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 残念ながら少年少女パーティの後は売り上げは芳しくなかった。どうもプレイヤーが作るポーション=役に立たない、という図式が浸透しているようだ。心無い言葉も数回飛んできているが、まあ気にすることもない。


 手持ち無沙汰なのでブレスレットも並べ、ついでに【隠密】と【宝飾】を入れ替えてまたブレスレット作りに励んでいると、小動物っぽい動きの可愛い女の子が露店の前で立ちどまった。そしてそれに合わせて後ろにいた男集団も止まった。何やらむさ苦しい。


「わあ、可愛い!クォーツだぁ」


 ブレスレット類に触ろうとして弾かれ、露店の商品は触れないことを思い出しらしい。てへっと本当に言う人を初めて見た。


「ねえ、おね……おに……店長さん、このブレスレットはいくらするの?」


 フードを被ったままの私は男女どちらかわからなかったらしい。4000エーンですと答えると可愛い子は大げさに驚いて後ろを振り返った。


「ねえさっぴょん!すっごい高いねぇこのブレスレット!でもラブリこれ欲しいなぁ……でもなぁ……」


 この少女について回っている男臭い集団の一人がさっぴょんとか言うのだろう。全員がラブリと言うらしい少女に恋をしているのなら、それをまとめるこの少女は只者ではないな。


「ら、ラブリちゃん!左千夫なんかじゃなくて俺が買ったげるよ!」


「馬鹿言うな俺が買う!おい全種類よこせ!」


「俺に決まってんだろうが!」


 3名の男によりにわかに起こる争乱。周囲に多大な迷惑を及ぼしているがラブリとやらはにこにこしているだけだ。


「……ラブリの指名に逆らう奴は除名だ。金米きんこめLowロー、ライガ、今後ラブリの側に侍ることを禁ずる」


 低い声が男たちの暴動一歩手前の騒ぎを止めた。もっと早く止めろよとは思うものの、私は傍観する他ないのでカリスマさんと並んで判決が下されるのを眺めていた。


「はぁ!?ふざっけんな」


 除名処分にされた男のうち一人だけがいきり立って指令を出した色男に殴り掛かった。残念ながら街中ではPvPとか言うシステム以外でプレイヤー住民問わずダメージを与えることはできない仕様になっているので、完全に意味のない行動である。


「やだぁライ君ってばぁ、喧嘩なんかしちゃラブリ悲しいよ……みんなも今日一日だけ我慢して欲しいな?明日からまた一緒にいよ?」


 無意味な拳を色男が受け止めて緊迫した空気が漂った。いよいよ憲兵出動かと思いきや、ラブリが能天気な声を上げて短気な男を宥めにかかった。なるほど、こういうまとめ方なのか。周囲としては空々しいことこの上ないが。


「うっ、まあ、ラブリちゃんがそう言うなら」


 惚れた弱みなのか、ラブリには随分弱腰である。凄くどうでもいいので早くどこかに行って欲しい。そのまま集団は立ち去って行ったが、気の弱そうな兎の獣人の少年が残っているのに気が付いた。


「あ、あの……ブレスレットを……」


 恐らくこの少年が左千夫と言うのだろう、健気な事だ。どの色がいいのか迷う姿が少し気の毒になる。勝算は薄いぞ、少年。


「……差し上げたい方が良く使う魔法は何ですか?」


「えっ?えっと、ラブ……っじゃなくてえっと彼女は火炎系が多いです」


 ラブリは見た目に反して火系の魔法使いであるらしい。桃色の髪の毛をゆるふわに巻いた姿から鞭とかを想像していたのだが。まあ、とにかくそう言う事ならば薔薇水晶がよろしかろう。色もピンクでぴったりだ。


「では、これを。魔力が尽きるまで火魔法を心なしか補助してくれます。4000エーンです」


「あ、ありがとうございました。……僕、幼馴染なんです」


 唐突な告白に、ブレスレットを渡した手を引っ込めるのが遅れた。少年は俯いている。


「自分でも思うんです、馬鹿だなって。学校でも、∞世界(ここ)でも、こんな感じで。まな……ラブリはいつも愛されてて、僕の方は見てないのに僕はただ付いて回って」


 うっかり見つめてしまった。魅了が発動する前に目を閉じ、少年の掠れた様な声を聴く。少し高めなのにハスキーな独特な声だ、もっとはっきり喋ればさらに耳触りがよくなるだろう。


「小さいころから一緒にいるのが当たり前だったんですけど。最近よく分からなくなってきて、ラブリの事が好きなはずなのに。一緒にいても辛いばっかりで。本当はもっとレンさん、あっ、さっき仲裁した人です、あの人みたいな格好いい人がラブリの隣には相応しいんじゃないかって」


「……でも、あなたは彼女の欲しがったブレスレットを買った。それで良いのではありませんか?それと、気持ちと言うものはね。伝えなければ本当には解って貰えないものなんです。だから秘めるのも伝えるのも確かめるのも自由なんですよ」


 自分に言い訳をするような少年の話を遮る。自分に一生懸命嘘をつくのは止めてもらいたい、少なくとも私の目の前では。驚いたのか黙り込んだ少年に、仲間を追わなくていいのかと聞くと慌てた様子でブレスレットを仕舞った。


「あの!ありがとうございました!」


「お気になさらず。それと、素敵な声をお持ちですから、もっと腹に力を込めて話せばあなたはもっと魅力的に見えますよ。やってみてください」


 折角の良い声をもっと活用してもらいたいとささやかに助言してみる。出来れば常連になってちょいちょい聞かせてもらいたいものだ。照れたのか頬を染め、お辞儀をして弾かれたように走り去った少年を見送った。


「なんだなんだあいつ辰砂に褒められてたぞ。おかしい、俺褒められた記憶殆どねえのに、なんでやねん」


 イルが何やらもごもご言っている。あまり暴れると髪と絡まるから止めなさい。


辰砂しんしゃ Lv.38 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師

HP:690

MP:2060

Str:400

Vit:200

Agi:400

Mnd:555

Int:555

Dex:530

Luk:230


先天スキル:【魅了Lv.9】【吸精Lv.8】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.6】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.2】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.4】【調薬Lv.20】【識別Lv.17】【採取Lv.28】【採掘Lv.19】【蹴脚術Lv.4】【魔力察知Lv.6】【魔力運用Lv.9】【魔力精密操作Lv.14】【宝飾Lv.5】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.13】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.6】【調薬師の心得】【冷淡Lv.4】【話術Lv.6】【不退転】【空間魔法Lv.6】【付加魔法Lv.11】【細工Lv.2】【龍語Lv.5】【暗殺Lv.2】【料理Lv.4】【夜目Lv.1】【隠密Lv.9】


ステータスポイント:0

スキルポイント:17

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】


イルルヤンカシュ Lv.15 仔水龍

HP:6200

MP:3800

Str:1000

Vit:1000

Agi:300

Mnd:500

Int:500

Dex:300

Luk:100

スキル:【水魔法Lv.8】【治療魔法Lv.4】【浮遊】【空中移動Lv.4】【強靭】【短気】【環境低減】【手芸Lv.4】【アヴァンギャルド】


スキルポイント:13

称号:【災龍】【水精の友】【天邪鬼】【絆導きし者】



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 吸精はHPもMPも減るけどダメージにならないんですか?あと、憲兵とか犯罪者相手にダメージ通らないのにどうやって捕まえてるんですか?てか街中の喧嘩って不毛ですね。殴っても殴られても痛くな…
2020/05/07 02:23 退会済み
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