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相変わらず野営セット作成に勤しんでいる老師に声をかけた。老師もいそいそと金槌を放り出してこっちに来る辺り、大分飽きてきているようだ。そして腕輪をしげしげと眺めて恨めしげな顔をした。


「お主、高等系の樹魔法もできるんじゃのう。そんならそれを使って外枠を作ってもらえばよかったわい、とはいえ半人前を酷使しては師匠の名がすたるか。まあよい、新しい構造じゃが、これはこれで実に効率的になりそうじゃ。この間見せてきた透明魔石と大全を出しなさい」


緑の手はそんなことまでできるのか。【木工】スキルが完全に死んでしまう気がする。魔石を取り出して老師に渡す。すると老師は水晶の棚から魔石と似たような大きさの原石を取り寄せた。


「大全2999頁。護符タリズマンの項を開きなさい。……うむ、そこじゃ。護符に使う魔法文字は2種類しかない。魔石の容量キャパシティを全て使って使用者の魔法行使を補助するものの、単独型と複合型のみよ」


護符には必ず魔石と樫の木と言う組み合わせを使う。何故かと言えば、他の木材ではこれほど魔力をよく通さないためだ。樫以外の素材で同等以上の効果が見込めるものは、現在見つかっていないそうだ。したがって、魔法使い用の杖も同じ素材を使用するのだという。


「まあ、魔法使い用の杖には照準がどうたら、範囲がどうこう、あれこれ機能がついとるだけじゃ。魔石の容量をはみ出んように補助機能なんぞはたかが知れとる。護符の魔法文字が書ければ杖用の文字も書けるわい」


さてと、と老師は水晶を幾つか吟味し始めた。


「魔石が多い方が当然容量も多いんじゃが、まあ水晶でもないよりはましじゃ。これからお主には複合型護符を自力で作成してもらうからの」


「老師、言いづらいんですが……魔石は6個あるんです」


同じ物だと思って1つしか取り出さなかったせいで誤解を招いてしまった。早よ言わんかと怒られつつ、6個全てを使うことになった。


私が文字の練習を、まずは普通の鉛筆で紙に練習する傍らで老師は大全を睨んでいた。何かを考えている。複合型用の文字を紙に書いて、難しい顔で髭を擦った。


「いいから練習せんかい。見るべきはわしの顔でなく紙と線じゃい」


ごもっともな御叱りを受けて素直に練習に戻った。何度もガイドを辿り、手が止まらなくなった辺りで老師にストップをかけられた。


「その文字を使うのは止めじゃ!こっちにせい」


突き出されたのは今書いている文字と、一部違うがそっくりな字であった。折角練習したのに……まあ、意味のない事は指示しないだろうと言うことで、改めて練習した。先程のとあまり変わらないのでほどなく書けるようになった。


「よし、よし。間違いもないしブレもない。では6個全てに同じように書き込みなさい」


魔石にペンを置くと、今までの何よりも書きづらいことがわかった。触れているだけなのに、抵抗があるのである。MPをかなり流し込まなければまともに動かせなかった。一つ一つを検分しながら3つ書いたところでMPが枯渇し、マナポーションを飲む羽目になった。


「3つは書き上げたかよ。王都の魔法学生と言われても信じられそうじゃ。この辺でうろついとるには惜しいの」


多分褒められながら、残り3つを書き上げる。どれもがガイドのおかげで寸分違わぬ仕上がりである。最後の1個をお手本と見比べて、どうやら成功したようだった。まったく、集中力の限界に挑むような作業であった。


「ようやったのう。正直たった4日で護符を作り上げるとは思わんかったわ。後は腕輪を曲げた要領で魔石を埋め込むのじゃ。それで出来上がるわい」


指示に従おうとしてMPが足りないことに気が付き、またマナポーションを飲む。段々この薬臭い味に飽きてきた。もう少し飲みやすくならないものか。腕輪に再び念を込めながら穴をあけ、魔石を押し込んで埋め戻す。石が光る木の腕輪なんて趣味ではないので、見えないようにした。


「おっ、良くわかっとるの。護符は魔石が肝心じゃ、魔石を表に出してはならん。傷つくだけで機能を損ないかねんからのう。来訪者がたまに魔石むき出しの杖を頼んでくるが、正直意味わからんわい。ありゃ何に使うんじゃ?」


目的は違ったものの、老師に褒められた。石がむき出しの杖については、プレイヤーの描く魔法使いの杖のイメージのせいと言う他ないだろう。ロールプレイの一環である。


「趣味だと思います。私たちの中では魔法使いは大きな水晶玉を覗き込んで占ったり石の付いた杖を振り回して魔法を使うので……」


「非効率じゃの。占いは占術師の仕事じゃで、何で魔法使いがやるんじゃ?ほんにようわからんわ。ま、これでお主も一人前の魔法道具職人じゃ!おめでとさん」


とても唐突に卒業を宣告された。とは言われても、急すぎて戸惑うばかりである。どうやら、護符が作れればそれで一人前だと言う事らしかった。


「わしも弟子取るのは初めてじゃが、4日で一人前になるあたりはさすが来訪者と言う他ないの。お主が作った護符は世界に一つしかないゆえ大事にせいよ。後は、毎年大全が改修されるでたまに店に寄るんじゃな。新しいのと替えてやろう」


ぱっぱと必要事項を伝えられて私たちは店を出ることになった。野営セットの心配をしても、弟子が気にすることではないと言われるだけだったので、もうどうしようもない。


……なお、私の護符は世界初の円環型護符と言う新しい部類の護符であったことを知るのはずっと先の事である。世界に一つってそういう意味だったのだ。


辰砂しんしゃ Lv.70 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師、魔法道具職人

HP:1185

MP:3380

Str:470

Vit:250

Agi:500

Mnd:610

Int:610

Dex:530

Luk:230


先天スキル:【魅了Lv.9】【吸精Lv.10】【馨】【浮遊】【飛行】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.3】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.12】【調薬Lv.20】【識別Lv.28】【自動採集Lv.9】【自動採掘Lv.8】【蹴脚術Lv.4】【魔力察知Lv.11】【魔力運用Lv.15】【魔力精密操作Lv.25】【宝飾Lv.7】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.13】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.7】【調薬師の心得】【冷淡Lv.4】【話術Lv.6】【不退転】【空間魔法Lv.8】【付加魔法Lv.13】【細工Lv.5】【龍語Lv.6】【暗殺Lv.2】【料理Lv.4】【夜目Lv.4】【隠密Lv.12】【魔法道具職人の心得】【文字魔法Lv.20】【木工Lv.5】


ステータスポイント:0

スキルポイント:68

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の友】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】【老職人の一番弟子】


イルルヤンカシュ Lv.29 仔水龍

HP:7500

MP:5000

Str:1150

Vit:1150

Agi:350

Mnd:630

Int:630

Dex:400

Luk:100

スキル:【水魔法Lv.28】【治療魔法Lv.5】【浮遊】【飛行】【強靭】【短気】【環境低減】【手芸Lv.19】【アヴァンギャルド】【風魔法Lv.13】【雷魔法Lv.15】


スキルポイント:2

称号:【災龍】【水精の友】【ツンデレ】【絆導きし者】


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