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何はともあれ草は大量に集まった。細工物にも使えないレベルの屑水晶を全部出して見比べてみる。明らかに草の量が過剰であった。いやいや、こんな時の為のストレージ様だ。余りはしまっておこう。余剰の草を入れ、大量の水を引っ張りだした。浮かせたままでも材料として認めてくれるだろうか?
「『遍く御座します八百万の神、とりわけ『HPの神』よ、何卒ご助力願いここに祈願奉る。私はここです。作りたいのは『体力回復の丸薬』です。希望数量は作れるだけ、材料は沢山あります。魔力を捧げますのでどうか成して頂きたく畏み畏み申す』」
錬丹術第一巻から、体力回復の丸薬の頁を参照。数量と材料の部分は括弧書きで、若干の自由度が存在する。幾つ作れるかわからずふわっとした指定になったが成功するのだろうか?ま、何事も実験である。
水は最初から浮かせていたが、山盛りの雑草と屑水晶が浮き上がった。あ、やっぱり多すぎたか。雑草は大部分が地面に残ったままだ。水も過剰だったらしく水玉が分裂した。後は前回見た現象の規模が大きくなっただけのようだ。あ、いかん。完成した丸薬は自然落下するのだ。急いで糸を編んで縁側に広げて待機する。
ざらざらと音を立てて丸薬が糸布の上に落ちてきた。私もアホである、ちょっと浮かせておけばこんなに跳ね回ることは無かったろうに。糸布の周囲を持ち上げるように操作してはみ出す事だけは回避したけれど、大変ひやっとした。地面に落ちたものを商品にするのは寝覚めが悪い。
「幾つ作っても完成までの時間は変わらないんですね」
感心したような声を出したイルが丸薬を一粒摘み上げて日に翳した。草臭くない、と呟いている。ポーションは完成しても草の匂いが抜けないからなあ、もしかしてイルに使う事があるなら丸薬系の方が抵抗がないのかもしれない。
「そうみたいだな。MPごっそり無くなったけど、流石は神様だなあ」
自分用のハイパーマナポーションを2本飲み干しつつ、今度は色のついた屑水晶を引っ張りだした。ストレージに入っていた屑水晶は212個だった。今の私の残りMPが490程、単純計算で丸薬1個に20かかるらしい。
まるきり同じ手順で材料だけ色付きの水晶に変え、再び祈祷する。
「『遍く御座します八百万の神、とりわけ『MPの神』よ、何卒ご助力願いここに祈願奉る。私はここです。作りたいのは『魔力回復の丸薬』です。希望数量は作れるだけ、材料は沢山あります。魔力を捧げますのでどうか成して頂きたく畏み畏み申す』」
言い終わった途端、身体から力が抜けた。あれ?成す術なく縁側に崩れ落ちる私をイルがさっと受け止めてくれた。出来る龍である。
「辰砂は考え無しすぎです。後でお説教ですよ。っとにもう……、とりあえずこれ飲んでください」
イルに預けておいたマナポーションを口に流し込まれた。雑である。ちょっと零しつつ何とか嚥下すると、多少感覚が戻ってきた。ちゃんと指が動く。ああびっくりした。
「んー、回復したみたいですね、良かったあ。心配させないで下さいよ、全く」
ぱちぱちと瞬きしたのを見てイルが笑った。うんごめん、もう大丈夫だからもう肩を掴む手は離してくれてもいいのよ。
「言ったじゃないですか、お説教って」
にっこにっこしているイルの掌は優しいのだが、腹筋にいくら力を込めてもピクリとも持ち上がらないのである。大分お怒りらしい。
「すまない」
「そう思うなら大人しく怒られてくださいねー。誰が魔力枯渇するまで使い果たすんですかー?俺のパートナーがそんなあんぽんたんだなんて信じられませんよー」
この後仰臥姿勢のまま延々叱られた。しかし精霊系統の種族が魔力枯渇になると魔力が勝手に散っていき、自然回復では追い付かなくなり数分で死に至るなんて知らなかった。イルが慌てるわけである。うっかり死ぬところだったのだ。
解放されたのはもう日も傾いた頃であったことを言い添えておく。反省しました。
辰砂 Lv.97 ニュンペー
職業: 冒険者、調薬師、魔法道具職人、召喚師
HP:1545
MP:4730
Str:470
Vit:250
Agi:550
Mnd:675
Int:675
Dex:600
Luk:250
先天スキル:【魅了Lv.22】【吸精Lv.15】【馨】【浮遊】【飛行】【緑の手Lv.20】【水の宰Lv.20】【死の友人Lv.8】【環境無効】
後天スキル:【魔糸Lv.37】【調剤Lv.9】【鑑定Lv.12】【自動採集Lv.19】【自動採掘Lv.13】【魔力察知Lv.30】【魔力運用Lv.31】【魔力自動演算Lv.18】【冷蔵魔法Lv.13】【料理Lv.14】
サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.16】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.12】【調薬師の心得】【冷淡Lv.8】【話術Lv.10】【不退転】【空間魔法Lv.15】【付加魔法Lv.15】【細工Lv.6】【龍語Lv.8】【暗殺Lv.11】【夜目Lv.8】【隠密Lv.23】【魔法道具職人の心得】【文字魔法Lv.25】【木工Lv.5】【蹴脚術Lv.16】【宝飾Lv.9】【精神感応翻訳Lv.2】【錬丹術Lv.7】【加熱魔法Lv.1】【減衰魔法Lv.4】
ステータスポイント:0
スキルポイント:22
称号:【最初のニュンペー】【水精の善き友】【龍人の標】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】【老職人の一番弟子】【友を喚ぶ者】【樹精の善き友】【戦う調薬師】
イルルヤンカシュ Lv.4 龍人
HP:10400
MP:7400
Str:1200
Vit:1100
Agi:1400
Mnd:900
Int:900
Dex:1400
Luk:100
スキル:【大水魔法Lv.8】【治療魔法Lv.5】【高速飛行】【強靭】【環境低減】【手芸Lv.30(Max)】【アヴァンギャルド】【風魔法Lv.30(Max)】【雷魔法Lv.30(Max)】【龍化】【身体強化Lv.13】【息吹Lv.1】【龍眼Lv.5】【人語Lv.7】
スキルポイント:6
称号:【愛情深き龍】【水精の友】【健気】【絆導きし者】