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空気をつかむ者  作者: YSR
3/9

第3話 油脂。

     一


 「あの日」の次の次の日。

 教室に入ると、クラス中の人々に取り囲まれた。

「ど・・・どうしたの?」

 そう聞いた瞬間、皆が口々に喋りだした。

「お前凄かったんだな!」

「指が物凄い敏感って本当!?」

「指紋とかも読み取れるんじゃね?」

 ・・・どこから漏れたのだろう。まあ事実だから、否定も出来ないしな・・・。

「まあ、そうだけど・・・」

「じゃあ俺の手触ってみてよ!」

「私も!」

「・・・本気(マジ)ですか・・・」

 そして結局、クラス中の人の手を触る羽目になった。


「どよ!俺の手!」

「うーん・・・ここら辺に古傷があるような・・・」

「あ、そうそう!さすがだな!」

「次は私よ!」

「・・・えー・・・なんかカサついてない?」

「え・・・そうなの?」

「うーん、なんか角質が剥がれてきてるから・・・」

「そうなの?ありがとー」

「いやいや・・・」

 なんか、休み時間、延々に同じことを繰り返しているような気がする。なぜだろう。

 まあ、別に悪いことではないし、「バレる」というリスクが消滅した分だけスクールライフを送りやすくなったわけだが、なんだかなぁ・・・。

 そうして地味に触りまくっていると、後ろからあの声がした。

「へぇー、水谷君ってそうなんだ」


     二


「え?」

 僕が振り向くとそこには、沖さんの姿がいた。

「それって、生まれつきなの?」

「え、ま、まあ・・・」

「すごいねー」

「う、うん」

 なんか、緊張してしまう。そんな時だった。

「それじゃあ私のも、触ってみてくれる?」

「・・・え?」

「触ってみてよ」

「は、はあ・・・」

 そう言えば、この人の肌は触ったことがない。どんなのだろう・・・。

 試しに触れてみた。・・・その瞬間、僕はのけぞった!

「・・・な、何ですか、これは・・・」

「え?どうだったの、水谷君」

「い、いや・・・あまりにもすべすべだから・・・」

「そうでしょ?肌には気を遣っているから」

「そ、そうですか・・・」

 気を遣っているなんてもんじゃない。なんなんだ、この肌は・・・。


 普通、人の皮膚は、凹凸があり、毛穴から毛も生え、時として傷や傷跡があり、皺もある。ホクロなんてしょっちゅうだ。そして表皮常在菌が1平方センチメートルあたりウン千万個以上も存在する「すみか」でもある。

 だから皮膚を触ると、指紋等の凹凸は勿論微生物の(うごめ)きまで分かる。悲しいが、それが現実なのだ。

 しかし彼女は違う。そんな凹凸が全くといって良いほどない(流石に汗を出すための汗孔は開いているが・・・)。辛うじて指紋等の紋様や関節部の皺はあるが、それぐらいだ。菌もほぼ存在しない。つまり、普通の人の肌ではないのだ。


 そんなことを考えながら他人の皮膚を触っていると、チャイムが鳴った。


     三


 それから数日後。事件が起きた。

 教室に入ると、二人の同級生が言い争いをしている。

「お前この携帯(いじ)っただろ!」

「弄ってないよ!」

「嘘つけ!」

「・・・何があったんですか・・・」

「実は・・・」

 ・・・聞くところによると、どーやら携帯のメールが一部消されていると言う。届いている筈のメールが存在しないと言うのだ。

 「そんな訳無いでしょ・・・もう一度確認してみたら・・・」と僕が返そうとしたその時。

 二人が同時に喋りかけてきた。

「『なあ水谷』」

「な・・・何?」

「『お前だったら分かるよな?』」

「・・・え、何が?」

「『携帯を触っているかいないかどうか!』」


 二人曰く、指先が敏感だったら指紋も読めるよな、ということらしい。どうやら、僕の能力に目を付けたようだ。僕も暇だったので、快く承諾した。


 ・・・しかし。これほど面倒だったとは。

 自分の手の指紋を無くすために手を石鹸で洗い、拭いた後すぐに携帯を触って指紋を紙に書き写し、そして相手の手を触ってその指紋を確認・・・・・・。恐ろしく長時間の作業となった。

 ・・・そして。携帯から最後(42個目)の指紋を取って照合した時。

「・・・これも違うね・・・」

「・・・そうか・・・」

「結局、『触ってない』ってなったのか・・・あ」

「え、何?」

「もしかしてカード(携帯に挿している)の方にバックアップ取ってるかも・・・!」

「・・・えええ!?」

 すぐに調べてみると、確かにメールの存在が確認された。思わず喜び合ったが、今までの苦労は何だったんだ・・・。

 思わずへたり込んだ時、チャイムが鳴ったのだった。

すいません、遅くなって・・・。

次は早く書きますので。

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