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アグレッシブミルキーウェイ。

作者: 蒼井 ソラ


朝からそわそわと外を気にして過ごす。

窓を開けたら外は雨。

あらあらあら。


今日のためにダイエットに力を入れたんだけど。

サロンも予約して準備はOK。部屋も綺麗に整えて貴方の好きなルームフレグランスも香らせる。もう直ぐサロンの予約時間。傘を差して表に出る。さっきよりも弱まったかな?傘に当たる雨音を聞きながら足早にサロンに向かう。


カララーン。


「いらっしゃい。待ってたわ。今日は雨ねぇ。」


「そうなんですよ。でもまだ分かりませんね。」


「そうねぇ。まだ分からないわね。前向きに考えないとね。で、今日はどんなヘアスタイルにする?」


「ずっと長いから思い切って短くしようと思うんです。ふんわりしたボブ。カラーも入れて少し軽くして下さい。」


「あらっ、ずいぶんイメージ変わるんじゃない?気付いて貰えないかも知れないわよ。」


「いいんです。待つだけの女じゃないって分からせてやらなきゃ。」


「そうね。女性のそういう言葉好きよ。じゃぁ、ばっさりいって別人くらいに変わっちゃいましょう。」


伸ばした髪を、ピカピカに磨き上げられたハサミでザクっと肩上に切り落とされる。腰まであった髪が床にハラリと落ちて重なり川のように見える。切り揃えた髪をサササッと梳いて軽く仕上げる。カラーはブラウン。だいぶ軽くなった。気持ちも軽くなる。ふんわりとブローで仕上げて完成。


「ほらっ、別人みたい。似合うわ。頑張って。」


「ありがとう。」


傘を持ってサロンを出ると雨が上がって曇り空が広がっていた。

運は私に向かってる。適当なスキップをご機嫌に踏みながら花屋さんに寄ってスイートピーを買い家に帰る。キッチンでもてなしの料理を作りダイニングテーブルの中央の目立つ場所にスイートピーを活ける。


日暮れて暗くなった空は一切の光を通さない。

約束の時間を告げるアラーム音。やっぱり貴方は来ない。

とびきりおめかしをして家を出る。


歩いて、歩いて、歩いて目的の場所へ。

お気に入りのヒールの靴を脱ぎ捨て川が現れるであろう場所に足を踏み入れる。


バシャバシャバシャ。


やっぱりあった。見えてなかっただけ。膝まで水に浸かりながら対岸を目指す。川を渡りきり目的の家の前に着く。


ピンポーン。


インターフォンを鳴らし扉が開けられるのを待つ。

ガチャリと扉が開いて私を見た貴方が驚き声を張り上げる。


「えっ、誰?もしかして織ちゃん?いったいどうしたの?」


「来ちゃった。」


「来ちゃったって。今年も天の川出なかったよ。」


「知ってる。」


「じゃぁ、どうしてきたの?」


「本当に会いたい気持ちがあれば会えるんじゃないかと思ったの。川、見えなかっただけであった。もう、待つだけの女は止めようと思って。」


「ありがとう。嬉しいよ。来てくれるなんて。髪型も変わって何か凄く可愛くなっちゃったね。上がってよ。ゆっくり出来るんでしょう?ご飯作ってその後一緒にお風呂に入ろうよ。」


「彦ちゃん、分かれよう。」


「えっ?」


「だから言ったでしょう?会いたい気持ちがあれば天の川なんてなくても会えるって。何年も会えない間に考えたの。彦ちゃんはそんなに私を必要としてないって。」


「そんな事無いよ。僕は会えないと思い込んで居たんだね。ごめんね。織ちゃん。これから毎年会いに行くよ。」


「来なくていい。私はこれから自由に生きていくから。さようなら。愛も夢も希望も自分の力で掴んでいくの。待つのはもう止めた。」


「織ちゃん・・・・・・。」


言うだけ言ったらスッキリした。

仮に星が出て天の川が現れ、彦ちゃんが訪ねて来たとしても別れるつもりだった。ダイニングテーブルに活けたスイートピーの花言葉は別離。別れを意味する。


スイートピーの、今にも飛び立つ様な蝶に見える様子からもう一つの花言葉は門出。私は今夜、彦ちゃんの元を去り新しい出会いに向けて飛び立っていく。






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