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ミミズのボスを攻略するにあたって最も注意しなければならないのは、ミミズの影から出てくる人影の存在であるらしい。状態異常に注意しなければならないボスは熊以来だったか。とは言えボス戦でも人影の性能に差はないので、出てきたらきちんと叩いておけば恐れることもないそうだ。


「次の次、か。もうちょっとだね」


関所が解放されてから∞世界内で10日以上経過しているためか、ボスを倒そうと並んでいるプレイヤーはそれほど多くなかった。楽しげな雰囲気のパーティが多い。薄暗い洞窟であるのに、なんだかほのぼのした空間が形成されていた。


「職人さんが多いんですかね。何を作ったとかどこがこだわりとか、盛り上がってますよ」


若干耳の良すぎるイルが囁きかけてきた。ほほう。私達みたいに誘いあわせて参上したパーティも結構いるのかもしれないな。もうすっかり戦法から弱点から丸裸にされたミミズであるからして、私達生産職でも充分に倒せるのである。


「ウールちゃん、そろそろボスの所に着くけど戦う?アタシはどっちでもいいわよ」


いよいよ私たちの前のパーティがボス戦に突入したのを見て、カリスマさんがウールちゃんのほっぺたを撫でた。ウールちゃんは即座にお断りしたので、今回は不参加のようだ。と言う事は4名か。私も亀ちゃんと蛇ちゃんに降りてもらい――なんか不服そうだ――久方ぶりの昏光を纏わせた。なんたってミミズを可能な限り即殺しなければならないからね。


亀ちゃんは禍々しい紫の光を見て、一つ頷いてウールちゃんの毛の中にうずもれに行った。正しい選択である。パーティを組めない以上、死ぬ光なんぞに晒されて欲しくない。ところが蛇ちゃんはお構いなしにこっちに来るのである。こら、駄目だって。


「駄目だよ、亀ちゃんと一緒にウールちゃんに埋もれてなさい、あっ!ちょっ」


聞く耳持たずの蛇ちゃんは、私が後ずさるため縮まらない距離に苛立ったのか、全身のばねを使ってジャンプした。思いの外鋭かったそれを避けきれず、蛇ちゃんが腕辺りにぶち当たる。蛇ちゃんが死んでしまうではないか!焦って昏光を消……昏光を……あれ?


蛇ちゃんは至って平然としたまま腕を這い上がり、首に巻き付いて襟の内側に納まった。そこはかとなく、やり遂げました!みたいな達成感を感じる。いやまあ、死なないんならいいけど。あーびっくりした、もう。


「亀は駄目で蛇は大丈夫なのか。やっぱり死系なんですかねえ」


「そうなのかもな。でも意思疎通が出来るようになってから発覚してほしかったよ……」


自己申告が有るのと無いのじゃ、心構えに随分な差が出ると思うわけで。ともあれ、いつの間にやらイルが物凄い量の水を呼び出していることに気付いて一応声をかけておく。


「イル、幾ら即殺ったって、一撃必殺はしないようにね」


「えっ?どうしてですか」


釘刺しは念のためだったのに、思いのほか図星だったようで驚かれた。決まってるだろう、イルがガチで水魔法なんか使ったら余波が酷いからである。


「周りに人が一杯いるから。イルは、自分の余波で人が死に得ることを念頭に置いて戦いなさいね」


「えっ」


何故かイルは大変に驚いた様子だったけれども、ややあって水を殆ど引き上げたので多分わかってくれたのだと思う。後はいかに周囲に被害を出さずにミミズを即殺するか考えればいいだけだな。


「……そう言えば成龍になってから雑魚ばっかりだったっけ……」


物凄く憂鬱そうな顔でイルが何か言っていたが、ウールちゃんの方を見ていたから私宛てではなさそうだ。丁度良く私たちの順番のようだし、よし頑張るか!


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