騎士を目指したけど体が貧弱です。
ここが貴方の部屋です、と案内された先は、屋根裏部屋だった。
長い間物置として放置されていたのか、埃が舞っていて、積まれた箱には蜘蛛の巣が張られている。
そんな部屋と、紫メイドさんとを交互に見て、ぽつりと言葉を溢す。
「冗談?」
「嘘です」
「だよねー! そうだよねー! あー、焦った。こんな埃にまみれた場所で寝ろとか冗談だよねー!」
「というのが嘘です」
「おうこらご主人様。ありがちな漫才は抜きしてマジっすか?」
紫メイドはにやけて言った。
「マジ」
無慈悲な言葉に膝から崩れ落ちる。
道中で色々からかったり脅されたりを繰り返したお陰か、紫メイドさんは俺の扱いを心得てしまったようだ。
今もこうやって的確にダメージを与えに来ている。しかも楽し気に!
と言うかだ、もう限界、息苦しい。
梯子を使わずに屋根裏から廊下に飛び降り、深呼吸をする。心臓がぼくばくと鼓動を繰り返し、嫌な汗が額に浮かんだ。
埃を吸わないように気を付けていると、どうしても薄くしか空気を取り込めない。こりゃ大問題だなー。
「突然どうしたんですか!?」
紫メイドさんも若干焦った様子で梯子を使わずに平気で降りてくる。そして踞って大きく呼吸を続ける俺の背中を優しく擦った。
呼吸を落ち着けながら、どれ程この体が貧弱であるかを聞かせる。
筋肉はぶっ倒れながらも超回復とかいう作用で太くしていく事は出来ても、内側、内臓はそうもいかない。
食も細いし、傷んだ物を食べるとすぐに腹を下すしそれが長引いてしまう。
特に気を付けないと行けないのが空気だ。埃なんかを思いっきり吸い込んだ日には咳が止まらなくなる。それこそ過呼吸に陥る程に、連続で出てしまう。
筋肉にはすぐ熱が籠るし、疲労が蓄積されれば酷い頭痛がして寝込んでしまう始末だ。
「――と、まぁ、そんな感じ」
「弱すぎません?」
「俺もそう思う」
吹けば飛ぶ、まさにその表現が似合う体である。
「仕方ないですね。貴方の部屋の掃除は明日にするとして、今日は私の部屋に来なさい」
おいこのメイド今なんてった? 恥ずかし気もなく淡々となんてった?
「え? なに? 俺食べられちゃうの?」
「食べませんよ」
ぺちんと頭を叩かれた。
「恥ずかしがる事はありませんよ。何せ、意識のない貴方を風呂に入れ、洗っていたのは何を隠そう、私なのですから」
何故か得意気に慎ましやかな胸を張る紫メイドさん。それを聞いて死にたくなった。
( ゜д゜)、;'.・
紫メイド娘。
淫魔+メイド+お姉さん属性で、主人公と歳の近い人物。
下ネタ対応型メイドで、度々主人公と漫才を繰り広げる予定。