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第63話 破壊者の面目躍如 前編



 それよりも、取り乱している分隊長をどうにか宥める事の方が急務である。


 大人しく泣いている内に何とかしないと()()、「破壊者」の異名に恥じないマリエッタの才能が爆発し、とっても悲惨な結果を招くことになる。



「ぶ、分隊長。分隊長は素敵な女性ですって。我々が保証します!」


「そうですそうです。我々、第二の皆の憧れの存在なんですよ、分隊長は」


「シンディの言う通りです。だからそんな悲しまないでください、貴女は悪くない」


「そうですよ、全面的に奴が悪いんです!!」


「だから分隊長、お願いですから、お、落ち着いてっ、ね? 落ち着いてくださいよぉ~」


 必死になだめる部下達だが、マリエッタにはそれらの言葉など耳に入っていないようだ。


 一通り泣くと、元婚約者の不甲斐なさにまたやるせない感情が沸き上がってきてしまったようで……。


「アレがいいのか? あんな中身が魔境のような女が!? アレのどこが一人で生きて行けないほどか弱いっていうんだよぉ!?」


 今のマリエッタには、ユーミリアを尋問後、部下達と囚人の分析をしていた時の冷静さは欠片も残っていない。怒りのボルテージも上昇しっぱなしである。


「貴様の目は節穴か!? おのれギャレットめぇっ!!」


 ダンッ、と壊れかけの机を叩いて叫ぶ。



 バキバキバキ―――――――ッ!!!



「あっ」


「あぁぁ!?」


 部下達の見守る中、マリエッタの拳の衝撃に耐えられなかった机は、木っ端微塵に吹き飛んだのだった。




「……こ、こっこっ、こ、これはまずいですよっ、副長」


 今はまだ机だけで済んでいるが、きっとこれから更に部屋中の色々なものが破壊されていくはず。時間の問題だと忠告してくるシンディの顔色も悪い。


「お、お、落ち着け、シンディっ」


「ふ、副長こそ震えてますよ。落ち着いてくださいっ」


「わ、分かっている。だがこの状態になった隊長相手にどうしろとっ。止められるか!?」


「本気で暴れられたら私たち全員、束になっても敵わないですしね……」


 何しろ相手は、素手でも近衛で一、二を争うほどの猛者なのだ。


「だろ? それこそ魔法の言葉でもなきゃ無理だ。もうどうすんだよ、これっ」


「そんなの……どうしようって……どうすれば!?」



 怒りながら哭いている分隊長の様子に、タラリと冷や汗が背中を流れるが、どうにか彼女の怒りを鎮め……られないにしても暴れるのを阻止しければいけない。


 何しろここは黒の塔の尋問室。


 魔術師達のお膝元とあって、実験も兼ねた改良型の高価な魔道具が惜しげもなく置かれているのだ。


 魔力封じの結界を張る魔道具、防音の魔道具、そしてユーミリアの尋問でもリリィが使っていた魔力計測の魔道具など、各種揃っている。 尋問するには最高の環境なのだが、今は足枷でしかない。


 ……一体、全部壊されたら総額いくらになるのか。恐ろしくて考えたくない。



「よ、よしっ」


 迷っている時間はない。レイラ・スタンダード副長は命令する。


「いけっ、リリィ。お前が引き金を引いたんだ! 体を張って止めてこい! 先輩命令!」


「アワワワワッ、分かりました! リリィ、行きま~す!」


「シンディは魔力計測器を死守しろ! あれが一番、バカ高いんだ! 壊したら絶対、分隊員全員給料カットになるぞ! 行け!」


「了解であります、副長」


 もはや全てを止めるのは無理と判断した副長の指示により、せめて被害を最小限にしようと三人が素早く行動に移すものの……。


 マリエッタが手近な椅子をひっ掴む方が速かった。


「うわっ、マジか!」


「げっ、ちょっ、待っ……」


「分隊長、失礼しまぁす!」


 リリィも副長の命令通り、最大限に急いで怒れる分隊長に突進し、体当たりで止めに入ろうとしたのだが。


「くそっ、やっと見つけた婚約者をあの女ぁ!!!」



 ズドンッ!



「ふぎゃんっ」



「「「ぶ、分隊長ぉっ、リリィ――!!!?」」」



 健闘むなしく、すごい勢いで放り投げられた椅子ごと吹っ飛ばされ、轟音とともに壁に激突、ベシャっと崩れ落ちた。






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