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少年少女との多岐にわたる商談を終えた後。実は女子二人も、それぞれ花モチーフの根付の紐部分を長く加工して武器に取り付け、ご満悦で帰って行った。本人がいいなら良いけど……竪琴はともかく弓に飾りをつけると邪魔なのでは? まあ、実用性に欠ければ自分でわかるか。売主としては、大事に扱われてほしいと思うばかりだ。
資金も調達したし、取り急ぎやることはなくなった。そうすると次に何をするかというのは自ずと決まってくるわけだが、まずは腹ごしらえからだ。フードコートも開店直後は人がまばらで助かる。大衆食堂っぽい佇まいの店を選んで席に着いた。受付前に今日の開催予定が張り出されているのがよく見える、いい席だ。
「へいらっしゃい! ご注文は!」
「私は日替わり朝食で」
「えっとええとじゃあごろごろ兎肉煮込み定食でお願いします」
「あいよ! 日替わり、兎煮込み一丁!」
どことなくラーメン屋の大将みたいな店主である。この店ならおふくろさんは全然気後れしなかっただろうが、カリスマさんが食べられるものはなかったに違いない。店選び一つとってもなかなか一長一短で難しいものだ。
きびきびした動作で店主が机に各自の定食がのった盆を置いてくれた。日替わり定食は、なんだろう? 肉か魚の団子をトマトソースで絡めてあるようだ。肉だと言い切れないのは、色味がつみれっぽいせいである。イルの方はシンプルに兎と野菜がたくさん入った田舎風煮込みだ。朝ごはんならそっちのほうがよかったかな。
「「いただきます」」
しばし無言で各々の食事を進めた。肉団子も食べてみれば香草を効かせてあってトマトに負けてない。トマト部分はパンに乗せるといい具合に美味しいし、これは当たりだな。ちらりとイルを見やれば、イルも頷きながらちょうど半分食べ終えたところであった。目が合って、どちらともなくおかずの皿を交換する。
「あ、こっちも美味しい。なんだろ? 後味がすうってするな……」
考え込むイルをよそに私も煮込みを食べてみる。見た目は鍋にぶち込んで煮ました! みたいな豪快さを感じるが、食べてみると結構繊細である。思ったより野菜の出汁が主張しているな。兎肉は独特の匂いがあるものだが、これなら兎が苦手な人も美味しく食べられそうだった。
期待値を大幅に超えてくれる朝食をいただいた後は、そのまま賭博闘技場内を移動した。今日の開催予定時刻のチラシを見ていて、やっぱり腐乱死体杯が気になって仕方なかったためである。ゾンビのボディビル大会って何をどうするのか。もう筋肉は鍛えられないはずなのに。
「例の仮説が気になるから、夜まで時間を潰します。とりあえず私はこの腐乱死体杯の詳細が知りたいから観戦したいけど、イルはやりたいことがあるか?」
水を向けると、イルは何やら考えているようだったが、ややあって首を振った。
「特にないですよ。俺も昼間の部の芸術部門は興味あったし。果物仙人掌杯の踊りってどんななんですかねえ」
ほほう、イルは果物仙人掌杯の方が気になるのか。幸い腐乱死体杯が午前中、果物仙人掌杯が昼中、緑芋虫杯が午後あるようなので、二人とも満足できるはずだ。
「フルーツサボテンってあの頭に花の咲いた幸せそうなサボテンだったかな? だいぶ丸っこかったけど踊れるもんなのかな」
「そう、それが不思議なんです。あいつらだいぶ足短かったですよね」
雑談を続けつつ、受付横に掲示されている観覧ブースの使用料を確認したが、あまりにも高額なので断念。ちょっと騒がしいだろうが、普通の客席から観戦するか。




