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 休憩中に二人であれこれ話した。夜な夜な行う食事の際の苦労や人前でうっかり浮かない為の工夫など、大したことはないと思っていた事を幾つか。案外我慢していたようで話しだすと止まらなかった。


「お姫様も【最初】持ちなのねえ。アタシもなのよ。アタシは【最初の金剛力士・吽】なの。天部系統のレア種族よ」


 私の話を聞き過ぎたと、カリスマさんも自分の事を教えてくれた。金剛力士って仁王像ですよね。何故裁縫師をやるのに金剛力士を選択したのだろう。


 何でも天部系統と言うのはレア種族しか存在しない系統らしく、かなりステータスが優遇されているそうだ。裁縫師をやるのに不足はないそうだが、道理で水龍が怖がるはずだ。


「アタシ、運命を感じたのよね!だってアタシが最初の吽形ってことは、∞世界のどこかに最初の阿形がいるってことだもの!まだ見ぬ阿形の王子様と結ばれる為に金剛力士やってるのよ!」


 目を憧れに煌めかせて、鮮やかに蝶々を屠るカリスマさん。金剛力士なのに武器が金剛杵じゃないと思って聞いてみたら、選べたけど選ばなかったのだとか。


「だってあれリーチ短いんだもの!アタシ虫とかゾンビとか触るの嫌だから棍にしたわ、いくらボーナス付いたってお断りよ」


 意外と俗っぽい理由だった事にむしろ驚いた。笑いながら千切っては投げ千切っては投げしそうだ、等とは絶対に言わない。大人だから。


 休憩はいい気分転換になった。再びひたすら蝶々撲殺事件を繰り返しながら森を西に進み続ける。街道があるから迷う事もない。再び半分飽きつつも、ようやっと曰くありげな広場の手前まで辿りついた。


「いい、お姫様。あの広場に侵入したらボス戦スタートよ。実際のボスはフォレストベアって熊なんだけど、蝶がやたら集まって来るらしいわ。倒しても倒しても湧いてくるから、お姫様は蝶の殲滅を優先して欲しいの。手が空いたらこっちに加勢して」


 掲示板で情報収集してきたというカリスマさんの作戦は効率的だった。蝶々が纏めて飛び散る様なStr値の持ち主が熊と相対した方が良いに決まっている。私は捕まえる方は得意だけれど、Str値を考えるとボス熊相手では大して役に立たないだろう。加勢したとしても攪乱程度に収まる筈だ。


「了解です。じゃあ、行きましょうか」


 糸玉を手に持ち、緊急用のポーションとマナポーションがポーチにあるか確認。同じ様に確認を済ませたカリスマさんと目を合わせて、広場に進んだ。


『Warning!! White Forest Bear Appeared!!』


 ええ…格好良いつもりなのか、急に英語のウィンドウが開いて点滅した。スキル説明などもアルファベットが全く出て来なかっただけに面食らう。しかも森の熊さんが白いってどういう事なんだ。久しぶりに運営の趣味を疑うな。


「え?待って、ホワイトって……っ!お姫様、ヤバいわ。レアボスに当たっちゃったみたい」


 ん、レアボス?そう言えばさっきの説明ではホワイトとは言っていなかったかもしれないな。


「レアに当たるなんて運が良いですね。では作戦通り行きましょう、熊の方はお願いしますね」


 ヤバいなんて若者の言葉を使いこなすとはさすがオネエである。私はあれほど多様なヤバいを使い分けることは出来ずにいるが。空気を読んだのか、ただ佇んでいた白熊が吠えた。呼応するように集まり始めた蝶達に向けて糸を編む、蜘蛛の巣型は作りやすい。


「っもうお姫様ったら!男前すぎるわよ、金剛力士だったら惚れるとこだったわ!いくわよぉ、オラかかってこいやゴルァアア!」


 カリスマさんも喚いて熊に突進していった。男前かどうかはともかく惚れないでくれるとありがたい。いや大丈夫か、私はニュンペーだからな。


「びっくりするほど勘違いだよ!明らかに逃げ腰だったぞあのおっさん。辰砂やっぱアホなんだな、でもおっさんも大分アホだわ」


 水龍がもごもご呟いているが良く聞こえない。今は蝶潰しに忙しい、またあとで聞くか。何か悪口を言われている気もするし。


「ちぇえええええぃ!」


「ガアアッ、グルゥルルルァアアア!」


 カリスマさんの戦いは広場で展開された。これを無粋な邪魔が入らぬようにしつつも熊にちょっかいを出せば良いわけだ。しかし、私の加勢が要るのか?これに?


 気合とともに棍を突き出し熊の肩辺りに打撃を与えるカリスマさん。熊の爪の軌道を見切り、僅かな身動ぎだけでかわして空いた脇腹にカウンターを入れ、立ち位置を入れ替えるように背後に回って頸椎辺りに振り下ろすように強打を入れる。打撃の度に熊が苦悶の声を上げ、苦し紛れの反撃を繰り出してはかわされている。明らかな力量の差が見えた。


「……野暮だな。うん」


 心なしか生き生きと熊と戦うカリスマさんの邪魔だけはするまいと心に決めて、私はひたすら蝶々を集めて踏む作業に戻ったのだった。


辰砂しんしゃ Lv.24 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師

HP:480

MP:1640

Str:330

Vit:200

Agi:330

Mnd:530

Int:530

Dex:530

Luk:200

先天スキル:【魅了Lv.7】【吸精Lv.2】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.5】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.2】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【糸Lv.22】【宝飾Lv.5】【調薬Lv.15】【識別Lv.12】【採取Lv.21】【採掘Lv.19】【蹴りLv.26】【魔力察知Lv.4】【魔力運用Lv.6】【魔力精密操作Lv.10】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.11】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.6】【調薬師の心得】【冷淡Lv.1】【話術Lv.2】【不退転】【空間魔法Lv.6】【料理Lv.1】【付加魔法Lv.10】【細工Lv.2】【龍語Lv.5】


ステータスポイント:80

スキルポイント:21

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】【熊薬師の愛弟子】


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