぞ。」
「はい。」
天気雨が降りはじめ桜の花びらに雨が少しずつ溜まってきている。だからまわりには桜の蜜の匂いが漂いはじめた。
「いい匂いッスね、アニキ。」
「あぁ。」
やはり天気雨は直ぐに止んだ。
「おっ、止んだな、蜜吸いに行くぞ。」
「あっ、はい。」
「雨が降った後は花びらに水が溜まって水が甘くなるんだ。」
「そうッスね、アニキ。」
(連れて来てよかった。)
「雨の日が好きになれるかもしれないッス、アニキ。」
「それはよかった。」
「あっ、虹が出てるッスよ、アニキ。」
「おっ、キレイだな。」
虹も見られて美味しい蜜も吸えて幸せだと思った2羽のメジロだった。
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