42歳、厄年
目を覚ますと、枕元に夏みかんが4つ、置いてあった。
眼鏡をかけずに、半分手探りでスマホを取って、時刻を確認する。
4時18分。
この部屋に他に時計は無い。
殺風景な部屋だとよく言われる。
フローリングの上に、マットレス代わりの琉球畳を置き、その上に布団を敷いている。
最近は、ユニット畳、なんて呼ばれるようになって手に入りやすくなった。
スマホを取った後のローテーブルの上には、眼鏡と財布、小銭入れ、キーホルダーが並べて置いてある。
ベランダ窓の外はまだ薄暗い。
なるべく朝の日射しで自然に目を覚ましたいから、わざと普通の窓用の寸足らずなカーテンを付けている。
上部は目隠しされているけど、下部の磨りガラスは剥き出しになっている。
あとは備え付けの収納スペースだけの部屋だ。
テレビもパソコンも、机も椅子も無い。
スマホもワンセグ付いてないやつだし、スクーターしか無いからカーナビも無い。
昔、某集金を断る時に言った自分の台詞を思い出して、ちょっと気分が落ちた。
ミニマリストを気取るつもりは無いけど、ひとつひとつ拘って選んでるんだけどな。
何も無い部屋だね。
なんでフローリングにベッドじゃなくて畳?
テレビも無いの?
ちゃんとしたカーテン買ったら?
そんな事を言うやつは、二度と部屋に入れないだけだ。
一度、若い子に「部活の合宿の部屋を思い出します」って言われた時は、よく分からないけど許した。
鳥飼勝、42歳、厄年。
はぁ… 夏みかん、食べるか…