神様も、厨二
たしかに食べたよ。
しかも4つ全部食べた。
これも因果律、なのか…?
納得したというか、負けた気がする。
オーバーキルで。
「で、俺に何をさせたいんだ?」
「君は君らしく生きればいい、異世界で」
「はあ?」
思わず声が出た。
「君が君らしく行動すれば、周りの状況がそれについてくる。君はそういう存在なんだよ」
「よく分からないけど、Tシャツにトランクスで異世界に放り出すんじゃないだろうな? 俺の眼鏡どこに行ったんだよ?」
お気に入りのアンダーリムの眼鏡。
納得するまでかなり探した。
「ハハッ、本当に面白いね、マサル君は。普通はまず間違いなく、チートスキルを要求されるところなのに」
「言えばくれるのか?」
「あげないよ。正確に言うと、あげる必要がない。ある意味、君は既にスキルを手にしているからね。君がこの世界で長いこと感じてきた欠落感を、君はスキルという形で取り戻すんだ。異世界でね」
なんか良いこと言おうとしてね? 神様。
神様は今度は俺の思考をスルーした。
「もちろん、君の欠落感の全てがスキルで埋まるとは思わない。異世界転移は結局のところ、君に対する救済ではなく、救済への試みでしかないんだ」
おいおい、それって…
「もちろん、寝起きのままで放り出したりはしない。君はいつも同じような格好をしているからね、分かりやすいよ。眼鏡に、黒のTシャツに、カーゴパンツにグレーのNのスニーカー」
否定はしない。
でも言わせてくれ。
みんな選び抜いたお気に入りなんだ。
気に入るとすぐ複数買いやら、素材違いや色違いや型番違いで揃えるから、同じように見えるだけなんだ。
「分かってるよ。一番気に入ってるやつを洗濯要らずの魔道具にしてあげよう。もちろん、壊れたりもしない。あとカーゴパンツのサイドポケットをマジックポケットにしてあげよう。これは僕からの気持ちだ」
「マジックポケット?」
「物が見た目よりたくさん入るようになる。便利だよ。異世界転移者がチートスキルと並んで欲しがるものだ」
「ありがたく受け取っておくよ」
「僕をもうちょっと、崇めてもいいよ?」
だがことわる、って言いたいけどマジックポケット取り上げられそうだからスルーだな。
「取り上げたりしないよ。君には感謝してるし、申し訳ないと思ってる。それじゃあ、今回の異世界転移で是非、使いたいと思ってた台詞があるんだけど、使っていいかな?」
「どうぞ」
「一度死ぬんだ、マサル。君は異世界で復活する」