雀魔流、そして因果律
「そう、雀魔流だ」
神様は言った。
また俺の思考を読みやがった。
俺の麻雀の根っこにあるのは、間違いなく雀魔流だ。
天運があり、地運があり、逆流と本流がある。
縦場や横場や色場があり、アヤ牌やツキ牌がある。
良い振り込みがあれば、悪いアガリもある。
大切なのは、「状態」を見極め、数々の状況に「気付き」そして卓上の因果律を識ることだ。
「でも俺は、雀魔流は好きだが雀魔道場で打ちたいとは思わない。色々な考え方の人がいて、色々な麻雀があって、それでいいと思っている。それに…」
「それに?」
「それに俺は、因果律を識ることはできたが、それに寄り添うことしかできなかった。一体化することはできなかったんだ」
珍しく沈黙を挟んでから、神様は答えた。
「やれやれ。君は本当に何も分かっていないんだね。因果律と本当の意味で一体化できるのは、魔王だけさ。寄り添うことができるだけでも、大したもんだ。そしてそれは、君が『魔王の弟』の称号を持つ者、だからだよ」
何かがストン、と腑に落ちた気がした。
「それにね」
神様は続けてこう言った。
「白い部屋で神様ときたら、普通もうちょっと、敬うものなんだよね。その不遜さも、君が『魔王の弟』の称号を持つ、証だ」
納得してしまいそうだ。
俺、チョロくないよね…?
そして何故か、神様の次の台詞で、俺は完落ちしてしまった。
「そもそも、まともな人間は、いくら寝起きとはいえ、手にいれた覚えもない枕元の夏みかんを食べたりしないから」