白い部屋
意識を取り戻すと、一面真っ白の、無機質な部屋にいた。
壁も、天井も、床も真っ白だ。
光源がどこにあるのかも分からないのに明るい。
まるで部屋全体が発光しているようだ。
窓ひとつ無い。
布団も無いし、カーテンもテーブルも無い。
眼鏡をかけていないからすぐには気付かなかったが、真っ白な部屋の中央に、真っ白な椅子が1脚、影も無く置かれていた。
立ち上がって椅子に腰かけると、背後から声が響いた。
「はじめまして、マサル君。出来たらその姿勢のまま、会話をしてもらえたら助かるよ」
振り向かない代わりに、返事もしなかった。
こちらの返事を待たずに相手は続けた。
「僕は、神様だ。君は『God Is Nowhere』というロジックを知っているよね?」
「神はどこにもいない。そして、今、ここにいる」
「さすがマサル君だ。話が早くて助かるよ。だから君が振り向いて僕の姿を確かめることに意味は無い」
神様は続けた。
「単刀直入に言おう。これはヘッドハンティングだ。異世界からの。君にとっても悪い話じゃないはずだよ」
「今の生活が気に入ってるんだ」
「棒読みの台詞だね。君はこのまま生きて、そして死んでいくつもりかい? 何かが欠落したまま。引き裂かれたまま。君の称号が泣いているよ」
称号?
「君の称号は『魔王の弟』だ」