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 さて、真面目に仕事をしている方の門番に冒険者ギルドカードを提示して、通行の許可を得た後。真面目じゃない方の門番が制服を脱ぎ捨てて髪を振り乱しているのを尻目に、私たちは神殿へ移動した。何はともあれ移動箇所の登録をしておかねばなるまいと言う話である。


「なんか、今までのどことも違う変わった街ですね」


 とはイルの言である。確かに、ロックの街西門から神殿までまっすぐ進んできただけなのに個性の強い住民たちを随所で見かけた。


「俺、さっきの角で歌ってたおっちゃん好きだな。『♪息してるだけで税金取りやがって!俺が何をした?1エーンだって稼いじゃいねえってのに』……あれ。ここって領主館あるんじゃなかったっけ?あんな歌唄ってて捕まんないのかな」


「捕まらないのか、捕まるのが怖くないのか……どっちにしても、相当自由な街みたいねえ。噴水の所にいた女の子二人組の歌詞も結構だったわよ」


 カリスマさんも驚いているのか、さっきからあちこちの個性強めな人たちに視線が釘付けだ。ちなみにその女の子二人――多分双子――が綺麗なデュエットで歌い上げていたのは領主様に関してであった。領主様には奥さんと愛人が合わせて15人いて、子供が55人いるらしい。領主様は朝から晩まで酔っぱらって仕事をし、奥様方は食っちゃ寝し放題、子供たちはみんな無職で歌って踊っているそうだ。歌詞通りに受け取るならば、どえらい一家である。


「私は門番がギターを持っているあたりも中々いかしていると思いました。一緒に歌ってる人は手枷足枷引きずってましたし」


 あの人は一体どうやって生活しているのだろう?一般人なのか?ご飯の時には手枷を外してもらうのだろうか。いろいろ気になる人だらけだ。


 さて、神殿の中に入り、いつも通り青い光に触れて街の登録を行う。亀ちゃんと蛇ちゃんにはまた少し降りてもらって、無事登録できた。この神殿では、他の街と違って像が一体しか存在しなかった。興味が湧いたので、近くに寄って祭壇の名前を確認する。


『ありとあらゆる自由を司るもの ナマ・エハマ・ダナイ』


「うーむ……」


 何だろう、この何とも言い難いシュールな感じ。ちょっと神父さんに話を聞いてみようと思い周囲を見渡したが、神父さんらしき姿の人は存在しなかった。バンドマンみたいな感じの人が数人うろついているだけだ。


「おや、ナマ・エハマ・ダナイ様について何かお知りになりたいことがおありですか?」


 おや、バンドマンのうちの一人が話しかけてきた。出来れば神父さんに聞きたいので遠慮しようとして気が付いた。このバンドマン、魔改造された神父服を着ている……。なんで神父服の胴体部分が破り去られているのか、帽子から鎖が何本も垂れているのか、何よりも何でエレキギター風の楽器をかき鳴らしながら話しかけてくるのだろうか。


「え、えーと他の街では自由の神様をお見かけしたことが無かったものですから」


「(キュイーン)ええ、あまり人気のある神様では(ギュキューン)ないようですから(キュイキュワイーン)。ですが大変に寛容な方でして(キュラキュラキュラキュララッ)、どのような信仰でも(ギュイギュイン)受け止めて下さるのですよ、こんなふうにね。(ギュワーン)クソッタレなこの世界に!(ギャーキュワッ)聞き届け給え!『今日の祈り』!(ギュギュギュキュキュキュキュキュ)」


「……あ、ありがとうございました。失礼しますね」


 鳴り続けるメロディ?のせいで全然話が入ってこなかった。しかも途中からなぜか演奏が始まってしまうし。わからない。これがロックなのだろうか?音楽に興味がないせいなのか付いて行けない。この町は私には向いてない事だけはわかったが、とてももやもやする結果になった。


 なお、おふくろさんは別のバンドマンに話しかけてエレキギター風楽器の入手方法を聞いてきたそうだ。魔法道具の一種で魔法楽器に分類されるらしい。魔石でほぼエレキギターと同等の性能を持っているのだとか。名称は魔石ギター。まんまであった。おふくろさんも欲しかったらしいが、土竜族向けのサイズが存在しないと言う事で断念していた。


こんなんロックじゃねえ!

改めてロックについて考えてみると、これだと言うものは無い事に気づきました。

そもそも文章でロックを表現できるはずがなかった。



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