二品目 果実娘ポーナ
異世界転移を果たす龍也、果たしてなにが起こるのやら……
澄み通る青い空、眼下に広がる広大な自然
「おぉ……ビルとか建物とかもなんもねぇ……」
思わず前に居た日本と違うなぁ~とのんびり景色を眺める。
「おぉ!?見たこともない鳥だ!?」
すれ違い様を狙い素手で捕まえようと考えるが新天地で最初に鳥か?っと思い止める。
そんな龍也はゴォーっと勢い良く音を発て空中を凄いスピードで落下していく。
なぜこうなったと言うと、女神の急遽の異世界転移の影響により転移先となる座標はてきとうとなり空中に放り出されたのである。
高さは数値にして4000メートル程、生身一つでスカイダイビングをしているようなものだ。
「いや~さすがの俺もこんな高さから落ちたことないな……そろそろ勢い殺すか!」
スカイダイビングの様に落下していく龍也は拳に気を溜め地上に向かって放つ
「はぁ!」
バンッと空中で何かが破裂すると龍也の勢いが一瞬止まり、止まった力を利用しクルッと回り空中を立つ様な体勢を取り、拳と同様な技を脚で空中を蹴るように行い、壁蹴りの要領で空中を蹴りながらを移動しながら地上に向かう。
「死ぬ前と変わらず気も使えるし、傷も癒えてる……さすが女神だな」
『気』とは生まれもった生命エネルギー、外気に宿る自然エネルギーなど、目に見えない力を操ることで『身体強化』『気擊』など様々な戦闘に役立つ技術だ。
落下速度を落とし無事森の中に着地する龍也。
「ふぅ……」
ゆっくりと周囲を見渡し深呼吸。
「……俺生き返ってんだな」
叫びたくなる気持ちを押さえ、一度周りの気配を確認。
誰も居ないことがわかったので、気合いを入れ直すように体を動かす。
「はぁ!!せぃ!!おらっ!!」
基本的な動作をあらかた確認し一息つく。
「とりあえず正常に身体も動くし問題ないかな」
木を背もたれにして座ると、なにかを踏んだ様な感覚した。
「んっ?」
尻の下を確認すると可愛らしい手紙が置いてあった。
「なんだこれ……」
もしかしたら落とし物?と考えるが封の所に差出人の名前があった。
『天龍様の大ファン 女神より♥』
「…………」
一瞬破りたくなる衝動に駈られるが、気持ちを落ち着かせ封を開ける。
『親愛なる天龍様へ
この手紙を見ているということは無事に異世界への転移が完了したのですね!!
今から基本的な事をお教えしますね!!』
「なるほど、確かに何も知らされず転移されたからな」
大事な手紙だと認識を改め読み始める。
『その世界では地球とは異なり、異世界では皆が『ステイタス』と呼ばれる機能が備わっています!』
「すていたす?」
『ふふふっ天龍様の事でしょうから「すていたす?」とかでも可愛らしく呟いてるんじゃありませんか?』
「……ムカつくな」
『や、破かないで下さいね!?絶対ですよ!?』
「こいつわざとだよな絶対……」
気にしたら負けだと読み進める。
『簡単には言いますとその人の実力を数値化したものです!
基本的に何個かの項目とその人が取得しているスキルが記載されます!
あっ今絶対「すきる?」とか思いましたよね?ふふふっ天龍様のことはお見通しですよ❤』
「……あいつ目の前に居ないのに腹立つな」
龍也の機嫌を気にせず文は続く
『主に基本項目は、『パワー』『スピード』『ディフェンス』『マジック』『テクニック』そして『スキル』になります!』
『心の中で「ステイタス」と念じれば、目の前にステイタス画面が出てきますよ!』
(なるほど……ステイタス表示)
~~~~~
テンドウタツヤ 男 17歳 Lv1
〈パワー〉 950
〈スピード〉970
〈ディフェンス〉930
〈マジック〉0
〈テクニック〉999
〈スキル〉『伝説の料理人 Lv1』
『食材鑑定 Lv1』
『天道流武術 Lv100』
~~~~~
「おぉ~!これが『ステイタス』か!」
そして驚く事に『スキル』欄に『伝説の料理人』『食材鑑定』と料理に関するスキルが二つも!!!
思わずニヤニヤが止まらない龍也。
『それが天龍様のステイタスになります!
