200
いつの間にやら、200話。
続く物ですね。
ありがとうございます。
鼻歌交じりに家を再び野営セット化してお暇する。二週間前に折った枝の修復もきちんと行い、さて今度は市場で食材集めである。長い間待たせているが、とうとう集めるだけだった食材たちが食べられる日が来たのである。
街毎に市場の品揃えも少しずつ異なっている。やはり領主のお膝元なのか、ニーの街は最も品物が豊富で、他の街にはない海産物も僅かながら置いてある。とは言え今の優先順位は油、野菜、果物、肉の順だ。天ぷらが食べたいのである。
油を専門に取り扱う店を発見。並んでいるのはセサミフロッグ油とキャノンフラワー油、モロコーン油である。∞世界で油の入手ルートは魔物のドロップのみなのだそうで、どれもこれも取れる魔物の名前らしい。ちなみにセサミとフラワーはイッテツさんの所でから揚げを作った際に使っている。
「ごま油とフラワー油、コーン油と考えて良さそうだな……じゃ、全種類30壺ずつ下さい」
「はいよぉ!近頃油が飛ぶように売れてほっくほくだあよ、ありがとさん」
そのせいで少しばかり値上がりしているそうだが、ま、気にしていたら始まらない。あんまり値上がりしたら自分で取りに行こう。しめて40000エーン支払い。何気にコーン油が一番高かった。しかしこの壺小さいなあ……一つがマグカップ程度の大きさである。30壺でおそらく10リットルもないんじゃないのか?
次は野菜、と。これは取扱店が多いので目移りしつつ、気になったものを端から買って行けばよろしい。合間に亀ちゃんがあれ食べたいこれが気になると肩を叩くので、それも。南瓜が食べたいと言い出した時にはちょっとびっくりしたが、そう言えば魔物なのだった。大丈夫なのだろう。
果物もまるきり同じ調子で買い占めていく。流石にかき氷屋をやった時ほどの買い占めにはならなかったので、果物屋の棚にはまだまだ残っている。そう思うとこの間は悪い事をしたなあ。今更反省である。
さて、肉だ。現在手持ちの肉類は兎、耳長兎、里兎、ボス兎、猪、熊の掌、ワイバーン、トロール、毒蛇である。兎が多彩なので多く見えるが、熊以降はあまり挑戦したくない物ばかりだ。特にイルに食べさせるにはワイバーンは向かない、皮だって嫌がるのに。
手持ちの素材がジビエ的な物ばかりなので、もっと食べ慣れたものが欲しい。普通の鶏肉、豚肉、牛肉がどうかありますように。内心で祈りつつ、肉屋が並ぶ一角へ移動。塊肉や連なった腸詰がそこかしこに見えて非常に魅力的な光景だ。
「いらっしゃい、あらまあ!細っこい子だわねえ!もっと食べなきゃだめよお!」
特別活気あふれる店の女将が話しかけてきた。ええと、種族上仕方ないので気にしないでもらいたい。曖昧な表情で受け流しつつ、商談に入る。
「色んな種類が必要なのですが、今の取り扱いは何が有ります?」
人気のある店なのか、置いてある商品は実に多彩であった。ドロップ品として手に入れた『肉』はもうブロックに切り分けられているが、ここにあるのは部位別の枝肉のようだ。何の肉か解らないが三枚肉が美味しそうに光っている。
「そうねえ。牧場物のハウスコカトリス、ガーデンピッグ、ウラニワビーフなんかはいつも置いてるよ。あと今日入ったのはフォレストディアとネイルダックがお勧めだね」
ハウスコカトリスって、安全なのか危険なのかよく分からないなあ。聞けば、形は人ほどの大きさのコカトリスなのだが、肝心の鶏頭は盲目なので安全らしい。でもご飯は鶏頭が担当だそうで、不思議である。
ガーデンピッグは二足歩行の豚であるそうだ。それってオークなのではと思い尋ねると、オークは形が人に近くとても不味いのだとか。ピッグの方はあくまでも豚が立ち上がった体に見えるらしい。見てみたいような、そうでもないような。
ウラニワビーフは乳も出してくれるし身体が大きいから育てるのは大変だが収益性も抜群らしい。どれくらい大きいかと言うとちょっとした民家位。大きすぎる気もするが、気にしたら負けだ。
鹿と鴨はジビエ系と思われるので今回は外し、定番三種類の各部位を各々数Kgずつ購入した。買う端からストレージに放り込んでいると、魔法使いなのになんだって肉なんか買うのか不思議がられた。趣味です、趣味。
「ところでこの肉類はどうして部位がはっきりわかるのですか?私が兎をいくら狩ってもどことも知れないブロック肉しか出て来ないのですが……」
お会計も済ませ、おかみさんがホクホクしているところで一番気になる事を聞いてみた。だって、何処の肉なんだかわからない肉って据わりが悪いのだ。女将さんが快く教えてくれたところによると、牧場で解体を務める職人たちは『手動解体』スキルを持っているそうな。手動で、解体。あっ、駄目かもしれない。




