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「ぎゃははははーハハハハハ……あれ?どうなってんだあ?」


「あ、アニキどこ行くんすか、あれれ?足が勝手にい」


 私のレベルが上がったからか糸の元々のポテンシャルなのか、チンピラ数名の四肢を操るくらいは容易かった。全員が全く同じ動きをしているのは初挑戦と言うことで目こぼしして頂きたい。指先で向きの指示を出しつつ、チンピラたちの後をつける。


 中央広場まで行かせて道一杯に逆立ちさせ、迷惑行為で憲兵に捕まるところまで観察。暇と言うなかれ、こういう手合いは適当に開放するとすぐ戻ってくるのである。


「またお前らか」


 と言われていたのである意味有名な輩なのだろう。数日位出て来ないでもらいたい。


 宿に戻ると、ご婦人が沈んだ様子で店の前を掃いていた。この方がイッテツさんの奥方でリンダさんの母親か。さっきも思ったけれど振り返るような美人である。


「今日からしばらくお世話になります。先程はおかしなのに絡まれて大変でしたね」


 客として挨拶くらいはしておくべきだろう。一礼すると、婦人ははっと姿勢を正して微笑んだ。


「今日からご宿泊の辰砂しんしゃさんですね。お恥ずかしいところをお見せしてしまって申し訳ありません」


「理不尽な輩はどこにでもいますよ。彼らは毎日来るのですか?迷惑な話ですね」


 慰めつつ水を向けてみた。あれだけの騒ぎの事に全く触れない方が不自然である。女将さんは眉尻を下げて苦笑した。


「止めて下さるようお願いしているのですが……」


「話を聞かなそうな若者たちでしたものね。蹴られていた缶は無事でした?」


「ええ、ウシ乳缶は頑丈ですから。彼らもどこまでなら憲兵を呼ばれないかは心得ているようで、決定的なことはしないんです」


 しばらく世間話をして、私は一旦ニーを出ることにした。情報収集は全然しないままだが街から離れなければ問題なかろう。


 無心で雑魚を狩る。南門の周辺は犬、馬、たまに蟻だ。最も手こずったのは馬だった。後ろ足の力がとても強く、糸を何度か千切られた。足首だけに集中して引き倒すのが最も効率が良い事を発見できたので良しとしよう。


「……なー辰砂しんしゃ?なんか企んでるだろ」


 夕方までひたすらレベルを上げた。その甲斐あってレベルはあっという間に33だ。水龍からのツッコミが入るくらいだからかなり露骨に悪い顔をしているのだろう。


 ステータスをチェックして、StrとAgiを400まで上げ、余りはLukに。知らぬ間に【糸】と【蹴り】が最大値まで上がっている。【糸】から【魔糸】へ、【蹴り】から【蹴脚術】へ。それぞれ15ポイントずつ消費。


「人聞きが悪い。企んでなんかないよ」


 目論んでいるだけだと嘯けば、水龍は呆れたように引っ込んだ。まだ街に戻らないつもりなのが分かったのだろう。今日はしっかり働こう、空腹は最高のスパイスと言うし。


 月が高くなるまでレベル上げは続いた。今日一日で幾つレベルを上げただろうか、38になっている。夜になったので、魔物の数が増えたことと物陰からの不意打ちで時間を短縮したのが良かったのかもしれない。変なスキルも生えてるし。でもスキルを入れ替える、今からの時間にはぴったりだ。ちょっと【宝飾】には休憩してもらおう。


「そろそろいいかな」


 再度ステータス振りまで終えて呟いた私の耳を水龍が引っ張った。痛い。


「すんげえ悪人面してるとこ悪いんだけど、そろそろ俺にも教えろよ。何すんの、今から?」


 何をするかと言われれば、答えは一つしかない。そのために頑張っていたのだ。


「ご飯だよ」


 凄く変な顔をされた。折角教えたのに失礼な奴だ。


【隠密】を意識しながら闇を伝って宿屋へ進む。白い服は目立つが、着替えがないから仕方ない。その代わり、浮いているので足音や衣擦れは一切ない。気分はスパイである。


 宿の裏手に、やはりいたか。昼間のチンピラのリーダー格と、昼よりも多少知恵の回りそうな仲間たち。手にごみやがれきを持っており、宿周辺を散らかして帰る気満々である。放火でもするかと思ったがやることが地味だな。


「よし誰もいないな、やれ。静かにしろよ」


 リーダー格が周辺を見回して号令をかける。正確には私がいるのだが、屋根の上まではチェックしてないらしく全然気づかない。


 手持ちのごみをすべて撒き、達成感に満ちたチンピラたち。ちょっとからかおうかと、ごみに糸をくっつけてじわじわとチンピラたちの方へ近づけてみる。


「え、あ、アニキ……ごみがこっち来てませんか」


「あ?んな馬鹿な……っあ?え?」


 気分はゾンビの押し寄せるゲームである。後ずさりするチンピラたちに合わせてごみを進める。片付けもあとで一手間だし、糸は本当に便利だ。ちょっと加速させたら糸が切れたように逃げ出したから追跡しよう。


 ひいひいと息切れなのか悲鳴なのかよく分からない声が響いている。私はそれを屋根伝いに上から観察し、ごみを操作して追い詰めていく。木箱や空き瓶に追いかけられるチンピラの図は傍から見ると面白いのかもしれないが、生憎笑う気分にはなれない。


 治安の悪い方へ悪い方へ進んでいくチンピラ。囮のつもりなのか、リーダー格が何人かに足を引っかけたのを見た。残念だったな、脱落しても罰ゲームは別にないのだ。だって全員捕まえるからね。転んだチンピラもごみと一緒にチンピラとのおっかけっこに強制参加である。


 さて、リーダーはもう囮にする手下がいないことに気が付いたろうか。必死に目指しているのは裏路地のあばら家である。アジト発見、ごみとチンピラを適当に団子にして転がしてリーダーに迫らせる。


 声にならない悲鳴を上げて、リーダーは間一髪あばら家に逃げ込んだ。しかし、ごみが家にぶつかった音が立たないのは不思議じゃないのか?単に気づいてないのか。はあはあと息を荒げ、床に蹲るようにしているリーダーの背を睨んだ。とっとと屈服しろ。


 魅了がかかるまでは10秒と掛からなかった。


辰砂しんしゃ Lv.38 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師

HP:690

MP:2060

Str:400

Vit:200

Agi:400

Mnd:555

Int:555

Dex:530

Luk:230

先天スキル:【魅了Lv.7】【吸精Lv.2】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.5】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.2】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.3】【調薬Lv.15】【識別Lv.13】【採取Lv.21】【採掘Lv.19】【蹴脚術Lv.4】【魔力察知Lv.6】【魔力運用Lv.8】【魔力精密操作Lv.14】【隠密Lv.3】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.12】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.6】【調薬師の心得】【冷淡Lv.2】【話術Lv.2】【不退転】【空間魔法Lv.6】【料理Lv.1】【付加魔法Lv.10】【細工Lv.2】【龍語Lv.5】【暗殺Lv.2】【宝飾Lv.5】


ステータスポイント:0

スキルポイント:17

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】【熊薬師の愛弟子】

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