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39 絆

「お前の名前は?」


「ケンドンです」


「好きな事は?」


「カツアゲです」


「よし。なぜ『焼き魚と藻塩亭』に嫌がらせを繰り返している?」


「頼まれたからです」


「誰に頼まれた?」


「ガーンコです」


「ガーンコはどこの誰だ?どんな奴だ?」


「『角煮と氷砂糖亭』の店主です。太っていて独り身でケチです」


「嫌がらせする理由は言っていたか?」


「借金のかたに『焼き魚と藻塩亭』を貰うつもりだと言っていました。それから女将と娘も」


「店主がいるのに?」


「それ以上は聞いていません」


「ふーん。では最後、『角煮と氷砂糖亭』の場所を教えろ」


「南地区の大通りで一番大きい宿屋です。三軒隣が冒険者ギルドです」


「よしよし、でかした。褒美をあげよう、いいかい?」


「はい、嬉しぃ……で……」


 はい、ご苦労。【吸精】で倒れるまで吸っておいた。うえ、煙草みたいな臭いだ。いくら空腹でも臭いは誤魔化せなかったか。


 散々転がされて気絶している他のチンピラたちをごみから抜き取ってあばら家の中に寝かせた。ごみは置いて行ってあげよう、良い夢見ろよ。


辰砂しんしゃって毎晩、飯の度にこんなことしてんの?」


 お誂え向きに月が隠れたので移動が捗る。『角煮と氷砂糖亭』へ屋根伝いに移動する途中で水龍がそんなことを言った。


「いつもはこんなに派手じゃない。今日はやりたいことがあったから頑張ったけど。ああ、時間帯は夜中だな。白昼堂々やると犯罪者まっしぐらだから」


「そっか。飯の調達って大変なんだな。そう考えると俺の飯は辰砂だからラッキーだな、いつもありがと」


 身も蓋もない言い方だが、不意に礼を言われると照れてしまう。精霊さんに頼まれただけの間柄とは言え、一緒にいれば情も移る。言葉が通じだしてから急にほだされている感があるな。


「私も誰か吸わせてくれる奴を見つけたいよ。無理だろうけど」


 おっと、憲兵が見回りをしていた。いったん止まってやり過ごそうか。死角に入ったら道を渡ろう。


「んー、俺から吸う?俺龍だから頑丈だぞ」


 水龍がフードから顔を出した。馬鹿な事を。変な影響が出たらどうするんだ。


「子供が気を使うもんじゃない。心配しなくてもどうとでもなる」


 珍しく私が優しさを発揮したのに、水龍は肩を叩いて反論してくる。


「大丈夫だし!だって辰砂の捕まえる奴って弱いじゃん!あんなんで腹一杯になるんなら俺からちょびっと摂るだけで絶対大満足だし!」


「ったってお前がどれほど強いかなんて知らないから駄目」


 あまりここまで言い募ることはないのだが、珍しい事もあるものだと思いながら屋根を渡った。コツとしては糸を渡して適当な橋を空中に渡し、その上を浮いたまま通ることだろうか。


「何だよなんで信じないんだよ!折角役に立てると思ったのに!俺強いし、お前じゃないし!俺には『イルルヤンカシュ』って」


『災龍イルルヤンカシュと絆を結びました。全プレイヤーにアナウンスを行います』


『魔物と絆を結んだプレイヤーが現れました。これより全プレイヤーに絆システムが解放されます。詳細はマニュアルに追加された情報を参照してください』


「立派な名前が……?何だ?今なんか変な感じしたぞ」


 水龍が怒りながら名乗った途端にウィンドウが現れた。絆を結んだってどういうことだ?水龍も違和感を感じているのかもぞもぞ動いている。ちょっとマニュアルを参照しよう。


『絆システム 魔物と心を通わせ、互いの名前を知ることでパートナーとなる。絆を結べる相手は1個体のみ。パートナーとなった魔物は、プレイヤーが死亡するとプレイヤーと同じ復活地点に現れ、レベルが10下がる。パートナーだけが死亡した場合は現実時間で24時間経過後にプレイヤーの元にリスポーンする。この時レベルは半減する。パートナーのステータスは閲覧可能である』


 ええ?心を通わせたような記憶はないのだが。若干動揺しつつ、イルルヤンカシュに声をかけてステータスを開いてみる。



 イルルヤンカシュ Lv.15 仔水龍

 HP:6200

 MP:3800

 Str:1000

 Vit:1000

 Agi:300

 Mnd:500

 Int:500

 Dex:300

 Luk:100

 スキル:【水魔法Lv.8】【治療魔法Lv.4】【浮遊】【空中移動Lv.3】【強靭】【短気】【環境低減】


 スキルポイント:14

 称号:【災龍】【水精の友】【天邪鬼】



 なんだこの反則ステータス。これでLv.15って、よく私はこんなの抑え込めたな。イルルヤンカシュは暢気に「水精の友ってばあちゃんのことかなー」とか言っている。


 何か、気が削がれてしまった。今日は帰る。帰り道でため息が漏れるのは仕方ないと思うのだ。


辰砂しんしゃ Lv.38 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師

HP:690

MP:2060

Str:400

Vit:200

Agi:400

Mnd:555

Int:555

Dex:530

Luk:230

先天スキル:【魅了Lv.7】【吸精Lv.2】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.5】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.2】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.3】【調薬Lv.15】【識別Lv.13】【採取Lv.21】【採掘Lv.19】【蹴脚術Lv.4】【魔力察知Lv.6】【魔力運用Lv.8】【魔力精密操作Lv.14】【隠密Lv.3】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.12】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.6】【調薬師の心得】【冷淡Lv.2】【話術Lv.2】【不退転】【空間魔法Lv.6】【料理Lv.1】【付加魔法Lv.10】【細工Lv.2】【龍語Lv.5】【暗殺Lv.2】【宝飾Lv.5】


ステータスポイント:0

スキルポイント:17

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】


イルルヤンカシュ Lv.15 仔水龍

HP:6200

MP:3800

Str:1000

Vit:1000

Agi:300

Mnd:500

Int:500

Dex:300

Luk:100

スキル:【水魔法Lv.8】【治療魔法Lv.4】【浮遊】【空中移動Lv.3】【強靭】【短気】【環境低減】


スキルポイント:14

称号:【災龍】【水精の友】【天邪鬼】【絆導きし者】

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