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「薬品店に、解毒薬や麻痺消し、気つけ薬なら置いてありますよ。使われないのですか?」


 シュンだけは正直気に喰わないのだが、この少女達は感じが良いのでお節介をすることにした。紛らわしい商品名を教えてあげると、少女達はまた顔を見合わせた。


「これって……」


「掲示板に上げた方が良くない?」


 この子たちも掲示板を活用しているのか。私は正直使うつもりはないので、情報を提供して欲しいと頼んでみる。


「薬品店の店主がどうして売れないのか不思議がっていました。もし良ければ、周知して頂けると嬉しいのですが」


 頼みは快く引き受けられて、おかっぱで背の低い方の少女が手早くウィンドウを操作してくれた。あっという間に終わったらしく、丁度シュンが担がれたまま戻ってきたタイミングで終了する。


「ポーションゲットだよ!皆お礼言って言って!」


 ポニーテールの背の高い少女がそんな事を言う。取引だから気にしなくていいのにと小さく手を振ったが、シュン以外は皆声をかけてくれた。悪い気はしない。


「この人超良い人なんだよ。状態異常系の薬って、薬品店に変な名前で置いてあるんだって、すぐ行って西の森再挑戦しようよ」


 超良い人とやらに認定されたあと、彼女らは駆け抜けるようにして街に戻って行った。残念ながら引っこ抜かれた薬草類は散らばったままである。根が傷んでしまっているだろうが、一応埋め戻ししてみることにした。治れ根付けと念じながら植えていると、魔力が植物に流れて行くのを感じた。


「?」


 魔力を流そうとはしていなかった筈だが。もう一度植物を植えてみるが、今度は流れない。となると、思考が鍵か?該当スキルはどれだろう。ステータスを開いてそれらしいスキルを開いてみた。やはりというか、【緑の手】だ。Lv.1の活性化と言う魔法らしい。


 治せるならその方が良いので、出来るだけたくさん魔力を送り込みながら植え直しを完了させた。明日には元気になればいいが。忘れていた水筒を取り出して一応水もやっておいた。ついでに飲んでみるが確かに美味しい。また汲ませて貰うか。


「まあいらっしゃい辰砂しんしゃちゃん!水龍ちゃんも昨日ぶりね!何だか今日は人が多いわねえ」


 採集を終えて泉に移動すると、挨拶前から精霊さんが登場された。水龍がちょっとだけ顔を出して唸る。


「ジャジャッ」


「まあ、どうしたの?ええ?街怖い?撫でくり回されて離してもらえなかったって?まあまあ」


 昨日の話を伝えているらしい。精霊さんにはちっとも驚いた様子が見られないので、多分その訴えは無意味だろう。


「大変だったわねえ、でも水龍ちゃん可愛いからねえ。うっかりひとりになったら攫われちゃってもっと怖い目に遭うかもしれないわ?しっかり辰砂ちゃんにくっついておくのよ」


 あ、やっぱり。採集を続けつつも聞こえる会話が予想通り過ぎた。水龍の力無い相槌が聞こえて、肩に爪が引っ掛かる。待遇の改善は認められなかった、と。残念だったな。


「ありがとうございます、精霊さん。そうだ、これ、お使いになりませんか」


 水龍を丸めこんでくれたお礼をしたいので、今朝作ったブレスレットを取り出してみる。


「まあ、水晶の装飾品ね。綺麗ねえ、だけど……貰えないわ」


 しょんぼり顔の精霊さん曰く、下位精霊は自分の魔力の通らない物が触れないのだと言う。精霊さんは水の精で、水晶は土の気の物。薔薇水晶に至っては火の気も併せ持つそうだ。


「そうですか……」


残念である。この世界で一、二を争う恩人の精霊さんに受け取って貰いたかったのだが。


「魔法のかかった品だったら触れるんだけどね。湖に居た頃の仲良しさんがね、付加術師さんだったから色々ご馳走になってたの、懐かしいわねえ」


 付加術師ときた。それでは今朝これは要らないと断じたばかりの【付加魔法Lv.1】を使えば何とかなるのだろうか?スキル詳細を確認してみよう。精霊さんに断りを入れてステータスを開く。


『【付加魔法】対象に魔法または魔力を与える。効果時間は使用MPで調整可能。対象により抵抗される事がある。効果は重複しない』


 簡潔な文章である。つまりこのブレスレットに魔法をかければ精霊さんが使えると言う事ではないだろうか。早速Lv.1で使えるエンチャント(水)を使用した。


『一部抵抗されました』


 おや。ウィンドウが現われて部分的に失敗した旨が表示されている。もう一度ブレスレットを観察すると、水晶部分は青みを帯びているのだが、薔薇水晶は変化が無かった。火の気というのが原因だろう、相性があるようだ。


「精霊さん、この中だとどの石がお好きですか?」


 手持ちの水晶達から粒の大きい物を取り出して精霊さんに聞いてみた。精霊さんは即決で紫水晶を選んだので、他は仕舞う。


「これは水の気があるから触れるわあ。だけどほんとう辰砂ちゃんて芸達者ねえ。水龍ちゃんも良い人に貰われて良かったわねえ、絶対幸せになれるわよ」


 まるで嫁ぎ先で言われるような事を水龍が言われている。明らかに困った様子だが、精霊さんは私が磨いているアメジストに興味津々で気付く素振りは見られなかった。元から触れるから魔法は要らないと言われ、薔薇水晶と取り換えるだけで完成した。


『水晶のブレスレット(水) 品質D 耐久度500

屑水晶を丁寧に磨いて繋いだ簡素なブレスレット。魔力糸で繋いであり、結び目はどこにも見当たらない。あしらわれた単結晶と紫水晶は若干品質が高い。水晶部分に水魔法が付加されており、水魔法を僅かに補助する。魔力が切れる迄は壊れない』


 最初に作った物よりは品質が上がった。付加魔法を使うと品質が少し上乗せされるのかもしれない。MPを奮発した甲斐があって壊れにくそうだ。精霊さんも喜んで受け取ってくれたので大満足である。


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