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 何ら問題も起こらないまま翌朝を迎え、夜明け前に全員集合。5分前行動が身についている感がある。夜明け集合ではなく夜明け出発なんだよな。


 今度はクーの街から東に進んでいく形になるので、東門へ向かった。残念ながら、この町は朝があまり早くないらしい。屋台を含め、朝ご飯にはあり付けそうもなかった。カリスマさんが何となく切ない顔をなさっているが……あ。そう言えばストレージ内にカリスマさんも大丈夫なメニューがあった気がするぞ。


「カリスマさん、天ぷらかポテトフライってお好きです?朝からだと重たいですかね」


「そうねえ……ちょっと今食べるにはヘビーかしら。だけど、揚げ物大好きなのよ。なまぐさ食べちゃダメだから∞世界(こっち)じゃ全然食べてないわ。ニーの街のから揚げ屋台もすっごく行きたかったんだけど」


 カリスマさんは長すぎるまつ毛を伏せて溜め息をついた。そうか、天部系統ってなまぐさ全般駄目なんだっけ。∞世界に置ける揚げ物の歴史はついこないだ幕を開けたばかりだし、なまぐさでない揚げ物にまで手が届いてなくてもおかしくない。カリスマさんの揚げ物欲求は募るばかりなのだろう。


「それじゃあ、ハッチの街にカリスマさんの食べられる揚げ物が無かったら、私の手持ちの精進揚げとポテトでお昼にしませんか?おふくろさんも、から揚げと竜田揚げと精進じゃない天ぷら類もありますけどいかがです?」


 ぴく、とおふくろさんの鼻が動いた。おふくろさんの微かな表情の動きは土竜の為よく分からないが、唯一見て取れるのがこの鼻だ。これまでの付き合いで、なんであれ気持ちが動くと鼻も動くという大雑把な統計が取れている。


「竜田揚げって、あのちょっと硬めのでこぼこしたやつ?」


「そうですね、片栗粉を使うので見た目も変わります」


「えっと、それじゃ精進じゃない天ぷらの中身って何かな」


「確かとり天、鯵天、鯛天、鱚天、カワハギ天だったかな?とり天は某県名物の方と普通の方と、2種類あります」


 天ぷらの種類を言うたびぴくぴくする鼻が面白い。ちなみにカリスマさんにも野菜の種類を伝えておいた。公平じゃないからね。ちなみに茄子、ズッキーニ、南瓜、ウド、木耳、舞茸、蕗の薹、筍である。玉葱と人参はかき揚げだ。聞いた話じゃアボカドも美味しいらしいので、今度やってみたい。


「……前言撤回していい?話してるうちに物凄くお腹空いちゃったわ。どこか座れる場所ってあったかしら」


 揚げ物に関する説明は、どうやらカリスマさんの胃にダメージを与えたらしかった。鼻反応が面白くてつい詳細に話したせいかもしれない。ごめんなさい。


「んー、見なかった気がするかも。ここって機能が闘技場に集中し過ぎちゃってるんだろうね。まあ、あそこが一番儲かるだろうし解らなくもないけど」


 おふくろさんが土竜爪をヘルメットに差し込み、おでこを掻いた。器用なものだ。だが席問題なら私が役に立てると思う。


「おふくろさんに作ってもらった家を野営セットに仕立ててあるんですが、街の外に出てそれを展開するなんてどうですか?和風づくりなので机と椅子は無いんですけど、敷物位なら出せますよ」


「オッケーそうしよう!」

「それすっごく素敵ね」


 即答が2人分重なったので若干たじろいだが、とりあえず予定通り街から出る列に並ぼうか。幸い早朝なのでプレイヤーくらいしか並んでないし、すぐに出られるだろう。


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