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「お姫様が今日来てくれてよかったわ。厳しいかもしれないけど一人で行こうかと思ってたから……に、しても全然エンカウントしないわね?」


「ああ、薬、使わないに越したことはないと思ったので網にまとめてありますけど。10匹超えたら倒そうかと思ってました」


 周囲に漂わせた糸に触れた蝶々を団子状にまとめたものを手繰り寄せてみせると、カリスマさんは武器を構えながら呆れたような顔をした。


「アンバランスね、お姫様って。糸って操作と変質を同時にこなしてしかも1本じゃ弱いから複数本扱わないといけないんでしょ?攻略組ばりの腕前なのにどうして装備には無頓着なの?」


 蝶々を長柄の棒でしばき倒しながら投げかけられる質問に困った。そんなことを言われても勧められたままに選んだだけで、自分の腕前がどうこうとかは考えたことすらなかった。一応装備も整えようとは思っていたが、カリスマさんと知り合わなければ未だに初期装備のままだった可能性はかなり高い。あ、最後の蝶々が死んだ。


「糸もそろそろ新調したいんです。決して無頓着なわけではないですよ」


 網をほどいた糸玉を眺める。ハンカチにしたりチョーカーを作ったりブレスレットになったりと非常に多芸な武器であるが、若干くたびれてきた様相を呈している。本来の糸が消耗品であることを考えれば無理もない。


「そうは思えないけどねえ。まあ、糸って鍛冶屋でも裁縫師でも作れないし、糸が初期装備のままなのはわかるんだけど。いったい何屋なら作れるのかしらねえ」


「……そうなんですか」


「知らなかったの?やっぱり無頓着なんじゃない。見栄張ったって良いことないわよ」


 見栄を張ったわけではないのだが。ただ、武器屋にあるのだろうと思っていただけだ。そう言ったら、また呆れた顔をされた。今のところ取り扱っている店は見つかっていないそうだ。


「辰砂ってアホなんだな」


 水龍までわざわざ囁いて来て、自分の後頭部に手刀を入れる羽目になった。カリスマさんには怪しまれたがごまかしたから問題ない。


 何処からともなく集まってくる蝶々を団子にしてはしばき倒すこと1時間。レベルは上がるしアイテムも大漁、ではあるのだが。延々繰り返されるルーチンに飽きてきた。予定ではそろそろボスがいる辺りに来ていたはずだったのに、半分も進めていない。


「おっかしいわねえ、こんなにエンカウント率が高いなんて掲示板にはなかったわ。ボスと戦ってる間だけは凄いって聞いてたんだけど……」


 カリスマさんも困惑顔である。蜘蛛よろしく伸ばした糸で捕まえている為ポーション類の消費は全くないのが救いだろうか?気分的にはそうでもないが。


「ちょっと休憩しませんか?丁度今朝ノース山の湧水汲んできたので」


 休憩が終わったらちょっと大きな蝶団子をしばけばいいだけの話だ。カリスマさんも賛成してくれたので、適当な石の上に糸を編んで並んで腰掛ける。クッションみたいでいいわね、と褒めてくれたので空中移動用のクッションの事を思い出した。忘れないうちに頼んでおこう。


「カリスマさん、私が上で寛げるくらいのサイズでクッションを作ってもらえませんか?装備を譲っていただいた後でいいんですが」


 水筒を一本取り出し、蓋に注いで渡した。私の分は水の宰を駆使して一口大にする。なんという不作法、だがそれがいい。要るだけ口に入るので楽である。順調に人間が駄目になっていく。肩が叩かれているが無視する。


「いいけど。何に使うの?野宿なら野営セットじゃないと魔物避けられないわよ。それと使う時間は短いのかしら?」


 カリスマさんが不思議そうに用途を尋ねてくる。全速で1分あたりMPを25使うから、ゆるめに飛んでも2時間は越えられないか。肩が叩かれ続けている、諦めないなこいつ。


「飛ぶ時に敷きたくて。今の私のMPだと2時間を超えることはありません」


 もうカリスマさんには隠さなくてもいいか。私の中ではかなりカリスマさんの信用度は高まっている。正直に用途と時間を答えた。カリスマさんは狐につままれたような顔をして、しばらく考えていた。待つ間に小さな水玉をフードの中に送り込む時間があったほどだった、やっと静かになった。やれやれ。


「えっと……【風魔法】系の飛空術を使うときってこと?でもアレ確かスーパーマンポーズ取らないと飛べないんじゃなかったかしら……クッションなんて使えるの?」


 そんな面白スキルがあるとは知らなかった。ポーズ固定の飛行は使いどころが難しそうだ。


「私のはそれではなくて、【浮遊】と【空中移動】の合わせ技ですから。どこにも体重がかからないのに移動するのが慣れないので、クッションに乗れば落ち着くかなと思いまして」


 ほら、と地に足を着けるのを止める。だいぶ馴染んできた浮遊感に包まれてカリスマさんを見上げた。ところで30センチは浮きあがった160センチの私が見上げるカリスマさんの身長はどれほどあるのだろうか、まだ頭一つは違うのだが。


「ええ?そんなスキル聞いたことないわ、お姫様って人族じゃないの?【浮遊】スキル持ちって言ったら妖精系統だけど、ちっちゃくないし……」


「ああ、ニュンペーです」


 もう一度驚かれた。何でも掲示板ではEPの回復が特殊すぎてレアなのに外れ認定されているそうな、そんな扱いでは竜胆さんが傷ついてしまう。そりゃ確かに夜な夜な人目を忍んで他人を魅了し、HPとMPを失敬するなんてアンダーグラウンドな雰囲気漂うプレイスタイルを強要されるけれど。せめて1週間に1回くらいの頻度であってほしかったけど。


辰砂しんしゃ Lv.22 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師

HP:450

MP:1580

Str:330

Vit:200

Agi:330

Mnd:530

Int:530

Dex:530

Luk:200

先天スキル:【魅了Lv.7】【吸精Lv.2】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.5】【緑の手Lv.2】【水の宰Lv.1】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【糸Lv.19】【宝飾Lv.5】【調薬Lv.15】【識別Lv.12】【採取Lv.21】【採掘Lv.19】【蹴りLv.24】【魔力察知Lv.4】【魔力運用Lv.5】【魔力精密操作Lv.9】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.10】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.6】【調薬師の心得】【冷淡Lv.1】【話術Lv.2】【不退転】【空間魔法Lv.6】【料理Lv.1】【付加魔法Lv.10】【細工Lv.2】【龍語Lv.5】


ステータスポイント:60

スキルポイント:17

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】【熊薬師の愛弟子】

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