第4話 提案
気が付くと、俺はゲーセンの近くの公園のベンチに横になっていた。
「あら。気がついた?」
声のした方向を見ると、そこには佐倉が立っていた。
「あなたが急に倒れるから、ゲーセンの店員さんと一緒に運んだのよ。」
そうか――、俺はあの時……
「あなた、どうして急に倒れたの?」と佐倉が俺に聞いてきた。
「そ……それは……」コミュ障で長時間人としゃべっていると失神するなんて言えないし。
俺が返答に困っていると、佐倉が――
「言いたくないなら別にいいわ」
「でも……さっき見たものはすべて忘れて。」
「あなたは今日誰とも会ってない」
「わかった?」
「あ……あぁ」
「じゃあ今日はもう遅いから帰るわ」と言って佐倉は帰っていった。
俺は「コミュ障だからって、最後まで佐倉とまともに会話できないなんて情けないなぁ~」とつぶやきながら、夜の公園を一人で帰った。
次の日、俺は憂鬱な気持ちで学校に行った。
教室に入った俺は、また一人でゲームを始めた。
すると、なんと佐倉が俺に話しかけてきた。
俺も驚いたが、周りの人間も驚いている。なんせ、周りの人間が話しかけたり、委員会や係の仕事の話以外では自分から話さない佐倉が、俺に話しかけてきたからだ。
「ちょっといい?」
そう言って佐倉は俺の手を引っ張り、屋上まで連れ出した。
佐倉は――
「昨日のことまだ誰にも言ってないでしょうね。」と俺に真剣に話してきた。
「あぁ。まだ誰にも言ってない」
「そう。それならいいんだけど」
俺の返答を聞いて、佐倉は安心な表情を見せた。
「俺を連れ出した理由はそれだけか?」と俺は聞いた。
「いいえ。ちょっとあなたに提案したいことがあるの」と佐倉はさっきよりも真剣な表情で俺を見つめた。
この提案がきっかけで、残りの高校生活の歯車が動いていくことをこの時の俺はまだ知る余地もないのだ。