私はステイタスを確認してないので憶測ではありますが……
恐らくこの世界でも最強の部類になるステイタスになってると思います!』
改めて自分のステイタスを見直す
『基本数値は最高が999となってます!スキルはLv表示になりそちらは100が最高となります!』
『一応名前の横にもLvがあるんですけど、それは戦闘回数とか強敵とのバトルに勝つと上がったりするものなので、天龍様は新しい世界ですとLv1扱いになってしまうんですよ……』
「なるほどな、確かにまだ戦ってもないしな」
ふーんと興味無さげに納得する。
『他の数値は鍛練だったりで上がるんですけど、自身のLvに関してはイベント的な事をやってもらえればあがりますので!』
正直龍也は『料理人』になるから特に戦闘しないと思っていたので
強さとかはどうでも良かった。
「そんなことより『スキル』について説明はないのかよ……」
スキルの内容が書かれている文を探す。
なぜか無駄に俺の評価についての文が多いのでかなり飛ばして読む。
「あった!ってほぼ最後の方かよ」
後付けの様に最後の一枚に書かれていた。
『『スキル』に関しては『ステイタス』を表示して、詳細を知りたいスキルを見たいと念じれば詳細が出てきます!』
「よし……」
『ステイタス』を表示してわくわくする気持ちを押さえ詳細を見る。
「んっ?」
しかし詳細と念じる前に複数の気配を感じとる。
「……三人?いや二匹と一人か?」
気配の察知には自信があった龍也だったが、今まで感じたことのない気配に少し警戒心を高め立ち上がる。
(左から来るな……)
左側の茂みを見つめるとそこから子どもが飛び出してきた。
「きゃ!?」
一心不乱に逃げていたのか龍也に気づかずぶつかってしまう。
龍也は少し驚いていた、自分が異世界に転移したと認識していたので
人間はいないんじゃないか?と考えていたのだ。
(正直化け物みたいなやつが出てくると思ったが)
よく見ると11、12歳ぐらいの可愛らしい雰囲気の少女だ。
しかし給仕服の様な服は木々などにひっかかりあちらこちら破け、
肩掛けしているバックもボロボロ、茶髪の綺麗なセミロングも葉っぱなどで汚れている。
しかし何より涙で可愛らしい顔がぐちゃぐちゃだ。
「大丈夫か?」
そっと腰を折り手を差し出す。
「……………」
ポカンと手と俺の顔を見て、固まっている。
(もしかして言葉がわからないか?)
風貌が普通に人間などで自然と話しかけってしまった、日本語は普通通じる訳ないかと考えていると。
バキバキと少女が来た方向から先程気配が近づいてくる。
そしてハッと恐怖の色に染まる少女は俺を見て
「に、逃げて下さい!!わ、悪い魔族が来ますから早く!!」
突然の大声にびっくりしてしまうが、言葉が分かるので一安心する龍也。
少女の懇願もむなしく茂みから二匹の狼が出てくる。
しかし龍也の知る狼とはかなり異なった二足歩行をする狼が現れた。
「人族ごときが逃げられると思ったか!」
「兄貴~俺腹ペコでさ~」
一匹は俺と同じぐらいの背丈の白毛の二足歩行狼?
そして弟分?らしい一匹は2メートルは越え、身体も俺より一回りデカイ。
「ひぃ」
少女が思わず小さく悲鳴をあげる。
「ザング、こいつは生け捕りだとグラード様の言い付けだ」
「グラード様に怒られたくないから我慢する……」
こう会話している所を見ると愛嬌も出てくるが外見はそうでもない。
毛皮越しにわかる隆起している筋肉、獰猛な牙、人間と同じ腰巻きなどをし、防具なども着けている。
(皮鎧、脛当て、急所となる部分を守る程度か……しかも言葉も喋る、知能もそれなりにあると言う事か)
「んっ?お前誰だ」
スッと少女の壁になるように前に立つ。
「一つ匂いが増えているた思ったがお前の匂いか」
「ラドューの兄貴!こいつなら食べてもいいかな!」
「……獲物を捕まろと言われたのはその女だけだ、いいだろう」
「やった!!飯だ!!」
どすんどすんと巨漢を揺らし喜びを表現する。
「……お前らこの子に何か怨みでもあるのか?」
「恐怖して喋れないと思っていたが、案外落ち着いてるな人族」
そして嘲笑うよう龍也に向け語り出す。
「別に怨みなどない、魔族が人族を殺す理由など必要か?」
「…………」
「そいつはまだ幸運な方さ、殺される前にグラード様に可愛がって貰えるのだからな!!」
ケタケタと笑い始める。
少女の顔が青いを通り越して白くなる。
「兄貴~良いからその男殺そうよ~」
「そうだな、グラード様を待たせると俺らが痛い目に遭う」
ズンっとザングと呼ばれる狼が前に出るが、それと同時に少女が俺の前に出てくる。
「わ、わたしはどうなってもいいので……こ、この人は助けて下さい!!」
死に直面しながらも巻き込んでしまったおれの身助け出そうと勇気を出している。
「人族は馬鹿だな……殺せザング」
獰猛な笑みを浮かべ、少女もろともするどい爪で殺しに来る。
「あぁ…………」
少女は絶望の表情し、眼を閉じた。
バンッ!!!!
