騎士を目指したけどトイレだ
屋根裏の掃除は紫メイドさんが暇を見つけてやってくれるそうで、現在は働く屋敷の案内をしてもらっている。
「ここがトイレです」
「うん、トイレだ」
しばらく歩き、
「ここがトイレです」
「うん、トイレだ」
またしばらく歩き、
「ここがトイレです」
「うん、トイレだ」
更にしばらく歩き、
「ここがトイレです」
「うん、トイレだ。一体トイレは幾つあるのかねこの屋敷」
「これでも足りないぐらいなんですよ。使用人が一斉に催したら全然足りないくらいです」
「食中毒でも起こさない限り有り得ない可能性やね」
「それもこれもこの無駄に広すぎる屋敷のせいです。同じ大きさの別館が二つあるので覚悟してください」
「何に使ってるのかが果てしなく気になる」
「そしてこの方がお嬢様です」
「唐突ぅ~」
僅かな隙間のあった一室の扉を素早く開き、続く形で飛び出してきた金髪碧眼少女を捕まえてびろーんと見せてくる紫メイドさん。
金髪碧眼少女は抜け出そうと暴れるが、脇の下に手を差し込まれているうえ、持ち上げられて足が地に付いていないので無駄な足掻きとしか言えない。
しかし、十二歳にも満たないであろう幼い少女が涙目でうーうー唸っている様のなんて愛らしい事か。レッドワイン色のふりふりドレスを着ているのも相俟ってお人形さんみたいだ。
「うぅ~~! アルミダー! アルミダー!」
じたばたしながら誰かに助けを求める金髪碧眼少女ちゃん。
紫メイドさんを見るが首を横に振られる。彼女ではないようだ。勿論俺でもない。
と言うかだ、この金髪碧眼少女ちゃん、どっかで見た覚えがするんだよなー。
「――――う様ぁあああああ!!」
何処からか「お嬢様ー」と呼ぶ声が聞こえてくる。
「誰の声?」
「番犬様です。意外と近くに居たようですね」
「えー、この声の反響っぷりからしてかなり遠くに――」
「お嬢様!!」
「うわっ! ビックリした!」
汗を滝の様に流し、荒く息をする金髪碧眼少女(大人ver)さん。軍服をきっちりと着込むその姿で完全に思い出した。
この人達、俺が襲った二人やん。
Σ(´□`;)
こやつ等、何時自己紹介するんだろ。(´・ω・`)