三品目 救えお姉ちゃん
料理できるかな?
ポーナ・モール、12歳。
私は生まれた環境と自分自身の性格の性もあり、男性は少し苦手意識が強いです……
今もテティお姉ちゃんと女性二人で旅をしています、だから一人だけで男の人とお話したの久しぶりでした……
そんなポーナですが、現在……お、お姫様抱っこされてます///
「タ、タツヤさんそのまま真っ直ぐです!」
「わかった!少しショートカットするぞ!」
「ひやぁ!?」
えぇ!?空中を蹴って飛んでる!?なにこの人!?
「よし、見晴らしが良くなった!」
驚いている間に木々より高い位置移動している。
「わゎ!?な、なんで空飛んでるんですか!?」
「異世界ってこれぐらい普通なんじゃ…」
「上級魔導士でもこんなこと出来ないですよ!?」
あれ?そんなにおかしいか?
「って顔しないでくださいよぉぉぉ!?た、たかいぃぃですぅぅぅ!?」
下手に人を抱えたまま飛ばないようにしようとそっと決めた龍也であった。
「あれは?」
慌てた様子のポーナを他所に、視線を森の奥に向ける。
「湖?しかも戦闘中か?」
視線の先には湖が見え、時々大きな水飛沫が飛んでいるのが見えた。
「ポーナ、はぐれたのは湖か?」
ポーナに視線を向けるとガッシリ体を掴み顔を埋めるように密着している
「ま、まだ飛んでますか!!!???」
「…………」
「タ、タツヤさん返事してくださいよ!!??い、いますよねタツヤさん居ますよね!?」
いや返事しなくても俺がいるのわかるだろ……
居なかったら落ちてるし……、そんなポーナを安心させるように抱く力を少し強める。
「は、離さないで下さいね!!!???」
「絶対離さないし、絶対離れないから安心しろ」
「絶対ですよ!!約束ですよ!!!」
思わず笑みがこぼれる。
「よし!ポーナ湖の近くに降りるから捕まってろよ!」
「ひゃあぃ!!」
「返事はいい!舌噛むなよ!!」
むぐっと口を閉じたポーナを確認し、湖へと急降下するのであった。
「ほんとうるさいオオカミにゃ!!」
キッと目の前に立つ黒毛に覆われた『ヘルウルフ』と呼ばれる魔族に威嚇をする獣族の猫人。
「そんな減らず口を叩く余裕があるなら早く小娘を助けに行ったらどうだ?」
挑発染みたセリフ吐きながら、空手家を思わせるような構えで猫人を威圧する。
「言われなくてもそうするにゃ!!」
猫人は自身の魔力を高める、その魔力は総量は中々のもので猫人の青いショートヘアが波の様に揺れる。
「さすが『海猫のテティ』と称されただけあるな」
「オオカミに褒められてもムカつくだけにゃ!!」
バッと自分の前に手をかざすと湖の水がうねりを上げテティを覆う。
「『アムピトリーキャット』」
するとテティの体に薄く水が張り、着ている水着の上に水で出来たノースリーブのロングコートを羽織る姿になる。
「そこを退くにゃ!!!!」
凄まじい速度により姿が消えた様に錯覚させる。
そしてヘルウルフに向けて、巨大化させた水の爪を振り下ろす。
「にゃあ!!!」
しかしヘルウルフは攻撃を避けそうとせず正拳突きで真っ正面から迎え撃つ。
「はあ!!!」
「にゃ!?」
正拳突きの威力で水の爪が一部弾け飛ぶ、それと同時に危険を察知し後方へ跳ぶテティ。
「やるな海猫」
先程テティが居た場所にもう一匹の影の様に黒いヘルウルフが踵落としを繰り出していた。
「………固有魔法かにゃ」
「これでも一応幹部だからな、それだけの力はあるさ」
このままじゃポーナを助けに行けない……と焦るテティ
倒す事よりこの場から離脱するため接近戦を止め、遠距離攻撃に出る。
「一撃増えたからってなんにゃ!これならどうにゃ!!」
羽織っているコートから水滴地面に落ちると、水が猫の形をして6匹現れる。
「『ウォーターキャット』!あのオオカミを倒すにゃ!」
その声に反応し素早くヘルウルフを囲うように移動し三匹は接近し爪で攻撃。
後は後方から口から水を絞りレーザーの様に攻撃する。
「無駄だ!!!」
接近した猫はすぐさま蹴りと拳で潰し、後方の猫は突如現れた影ヘルウルフに潰される。
連携もあっさりと破られる。
