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第4話 素質



「おおっ、素晴らしい!」


「何という光量の多さ……。これ程純粋な能力の持ち主など、近年なかったのでは?」


「その上、たった五歳でこれ程の魔力量をお持ちとはっ」


「これはもしや、聖女様のご誕生ではないか!?」


 授かることが少なく稀少な聖魔法の持ち主の上、聖女クラスの素質があると判明し、それまで固唾を呑んで成り行きを見守っていた周囲の神官達が沸き立った。


 聖女となって守護聖獣に仕える役目には、何故かいつも王家の血を濃く引く令嬢が選ばれる。その為、今回の鑑定結果に立ち会った彼らは、当然、彼女が次代の聖女として望まれるだろうと思ったのだ。




 早速、聖属性魔法の素質が判明した者の義務として、この国の守護聖獣である神竜様へお目通りを願うことになった。


 両親に見送られ、アンドレアは一人、神官達に連れられて大神殿の奥へと進む。

 奥宮を通り抜け外に出ると、目の前には神竜様の住まう大きな湖が広がっていた。蒼く透き通った美しい湖面に、陽光がキラキラと反射しているのが神秘的だった。


 いよいよこれから、この国の子供たちなら必ず一度は聞かされる、伝説の守護聖獣様にお会い出来るのだ。限られた者しか入ることが許されない、神聖で美しいこの場所で……。


 ――期待に胸が高鳴った。






 竜は元来、キラキラとした美しいものを好むものらしい。


 美の基準は人とは微妙に違い、外見よりも内面の美しさを重視して愛でる傾向にあるようだ。

 何故なら、彼らには瞬時に人の本質が見えてしまうから。いくら外見だけ美しく取り繕うとも無意味なのだ……。


 膨大な魔力を操る神竜には、人の心を読む事など容易い。その奥底に隠された本性まで簡単に暴いてしまうため、彼の方の存在の前では、自身を偽ることなど一切できない。


 その神竜からみても、アンドレアは美しかった。


 幼いながらも美しさの片鱗を覗かせる外見も好みだったが、聖なる祈りを捧げるのに相応しい、それに見合う優しくも気高い内面を持ち合わせているのが()()()、益々気に入った……。


「お初にお目にかかります、守護聖獣様。この国の民として生涯、お仕えすることを誓います」


 小さな淑女が物怖じせず、怯えもみせずに愛らしく挨拶をする。


 聖女候補者としての型通りの言葉を捧げられながらも、そこに邪念のない、純粋な敬愛の念が込められているのを感じ取った神竜は、すっかり彼女を気に入ってしまう。




 およそ二百五十年前、王家との盟約に従い、後にこの国の守護聖獣となられる神竜によって王都を囲むようにして張りめぐられた不可視の結界。


 聖域という、魔物が入り込めないこの大結界を張るには、聖なる祈りの力をもって守護聖獣の力を増幅させる、聖女の祈りの力が不可欠だ。

 竜との相性も重要なため、一目で気に入られたアンドレアが神竜に仕える事は、神殿からも強く要請もされていた。


 周辺諸国から王国を守るためにも必要なことで、王家もそれを望むと思われていた。




 勿論、アンドレア本人も、父であるキャメロン公爵もこの話をとても喜び、慎んでお受けするつもりだったのだ。第一王子との婚姻より余程、名誉なことだからである。


 しかし、国王がその話に待ったをかける。


 先代の聖女が高齢ながらもまだご存命なことを理由に、裏から手を回してもみ消そうと動いたのだ。

 最愛の側妃から生まれた第一王子を、権勢を誇る王妃の一族の魔の手からどうしても守りたかったのである。




 その結果、アンドレアの聖魔法は、いたって平凡な力しかないと言うように改竄され、ただの聖女候補の一人として扱われることになる。


 神殿からの反発もあり時間はかかったが、国王の当初の計画通り、表面上は問題なく第一王子の婚約者として指名される事になったのだった。




 ――そして、ロバートとアンドレアが共に八歳になった時。


 初めて二人は王宮にて顔を合わせることになる。


 完全に政略のための婚姻だったが、高位貴族の令嬢としてはそれも当然のこと。これからは婚約者として、王家に尽くしていかねばと思ったのを覚えている。






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