表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/260

47

「お!終わったのか」


 イルは作業室の隅で、空中での身のこなしの練習をしていた。【空中移動】は慣性を殺すことに長けていて、その気になったら空中で急に止まる事が出来るのだ。今までの龍生でこれほど小さかったことはなく、今は敵が皆大きいので勝手が違うそうだ。「あんな雑魚どもの口に収まるなんて許せねーからな!俺が収めるほうがまだマシだろ」と強く主張していた。


「終わってはないけど、道具が詐欺レベルでしょぼいからちゃんとしたやつを作って貰いに行く」


「ふーん?まあ、携帯用なんだろそれ?ちゃちなのも無理ねえよ」


 そうだよなあ、と今更思い至った自分にがっかりしつつ利用料を支払った。太陽は高く上がり、猶予時間はあまり残されていない。フェンネル氏の工房が同じ区画に在ってよかった。グレッグ先生の紹介状の裏に書かれた簡単な地図に従い歩を進める。


「こんにちは、グレッグ先生の紹介で参りました辰砂と申します」


 フェンネル氏の工房を発見し、戸を叩いて名乗りを上げた。石造りの武骨な工房はいかにも職人が住んでいそうだ。ややあって戸が開いた。


「出鱈目を言うな。あいつは早々紹介なんかしない。……紹介状?あいつが?……ほう。愛弟子、とはな。分かった、話を聞こう」


 すっと扉が開いて、私達は招き入れられた。フェンネル氏はもう一度紹介状を見直しているようだ。


「何度見ても本物だな。あいつの弟子と言う事は、正確な調薬道具が欲しいんだろう?ギルドの子供だましじゃ、碌な物が作れないからな」


 話す手間が省けて何よりである。


「ただな。調薬道具は木工から鍛冶にガラス工まで多岐にわたったスキルが必要でな。スキルを持ってない者は持っている者の工房に依頼を掛けて必要部品を作って貰う事になる、つまり、割高になるわけだ」


 フェンネル氏は顎を指で数度叩いた。計算中か。それからこちらを商売人の顔で見た。


「初心者セットと同じ内容できちんとした物なら5000エーンだな。だがグレッグが欲しがった物を全部セットにするなら30000エーンだ。アイテム数が違い過ぎるからな、これは値引きしない。注文が有りゃ、明日には渡せる」


「鍋のサイズはいかほどです?希望としては50本分程度一度に作れた方が良いのですが」


「サイズまで揃えたいのか?携帯性は無視か、さすが来訪者だ。だが50本でいいんならグレッグと同じサイズにする事はない。あんたの肩幅の鍋で充分だ、他のも大きくするとなると64000エーンだ、納期も延びるが」


「それで良いならそうして下さい。それと先生はすり鉢をお好みですが私は薬研が良いです」


「ああ、薬研か。あれ作るなら石工にも声かける必要があるな。そうだな……すり鉢代を引いて薬研代加算、70000エーンになるか」


 恐るべき高額に跳ねあがった。今日は地道にポーションを作り続けて金策に走ろう。製作期間は4日程。と言う事は、明日のログインできる時間帯には出来上がっている、か。要らない掌を売り飛ばし、出来るだけのポーション類を作って全部売れれば間に合うな。


「では、お願いします。お金を持参してまた伺います」


 商談をまとめて、とりあえずガラス棒と濾紙だけ購入した。4日後にはサイズの都合上使えなくなるものだが、今要る物なので仕方ない。作業場にとんぼ返りして、もう一度汎用棟101号室を借りた。


 無心になってすりこぎを動かし葉を粉末にしていく。手持ち全てを粉末にし、こまぎれにし、混合チップへ加工した。後は鍋のサイズに合わせて正しい分量ずつ調合するだけだ。


 昼近くになって、やっと全てのポーションとマナポーションが完成した。はあ、疲れた。何度もタイミングを見計らうのはしんどい。使用料を払って作業場から宿屋へ帰る。


「私はまた4~5日寝るから。水晶の魔力が半端になってるから、一度全部食べてくれるか」


 イルの保存食、クラスター水晶の耐久値が何時の間にか減っている。つまみ食いでもしたのだろう。あっという間に水晶から青みが消えうせたのを確認し、再度エンチャント(水)で、今残っているMPを全部注ぎ込んだ。


「途中で無くならないように、残量を考えながら食べなさい。暇だろうから本を置いておこう」


「本とか興味ねえけどなあ。まあいいや、それとなんか遊べそうな物出してくれよ」


 遊ぶものねえ。ストレージからあれこれ取り出してみた。すっかり忘れていたが【細工】用の木片と細紐、蟷螂が落とした鎌、蟻の落とした甲殻と触覚、馬の落とした革紐に犬の落とした尻尾型のふかふか。中に尻尾本体が無いので、本当はどこの部分かわからないのだ。


 他にもドロップ品はあるが、なまものやただの毛皮や芋虫の抜け殻は要らないと断られた。まあ肉が要ると言われても腐ると嫌なので渡さないが。


 とりあえずふかふか尻尾を振りまわしてみているイルに、物を壊さないようにと追加で注意してログアウトするべくベッドに移動。


「おいコラちょっと待て。飯は」


「まだ夕方だから腹空いてない」


「寝てる間に死んだら俺が困るの!」


 今日も良いライチ味だった。ログアウト中に死ぬとは思えないが、万一目覚めて神殿だったら寝覚めが悪過ぎる為、今日もイルが犠牲になった。しかし心なしか嬉しそうに見えるのは気のせいなのか。よし、寝よう。


辰砂しんしゃ Lv.38 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師

HP:690

MP:2060

Str:400

Vit:200

Agi:400

Mnd:555

Int:555

Dex:530

Luk:230


先天スキル:【魅了Lv.9】【吸精Lv.8】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.6】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.2】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.4】【調薬Lv.20】【識別Lv.17】【採取Lv.28】【採掘Lv.19】【蹴脚術Lv.4】【魔力察知Lv.6】【魔力運用Lv.9】【魔力精密操作Lv.14】【隠密Lv.9】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.13】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.6】【調薬師の心得】【冷淡Lv.4】【話術Lv.5】【不退転】【空間魔法Lv.6】【付加魔法Lv.11】【細工Lv.2】【龍語Lv.5】【暗殺Lv.2】【宝飾Lv.5】【料理Lv.4】【夜目Lv.1】


ステータスポイント:0

スキルポイント:17

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】


イルルヤンカシュ Lv.15 仔水龍

HP:6200

MP:3800

Str:1000

Vit:1000

Agi:300

Mnd:500

Int:500

Dex:300

Luk:100

スキル:【水魔法Lv.8】【治療魔法Lv.4】【浮遊】【空中移動Lv.4】【強靭】【短気】【環境低減】


スキルポイント:14

称号:【災龍】【水精の友】【天邪鬼】【絆導きし者】



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