(やっぱり倒さないとポーナの所に行けないにゃ)
「そろそろ本気を出したらどうだ?」
「何をいってるにゃ、充分本気にゃ」
かかかっと笑うヘルウルフは楽しそうに質問する。
「たまたま散歩してたらこんな強敵に会えたんだ、本気のお前と戦わないともったいないだろ?」
「そんな戦闘狂に付き合ってる暇なんてないにゃ!」
「そう言うと思ってあの娘は生け捕りにするつもりで追わせた」
「お前……何をするつもりにゃ」
「なに、お前にやる気になってもらうために目の前で殺してやろうと思ってな」
その言葉に怒りで思わず飛びかかりそうになる。
「このくそ魔族……殺してやるにゃ!!!」
テティの魔力が更に膨れ上がる。
「俺はただ強き者と戦いたい、そのためならなんでもする」
嬉しそうに構え直しテティに向き直る。
「さっきの様に行くと思うにゃ」
すっとテティが目を閉じると湖の水から人を軽く乗せられる様な大きさの水猫が数匹現れる。
そしてテティ自身も変化し始め、テティの体が水の様になり、テティの形を型どった水が現れる。
「ほぉ……精霊に好かれると体にも影響させる程の魔法を得られると聞いたことがあったが、まさかお前が出来るとは」
「『海猫のテティ』をなめてもらっちゃ困るにゃ」
空気が一段と重くなり、殺気が満ちる。
「行くぞ海猫!!!」
「そのうるさい口黙らせてやるにゃ!!」
その声を皮切り戦闘を開始する、しかし
「ちょっと待てそこのやつら!!!」
「も、もう地面つきましたか???」
空中からの声に動きを止める。
一人の青年と抱えられている少女が現れる。
龍也は思わず凝視してしまう。
(黒いオオカミに…水?いや猫?)
見たことのない姿に、警戒を緩めずに地面に降りる。
「この匂い……!?」
そして着地した瞬間、膨大な殺気をまとった水人間?が突っ込んで来た。
「ポーナを返すにゃ!!!」
「えっ?テティお姉ちゃん!?」
声に反応し龍也にうずめていた顔を上げ驚きの表情をする。
「あの水が姉ちゃんなのか!?」
「はい!!」
ニパァっと笑顔で答える妹、殺気で顔?を歪める姉、俺はどうしたら…
「逃げた小娘か」
呟くような声が背後から聞こえた。
(前方に猫、後方にオオカミ…異世界に来てもロクなことがないな)
はぁっとため息をつき、抱えているポーナをテティに放り投げ、それと同時にオオカミに回し蹴りを繰り出す。
「きゃ!?」
「ポーナにゃ!?」
「なに!?」
回し蹴りによりヘルウルフは湖に飛ばされる。
「ふぅ……ポーナ無事か?」
ポーナに視線を向けると水の姿から戻ったテティに抱えられている。
「大丈夫です!」
元気よく答えるポーナ、少しぐらい放り投げたこと怒ってもいいと思うぞ?俺が言うのもおかしいけど…
「ポーナが怪我したらどうするにゃ!!」
ふしゃー!!っと猫に似た威嚇をするテティ。代わりに姉に怒られた。
「しかしポーナの姉ちゃんが猫耳付きとは思ってなかった」
基本的に人間と同じなんだが、猫のように猫耳と尻尾が付いている。
「にゃんだがバカにされてる気がするにゃ!?」
俺の言葉にプルプルと怒り、水に似た青い髪が揺れ、小ぶりな胸も揺れ……てはないな。
「うちの胸を見て哀れな表情するにゃ!!!」
「テティお姉ちゃん落ち着いて!?」
わたわたしてる二人をよそに、湖に顔を向ける。
「ポーナの姉ちゃん、さっきのオオカミは敵か?」
ふざけた表情から真剣な表情になる。
「敵、しかもかなり強い」
「そうか…よし二人とも少し離れてろ」
「えっ?」
ヘルウルフの強さを知っているテティは龍也の言葉が一瞬理解出来なかった。
「なにアホにゃこと言ってるにゃ!?人族が勝てる相手じゃないにゃ!?」
「ポーナ、姉ちゃんを説得よろしく」
「普通なら止めるんですけど…タツヤさんなら何とかなるって気がします」
にこやか笑うポーナに驚くテティ
「あいつなに者にゃポーナにゃ…」
「えっと…私もわからないです」
困ったように笑う。
「そうえばポーナにもしっかり自己紹介してなかったな」
ポーナの言葉に反応し二人を見る。
「改めて俺は天道龍也」
そして嬉しそうに笑う
「料理人を目指す元武術家だ」
※料理人です。