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 冷たい風で目が覚めた。魚型の魔物を何匹か捕まえて吸って腹を満たし(生臭かった)、何時の間にか寝入っていたようだ。この世界は雨が降る事はないのだろうか?満月が中天にあり、真夜中くらいの時間だろうか。と言うか、今まで寝ている途中で目が覚めた事はなかったのだが。


 イルは……相変わらず停止中、か。ふと見ると、海に大きな影があった。気のせいではない。無精して海に流しっぱなしにしていた糸でこれを感知したから目が覚めたのかもしれない。頭が海面から出た拍子に大波が岸に押し寄せている程巨大なこの龍を。


「……ひと、ではないな」


 瞳だけで私の身の丈より大きい。夜の海と同じ色の身体がすこし動くだけで海面が波立つ。低い声は掠れたような響きを伴っていた。


「それは、なぜときを?にゅんぺー、おんしか」


 低い低い声に凄みがのった。勝てる気など毛の先程もしない。とは言え私のやった事ではないので、正直に答えるだけである。


「私ではありません。主神か主神の眷族の嫌がらせです」


「なぜ?」


 何故といわれても、


「イル……イルルヤンカシュを龍から竜へ変えたいのではないかとっ」


 推測の途中で私は飛んだ。多分目の前の龍が怒っただけなのだが、易々と宙を舞っている。【飛行】でとりあえず一緒に吹っ飛んだイルを回収して元の位置へ戻った。


「すまぬ。おんしのしわざでないのに」


 巨龍が私達をまとめて持ってくれた。どうもまだ衝撃が出てくる可能性があるらしい。


「だしたのちわれらがどのようなざまをさらすか、おんしぞんじておるか」


 だした、堕した、か?龍から竜へ変ずるのは堕落、ということになるのか。知らないので首を振った。


「もろくなり、よわくなる。まりょくがさんずる。つのがなくなりたてがみをうしないゆびが消え、莫迦になる」


 途中から発音が鮮明になった。龍語のレベルが上がったのか。巨龍は何を思うのか、空を見ていた。


「吾等を愚弄しようと言うのか。龍を。それも水龍――吾の眷族を。****とて、許せぬ所業ぞ」


 一部分、聞き取れない個所があった。レベルが足らないのかもしれない。私はどうする事も出来ずに巨龍の手の上でイルを抱えているだけだ。とても穏やかなのが唯一の救いである。


「これが如何なる罪を犯したと言うのだ」


 罪。時を止められて故意に竜にさせられるような罪など、イルには欠片ほども存在していない。何も、と答えた。


「謂れも無く狼藉を受けておると申すかよ。猶許せぬ。***************――」


 最早後半は何を言ったかすらわからなかった。ただ、穏やかだったのは掌の上だけだと思い知っただけだ。砂漠で何も無いから良かったけれど、海側は大変な事になっていた。酷い大波が砂漠を覆っていく。波という表現が似つかわしくないほどの水の暴威が砂漠を荒らした。


「*************許**********びを***********吾子たちよ」


 巨龍が朗々と歌うように紡ぐ言葉が文字通り驚異であった。時が経つほどに水の量が増え、砂漠は海と同化し、雨が滝の如く叩きつけるように降る。もしかして、ノアの箱舟の寓話で世界はこんな風に掃除されていたのかもしれないと思わせるほど水しか見えなくなっていた。


 逆巻く波、落ちる雨と吹き上げる飛沫。微動だにしないのは天を見据える巨龍だけである。視界不良だが、遠くに龍らしき巨大な影が見えている。と、巨龍が笑うような声を漏らした。


「遅いな。****。転寝でもしておったのか」


「許さぬとも。吾子を。これを許せるはずがない」


「譲るものか。なれば****が擁する全てを********ことよ」


「つまらぬ策など弄する故。自業自得であろう」


「……吾はこれを覚えた。********。要らぬ事はするなよ」


 一体何を言っているのだろう?僅かずつ間を空け、巨龍が空に向けて話す。私には解らないけれど、相手がいるようだ。最後に目を眇めて脅しに聞こえる言葉を残し、巨龍は唐突に一声吼えた。見る見る雨がやみ、波は穏やかになった。残ったのは凪いだ海とまるきり海のようになった砂漠だけである。


「災龍イルルヤンカシュ。湖干す禍の龍なれど、どうやら違うものに成ろうと足掻いておるな。***に成ろうかと言う所であった筈だが……おんし、どんな魔法を使った?」


 不意に巨龍が呟いたのはイルの名前である。イルの事を知っているのか?


「何も。ただ、どうも絆を結んだようで一緒に生きています」


 面白がるように巨龍が目を細めた。しかし、本当に何もしていないので何とも言えないのだ。


「眷族が***に転ずるのは忍びなくてな。人がそれを封じた時には安堵したものよ。だが、おんしは誰よりも善い道にイルルヤンカシュを導いた」


 導いた、とな。全く心当たりなどないのだが、困惑するしかない。巨龍の喉が鳴った。笑っているらしい。


「解らぬ方が良い。やろうとして為せる事ではない。イルルヤンカシュは夜明けと共に解放される。つまらぬ横槍はもう入らぬ故安心せよ」


 巨龍がそろりと私達を降ろしてくれた。とは言え砂漠が完全に海と化しているので、浮遊しておく。


「これも縁か。吾は水龍の王。おうりゅう。鷹龍。……聞きとれたようだな。忘れてくれるなよ、いずれまた会おう」


 最後に笑うように爆弾を落として水龍はその巨体を水に変えた。最後の大波を何とかやり過ごして、私達は何もかもから置き去りにされたように突っ立っていたのであった。


辰砂《しんしゃ》 Lv.86 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師、魔法道具職人

HP:1425

MP:4180

Str:470

Vit:250

Agi:500

Mnd:610

Int:610

Dex:530

Luk:230


先天スキル:【魅了Lv.9】【吸精Lv.10】【馨】【浮遊】【飛行】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.7】【死の友人Lv.8】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.27】【調薬Lv.20】【識別Lv.28】【自動採集Lv.9】【自動採掘Lv.8】【蹴脚術Lv.16】【魔力察知Lv.19】【魔力運用Lv.22】【魔力精密操作Lv.30(Max)】【宝飾Lv.7】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.16】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.10】【調薬師の心得】【冷淡Lv.4】【話術Lv.6】【不退転】【空間魔法Lv.8】【付加魔法Lv.13】【細工Lv.5】【龍語Lv.8】【暗殺Lv.2】【料理Lv.4】【夜目Lv.4】【隠密Lv.12】【魔法道具職人の心得】【文字魔法Lv.20】【木工Lv.5】


ステータスポイント:160

スキルポイント:100

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の友】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】【老職人の一番弟子】


イルルヤンカシュ Lv.30 仔水龍

HP:8000

MP:5200

Str:1200

Vit:1200

Agi:350

Mnd:630

Int:630

Dex:400

Luk:100

スキル:【水魔法Lv.28】【治療魔法Lv.5】【浮遊】【飛行】【強靭】【短気】【環境低減】【手芸Lv.19】【アヴァンギャルド】【風魔法Lv.25】【雷魔法Lv.28】


スキルポイント:3

称号:【災龍】【水精の友】【ツンデレ】【絆導きし者】


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