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さっきからニュンペー推しにだけ異様に熱がこもっている。落ち着いて考えられないので、竜胆さん落ち着いてください。言葉を途切れさせた竜胆さんは、私の言いたいことに気が付いたようで赤面した。
「す、すみません。私を形成する際モデルになったスタッフがニュンペーに思い入れが強く、熱が入ってしまいました。現在ニュンペーを引き当てた方が44名ほどいらっしゃるのですが皆さん選んでくださらなくて……」
肩を落とす竜胆さん。まあそりゃ性愛の精霊の上位互換とか言われてもあんまり魅力は感じまい。実際には違っても忌避されがちであろう、これも風評被害の一種か。
「能力値としては絶対に他に劣りませんし、せいぜいそこはかとなく色っぽくなるくらいしか人族との差異もないので私の元のスタッフは絶対的自信を持っていたようなのですが、この現状でしょう?私もつられて悲しくなってきてしまってつい」
随分砕けた様子の竜胆さんを見ていると、正直同情してしまった。別に何がやりたいとも決めていなかったし、むしろ万能であるのなら今の私にうってつけである気がする。
「では、ニュンペーにしてください」
「えっ、よろしいのですか?」
「構いませんよ。∞世界でのニュンペーは実際には違うのでしょう?」
勿論ですと同意をもらい、ではこれで進めましょうと返す。じわじわと喜色を浮かべる竜胆さんだが、そろそろ進めないとサービス開始に間に合わないという事情もあったりする。大人なので言わないが。
「ありがとうございます!ありがとうございます!では続いて決定されたステータスの確認に入りますね!」
居酒屋かラーメン屋の店員のような竜胆さんが大きなウインドウを表示させた。これは良くあるステータス画面だ。
辰砂 Lv.1 ニュンペー
職業:
HP:200
MP:700
Str:300
Vit:100
Agi:300
Mnd:500
Int:500
Dex:500
Luk:100
先天スキル:【魅了】【吸精】【馨】【浮遊】【空中移動】【緑の手】【水の宰】【死の友人】【環境無効】
後天スキル:【】【】【】【】【】【】【】【】【】【】
サブスキル:
ステータスポイント:200
スキルポイント:100
称号:【最初のニュンペー】
辰砂、とはあらかじめ決めておいた私の名前だ。私のアバターは白く本物の辰砂は赤いけれどそこは気にしない。一覧で見るものの、このステータスから何を読み取ればいいのか。とりあえず、
「先天スキルが多くありませんか」
「そこはそれ、ニュンペーなので。【魅了】【吸精】【緑の手】【水の宰】【死の友人】はニンフ各種族が持っているスキルですね。【馨】はいい匂いが常時漂うパッシブスキルです。【空中移動】は浮いたまま移動できるスキルですね、ただ高さ制限があって地面から5メートルまでです。【環境無効】は火山だろうが深海だろうがなんなら真空でも大丈夫な物凄いスキルですよ!」
「はあ……」
真空って。宇宙に進出する予定でもあるのだろうか。いやまあいい、とにかくレア種族ならではの特典だということだ。
「ではステータスの数値に関して教えてください」
爽やかに教えてもらったところによると、人族の平均ステータスはオール100だそうで。おかしくない?ねえこれおかしくない?レア種族だから?
「レア種族でもありますし、【最初のニュンペー】という称号の効果でも有りますね。各種族で一番最初に決定した方のステータスが初期値の二倍になるんですよ。【最初の○○】が付いた方が同じボーナスを持っている方ですね。ご納得いただけましたか?」
早い者勝ちと言うわけか。頷いてステータスポイントの振り分けに移った。あまり考えていてはいつまでも進まない。とはいえ何をしたいのか決めていないので、均等に振り分ける。
辰砂 Lv.1 ニュンペー
職業:
HP:200
MP:700
Str:330(+30)
Vit:120(+20)
Agi:330(+30)
Mnd:530(+30)
Int:530(+30)
Dex:530(+30)
Luk:130(+30)
先天スキル:【魅了】【吸精】【馨】【浮遊】【空中移動】【緑の手】【水の宰】【死の友人】【環境無効】
後天スキル:【】【】【】【】【】【】【】【】【】【】
サブスキル:
ステータスポイント:0
スキルポイント:100
称号:【最初のニュンペー】
こうなった。種族と言い己の性格と言い、盾を持って耐えるようなスタイルにはならないように思うのでVitだけ+20に留めた。HPとMPに関しては基礎ステータスのうちVitとMndの値によってレベルアップ時に成長するそうだ。
「きれいな並びですね、良いと思いますよ。ステータスポイントはレベルが上がるごとに10ポイントずつ貰えますから、こまめに振り分けておくことをお勧めします」
竜胆さんのお墨付きももらい、続いてスキル構成へ。最初にもらえるスキルポイント100と言うのは、残しておいてもゲーム開始と同時に回収されるそうだ。使い切ってくれと言われた。