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 視界が滲んで、今度はいい天気の草原にいることになったらしい。日本ではありえない規模の平野を見渡していると、ふっとあらわれた人物に気が付いた。


「チュートリアル担当のクレマチスだ。このチュートリアルはスキップしてゲームを始めることもできる。スキップするか?」


 そこはかとなく投げやりな感じのする人である。竜胆さんと話している間にだいぶ出遅れているので、理由も推察できる。


「いいえ、チュートリアルの開始をお願いします」


「何!?本当か!?よし、任せてくれ!!」


 やはり。相当な人数にスキップされたと見た。急激に上がるテンションと正される姿勢に確証を抱いて一礼しておく。


「では基本的なコマンドから始めようか、メニューと声に出すか、メニューを表示させようと念じるかしてくれ」


 念じろと来たか。まあ脳波を使うのだからそれ位は朝飯前なのだろう。言われた通りに念じてみれば、竜胆さんが駆使していたウインドウに似たものが眼前に現れた。


「それがこれから使い続けることになるメニューウインドウだ。アイテムやスキルの管理、ログアウトや各種設定、掲示板を見るのもここからだな。設定を色々弄ってみて分からないことは今聞いてくれ」


 クレマチスさんの声に従い各項目を見ていく。各種設定の中の痛覚設定とグロテスク表示設定は最低まで下げておこう。返り血など浴びる趣味はないし、もしゾンビがいたら卒倒する自信がある。


「設定と言いますか、立ち方が解りません」


 あちこち触ってみてから、設定云々よりもはるかに気になることを聞くことにした。先ほどから地に足がつかないのだ。


「ああ、種族特性の【浮遊】だな。これは先天スキルかつパッシブだからな、普通には解除することができない」


 何となく感じていた予感的中である。先天後天で区別されていたからなあ畜生。これではどうやって踏み込んだり蹴ったりしたらいいかわからないではないか。


「何か抜け道はありませんか。戦闘中であるとか、効果的に力を伝えたい場合など」


 クレマチスさんはなんというか微妙な顔をした。そんなにおかしなことは言ってないつもりだが、何かが引っ掛かったらしい。


「いや、もちろん一時的な解除は可能だがね。降りると強く思えば降りられるはずだ、ただ気を抜くと浮かぶが」


「本当だ」


 簡単すぎて驚いた。さっさと試してみればよかった。特に意識してない状態だと地面から30センチ程度浮かんでいるので、地に足を付けることを意識するとすとんと落ちる。ただし喜んだ瞬間浮いたが。縛りプレイ決定である。


「街中で浮いているのが恥ずかしいのですが……まあ、気を付けます」


 ロールプレイをする人なら大歓迎なのだろうが、あいにく私にその趣味はない。まず慣れるところから始めなければ、とため息をついた。


「まあ、【浮遊】は妖精系統の種族が多く持つスキルだから(身長は二分の一だが)。大丈夫だ、気を強く持ちなさい」


 クレマチスさんの慰めが優しい。気を取り直して次に行こう。次は武器の取り扱いの話だった。私の取得した武器スキルは【糸】である。


「初心者セットと言うアイテムを、アイテムボックスから取り出してくれ。アイコンをタップしてウインドウの外にスライドさせるか、二度タップするかで出来る」


 言われた通りにタップするが、空中を叩くという動作に違和感を感じる。同じ所で留めるには慣れが必要だ。地面に落ちたのは一抱えほどの木箱だった。蓋を開ける。


「初心者の糸。初心者ポーション。初心者マナポーション。初心者ポーチ。メモ帳、鉛筆、5000エーン」


 アイテムを見ると、名前が表示されたのは【識別Lv.1】の仕事だろう。しかしアイテムボックスがあるのになぜポーチが必要なのか。


「うむ、不思議だろう?しかしこれは必要なのだ、なぜなら戦闘中及び生産中にはアイテムボックスの使用に再使用制限時間リキャストタイムがかかるからだ。一度使うと20秒開けなくなる、その間を補助するのがポーチや鞄の類だな」


 クレマチスさんの説明とともに渡されたポーチを開けてみた。なるほど見た目通りの小さなポーチである。手に握りこめるサイズのポーション瓶が二本ずつ、メモ帳と鉛筆と小銭入れくらいまでならゆとりを持って収まる程度の大きさしかない。


「もっと高級だと同じ大きさでも沢山入ったり、盗難防止機能が着いたりするんだがな。まあ最初の鞄だからこんなものだ。さて、それではポーチも身に着けたな?いよいよ武器の取り扱いに移ろうか」


 糸玉を手に持って拝聴する。この糸と言う武器は現実にある糸とはかなり趣が異なり、まず魔力のある種族向けの武器であるという。


 糸に魔力を染み渡らせて操作し、相手を攻撃するのだという。イメージと相応のMPの消費を以て糸にある程度の性質の変化をもたらすこともできるという。


「では練習してみよう。これから最初の町の周辺でよく見る魔物を召喚するので、思う方法で倒してみてくれ」


 クレマチスさんが手を叩くと、地面が丸く光り兎が現れた。兎なのに牙がある。――よし。


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