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ちょっとしょげつつもサンの街に辿りついた。神殿で球に触り移動先を登録。大分早いのだがお昼ごはんを食べようと言う事になった。
「ごめんねお姫様、食べる必要が無いのに付き合わせて」
謝るカリスマさんに、必要無くても食べると楽しいので気にしないで欲しい旨を答えながら観光がてら街をうろつく。どこでも屋台が主流だな。別に腹は膨れないが見て回るだけでも楽しい。
「お待たせ~」
カリスマさんが良い笑顔で駆け寄ってきた。どこで調達してきたのか大きなバスケットを抱えている。カリスマさんが抱えるとなると大分大きいが、あれには何が入っているのだろう。
「うふふ、お弁当作って貰っちゃった~。カスクート屋さんがあったのよ。お肉抜いてお野菜増やして貰ったの」
カスクートと言うと、あの硬いパンに切れ込みを入れたサンドイッチだったろうか。鯖のフライを入れたものが有名だが、主役を抜いて野菜を増やしたと言う事か。
「アタシ種族的になまぐさが食べられないのよ。やっぱり仏様の端くれだからかしらねえ。だけど身体が大きいから食べる量は多くって困っちゃうわ」
やれやれと首を振るカリスマさん。これで1食分らしい。私の腕では一周回らないほど大きなバスケットに、ちらっと見えた感じではバゲット3本は収まっていた。あの下にまだあったら6本と言う事になるが、きっと3本に違いない。
私も以前大量に買い占めたライチを取り出して、適当なベンチに並んで腰かけた。何度食べても美味しい。イルにも食べさせてやりたいが、中の種を除いてやらねばイルの手が大変な事になってしまう。ちょっと考えて、糸を巻きつけて種ごと半割りにし、種だけ除いてフードの中に入れた。
「外で食べる食事も良いわねえ。いつもはウールちゃんと二人だから、大人数なのも嬉しいわ」
カリスマさんは穏やかに微笑みつつもバゲットをざくざくと噛みちぎっている。いや見た目はバゲットだけどきっと柔らかいのに決まっている。カリスマさんの顎の力を想像してはいけない。
「……ン、メェ」
ウールちゃんも、添えてあった野菜サラダをもしゃもしゃしている。このコンビは大分大食漢なのだな。私達とは対照的である。何たって私達は魔力とか言う良く解らない物を食べて生きているのだ。いや私は正確には精気だけれど。
みるみる内にバゲット9本を食べ切り、カリスマさんはバスケットをマジックバッグへしまった。と言うかバゲットは6じゃなくて9だったのか。エンゲル係数が高そうだ。
「ふう。食後のお茶も美味しいわねえ。そう言えばニーの街に飲み物専門の料理人が近頃お店出してるのよ、知ってた?これはその子の新作、ピーチティーですって」
バッグから取り出されたゴブレットに水筒から注いで貰って私も少し飲ませて貰った。まさしくピーチティーだ。甘さもそれほどつけておらず、香りを楽しめる一品になっている。帰ったら私も買おう。
「これ、すごく美味しいですね。料理人ってプレイヤーですか? 何と言う名前のお店でしょう」
「ええそうよ。にゃんニャイトLoveって子が出してる『ごろにゃんカフェ』っていうお店。もうお店も内装も可愛いし、看板猫がまた可愛いの~」
カリスマさんがスクリーンショットを何枚か見せてくれたが、店主も猫の獣人で、看板猫も猫であった。長靴をはいた猫みたいな直立歩行する猫らしい。小生意気なつり目がまた愛らしい。これは絶対に行かなければ。
「……と、言いますか。もしかしなくてもこの子はパートナーですかね?」
絆システムの新たな活用者であろうか。カリスマさんも多分そうだと思うと同意してくれた。
「ちょっと前に、卵の孵し方の条件が確立されたみたいなの。卵を持って歩く間はソロじゃないと孵らないって事らしいわ。だから、少しずつだけどソロの人がパートナーを得始めてるみたいよ」
それは朗報である。もしかするとじきにイルも普通にいられるようになるか? なると良いなあ。
「そうよねえ。そろそろイルちゃんもフードから出ても良いかもしれないわね」
私の視線を追って、カリスマさんが慈愛深く微笑んだ。うーん、もしかして天部系統は悟ってないと引き当てられないのかもしれない。
「……もうちょっと、よく見るようになったら出ます」
小さい声でイルからはつれない回答があったが、まあ、先は明るいに違いない。