「………………???」
しかし少女に襲う衝撃が来ず、恐る恐る目を開ける。
「くぐっ!??な、なんだお前!??」
鋭い爪を素手でつかみ、引くことも押すことさせず完璧にその場で押さえる。
「…どこの世界も腐ってる部分は変わらねぇな」
先程のまで優位に位置し殺しにかかってきてた二匹の狼は固まっていた。
龍也の放つ殺気と気迫に体がいうことを聞かず、呼吸も忘れる程恐怖する。
「異世界だろうと、化け物だろうと、悪党は絶対許さん」
死の予感にハッと体が動きザングは龍也に攻撃をしかける
「ガァアア!!」
「よせザング!?」
バーーン!!!っと後ろから音をしたことに気付きラドューは後ろにある木が倒れザングが下敷きになっているのを確認する。
「なっ」
そして前を向いたら既に龍也が立っている。
「大丈夫殺してはない、ただ死ぬ程痛い思いをさせるだけだ」
「が、ガァアア!!!!」
凄まじいスピードで両爪をクロスするように襲いかかる
「きゃうん」
が可愛らしい鳴き声を発しザングと同じ様木にぶつかり押し潰される。
「………………えっ?」
ポカーンとする少女は狼と龍也を交互に見る。
端から見ると突然の龍也がブレたように動き、狼が勝手に飛んで行った様に見えてる。
しかし龍也はしっかり気を込めた拳を一発ずつ腹に叩き込んだのだ。
「大丈夫か?ってもかなりボロボロだもんな」
ポカーンとする少女を余所に少女立たせ葉っぱなどでとってあげる。
「あ、あの……」
「んっ?」
「た、助けてくださりありがとうございます!」
凄い勢いで頭を下げ、その勢いでバックも入っていた荷物が出てしまう。
「あぁ!?」
「おっと」
落ちる前に素早くキャッチする龍也
「……これは果実?」
「は、はい!ミ、ミーナの実です!」
手に取った実は地球じゃ見たこともない実だ……
見た目はリンゴサイズの丸い実だな、でも色がオレンジで少し淡く光ってる?それに触るとわかるが実がしっかりしてる。
(……食べてみたい)
「よ、良かったら食べますか?」
「い、いいのか!?」
「は、はい!よ、よだれ垂れてますし……」
おっと気付かないうちによだれ垂れていたのか……
「なら、お言葉に甘えて……頂きます。」
がぶり ごっくん
(う、旨い!!??)
(な、なんだこの甘み!?しかし柑橘類にも似た味もあるが上手く甘みとマッチしてる……)
(食感も想像していたのと全然違う!外見からだとリンゴみたいな感じかと思ったけど、柔らかな果物みたいだ!!)
ペロリと平らげてしまう。
そして急に目の前にステイタス画面に似た画面が出る。
~~~~
ミーナの実 〈状態〉超最高
自然の多い森の畔など、森の中の水辺近くに出来る実。
一年中なる実ではあるが、味は採る時期、気温、時間、様々な要因によりかなりばらつきがあり
その味の不安定により人気はあまりない。
〈料理詳細〉
実は塩水一時間浸け、ふやかした後焼くと果実とは思えないぐらい肉厚になり、肉と見まがう程ジューシーでかなり旨い。
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(な、なんだこれは……)
驚愕しながらも食いつくように文字をみる。
(ま、まさかこれがスキルの効果か!?)
「あの……」
「はっ!?す、すまんあまりの旨さに驚いていた」
「っとそれより君は何でこんなことに巻き込まれているんだ?」
「あっ!?」
突然声をあげると来た道に戻ろうとする
「ま、待て!一旦落ち着け!」
少女の手を掴む
「テティお姉ちゃんが殺されちゃう!!」
先程と同様に顔が青くなる少女
「……わかった案内してくれ、説明は移動しながら聞く」
「えっ?で、でも」
驚く少女の頭を撫でながら
「果実をくれたしな少し手伝いさせてくれ」
ニカッと笑いポロポロと泣き出す少女を安心させる。
「俺は天道龍也」
少女は涙を拭いながら笑顔で名を名乗る。
「ポーナと言います!」
「よしポーナ行こう!」
「きゃ!?」
ポーナをお姫様だっこする形で走り出す龍也。
「ポーナの姉ちゃん助けに行くぞ!」
「は、はいです!」
次回も異世界料理伝お楽しみに!