第8話 ミッション
家に帰った俺は、疲れた体を休ませるために風呂に入っていた。俺は風呂に入りながら、帰りに佐倉が話していたことを思い出していた。
ゲーセンからお互いの家に帰る時に佐倉が急に――
「朝倉君、あなたに部員の勧誘をお願いしたいの」と言ってきた。
「は?」
俺は佐倉が何を言っているのかがわからなかった......
「部活を設立するにはもっと部員が必要よ。だから朝倉君には部員の勧誘をしてもらいたいの。」
「えっ!?なんで俺が......」
「あなたにもゲーム部の副部長として、しっかり働いてもらうためよ。」
「俺っていつの間に副部長になってたの?......」
「とにかく、朝倉君には部員勧誘を頼むわ。私はまた別のことをしなくちゃいけないからね。」
「私の家はこっちだからまた明日ね。部員の勧誘頼んだわよ。」
「えっ!?俺はまだ、勧誘するなんて言ってないけど......」
俺の言い分も聞かず、佐倉は帰っていった......
前にも言った通り俺が入っているゲーム部は非公式だ。なぜ非公式かというと、部活を作るためには生徒会に正式な書類を提出しなければいけないからだ。さらに、俺の通っている私立鳳焔学園は、部活を自由に設立することはできるが、設立には三つの条件がある。一つ目の条件は、部員が四人以上いないといけないということ。二つ目の条件は、顧問の先生または外部からのコーチなどがいるということ。三つ目は部員全員がしっかり活動できる部室があるということ。この三つが部活をつくる最低条件だ。だが、俺達のゲーム部は顧問の先生がいるわけでもなく、ちゃんと活動できる部室があるわけでもなく、ましてや部員は俺と佐倉の二人だけだし......佐倉が、急いで部活設立の準備をする理由も俺にもわかるけど......
この勧誘は俺にとって、とても重大なことなのだ。
だって俺はコミュ障――
学校でも、ろくに人と会話すらしたことがない俺が、部活の部員勧誘なんてできるわけがない。まず、学校で話せるやつなんていないし......
いや、正確には2人喋れるやつがいるんだけど......
あいつらにゲーム部に入ってもらうのはちょっと......
俺はしばらく頭の中で部員勧誘のことを考えていたが、いい案が思い浮かばなかった......
「はぁ。」
俺は深くため息をついた。
「考えていてもラチがあかねぇ。もう寝るか。」
そう言って俺は風呂場を後にした。
ベッドの上に横になった俺は部屋の電気を消し、スマホのアラームをセットし、目を閉じようとした。
その時――
ピコンとスマホが鳴った。スマホの画面を見ると、俺が今ハマっているスマホゲームの新しいイベントの通知だった。俺はそのままその通知をスルーしようとしたが、そのイベントはランキング制だったため、俺は――
「1回だけならいいや」
と思い、アプリを開いた。スマホゲームとはとても怖いものだ。1回始めると止まらなくなってしまう。
「もう一回。後もう一回」
俺は1回しかしないつもりだったのに気付いたら、スマホゲームに夢中になっていた。
もう一度言う。スマホゲームは怖い。なぜなら、スマホゲームに夢中になっていた俺は、結局一睡もせずに朝を迎えたからだ。
「しまった......またやってしまった......」
と俺はつぶやき、眠い目をこすりながら学校に行く準備をした。