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周回二日目、早朝から並んでは挑戦を繰り返している。死の光――便宜上、昏光こんこうとしよう――は、レベルが同等までの相手ならば今のところは100%効果を発揮している。相性もあるだろうし、過信は出来ないが実に便利である。水は攻防一体で使えるし、今まで使わなかったのが悔やまれる。


カリスマさんとウールちゃんも順調で、とうとうさっきはⅥに挑戦したそうだ。ただ、物理無効型に手こずると言っていた。二人共が魔法を使わないからなあ。とは言え、カリスマさんの方は魔法じゃない対抗手段を持っている筈――だが。人の切り札を詮索する気にはならない。敵ならば可能な限り推測するが、仲の良い味方が言わない事まで知ろうとは思わなかった。


私達はⅦを繰り返し撃破していた。さっきの挑戦でⅦの敵と私一人で戦ってみたのだ。魔法無効型にだけ気をつけて、糸の切断イメージを途切れさせない事が肝要であった。時間はかかるが、牽制の蹴りと合わせていればダメージを負うことなく片づけられたので、そろそろ一段階上げる頃合いだろうか。


「そうだな、俺もさっき単独撃破出来たし。いんじゃね?」


イルと囁き合いながら順番を待っていると、道場から出てきたパーティが拳を突き上げた。


「っしゃあああ!Ⅷ撃破ぁー!!」


おや、むさ苦しい男集団がⅧを初撃破したらしい。


「『熱烈筋肉団』か……あいつら、物理無効どうしたんだろうな」


「や、なんか昨日気がどうとか言ってたらしい」


ひそひそと後ろで順番待ちしているパーティが喋るのが聞こえた。ほー、熱烈筋肉団。確かにどう見ても暑苦しい。実に合致した名前だ。


「うーん。あの人達は男臭くてちょっとアタシ苦手だわ……」


意外にもカリスマさん受けはイマイチだった。なお絶対に言わないが、彼らの誰よりもいい身体をしているカリスマさんである。縦も横もボリュームもお見事なのだ。おまけにいつもフローラルな香り漂う、どこにも文句のつけようがないオネエである。


「さぁてウールちゃん、今度は奥の魔物と手前の魔物を重なるように意識しながら体当たりするのよ。そうしたらウールちゃんの勢いで、2体が吹き飛んでくれるからね」


頭の上のウールちゃんに対抗策を伝えるカリスマさん。ついでに焼き菓子を貰ってもしゃもしゃするウールちゃん。とても今から道場に行くようには見えないけれど、既にレベル18まで上がっているのだそうだ。次は18で進化するかと思ったのだが、それなら20か25だろうか?


そうこうしているうちにカリスマさん達の番になった。この周回が終わったら一旦昼食にする約束である。初回撃破者も出た事だし、私達も大手を振ってⅧに挑戦することとしよう。


「なー辰砂?いっつもポーション買いに来るやつらはここ来てないですね?こういうの好きそうなのに」


「そうだなあ、多分彼らは一瞬もじっとしてたくないんじゃないか。私達はぼうっとするのも大して苦じゃないが、彼らはいかにも忙しなかったろう」


挑戦して打ち勝つ事は大好物だろうが、如何せんこの行列は趣味に合わないだろう。一秒でもあれば前に進みたそうだった。イルも納得したのか黙り込んで、カリスマさん達の挑戦が終わるのを待った。


ほどなくしてカリスマさん達も出てきた。ウールちゃんが少し傷を負っているようなのでポーションを一つ渡す。遠慮されたが、どうせ自作で安いのだから気にしないで欲しい。


さていよいよ、Ⅷである。昨日はいきなりⅩまで飛ばしてしまったのでⅧの魔物の内訳と配置はさっぱり解っていない。イルがフードから抜け出し、私は昏光を纏った。糸を解して展開させ魔物を待つ。どんな配置だろうとも、1匹ずつ倒せばいつか終わる。


傾向はⅦと同じで、物理無効と魔法無効が入り混じりつつ数が増えたと言う事のようだった。かなり広い道場の中に魔物がひしめいている。イルが先手を取るのは一貫して変わらない。ある程度以上相手を削れるのが解っていて使わない理由などどこにもない。


ざっと倒して、撃ち漏らしと魔法無効が残り、それらの行動を阻害しつつ各個撃破が私達の基本的な攻撃パターンになりつつあった。糸を攻撃に転じさせると、私でも十分にダメージを与えられるようになったのだ。危なくなればターゲットを互いに切り替えさせる事も出来るので、攪乱もしやすい。


殴りかかってきた撃ち漏らしが、私に触れて脱力する。魔法無効でなければ死ぬのだ、これほどちょろい相手もいないに違いない。ジャンプついでに飛行で距離を稼ぎ、着地先は魔物の頭。さりげなく加速して、両足で全体重をのせた。よし、また1体撃破。


「っせ!」


イルも華麗に尻尾でビンタしている。これが私の蹴りより遥かに強いと言う事が納得いかない。もう少しそれらしい絵面にならないものか。邪念に耽りつつも安定して勝利できた。Ⅷをこれだけ安定させられるならもう次はⅨでいいかな。


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