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 東の森でしばらくぶらついてみる。水龍が物珍しげに顔を出し、その度に手で押し戻すという不審な動きを繰り返す羽目になった。懲りない奴だ。今日の魔力減らそうかなと呟いたらやっと静かになった。


 出没する魔物は蜘蛛、芋虫、苗木のような魔物のようである。しかし女性プレイヤーが多い。生産の為だろうか、悲鳴を上げつつ戦っている。虫が苦手な人は大変だろうな。


「ジャッ」


 ん、水龍が右側の髪を引っ張った。首が傾き、視界に蜘蛛が入った。枝から奇襲されかかっていたらしい。どうやら周囲の索敵は私より水龍の方が優秀なようだった。蜘蛛は単体だった為一蹴りで終了。蹴りの威力も徐々に上がっている。


「ありがとう。また教えてくれると助かる」


 悪い事をすれば叱るが良い事をすれば褒めるのが子育ての基本である。経験はないが。精霊さんを真似て頭を指で掻いてやる。嫌なら避けるだろう。


 その後も索敵の練習をしながら素材集めを続ける。水龍ともいずれ別れるわけだし、甘えっぱなしでは私が進歩しない。葉ずれの音や遠くの戦闘音などを誤認しつつもたまに成功しつつ、イースト山に到着した。


 イースト山の薬草類には目新しい物はなかった。残念だが、今日は目的が違うのだからと言い聞かせながら山肌を探る。崖にはちょこちょこほじくったような跡がある。と、そのほじくった所が光った気がした。近づいてよく見てみると、5秒間隔でちかちか光っている。解りやすいアピールである、つまりここで採掘しろと言う事だ。


 ピッケルを取り出して崖に打ち込んでみた。石に弾かれることもなくピッケルが刺さり、ばらばらと石や砂が足元に落ちる。アイテムボックスを開いてみると、屑水晶と言うものが一つ入っていた。成程。


 やり方が解れば後は作業するだけだ。光らなくなるまで掘って次のポイントを探す。多分、光らない所を掘り続けて地中の素材を取ることもできるとは思うが、そこまで穴掘りに熱意を抱けない。そう言うのは好きな人がすればいいのだ、あのエルフとか。


 影が長くなって来るまで採掘と採集を繰り返し――識別してみると、落ちてくる石や砂に混じって素材があった――水晶、薔薇水晶、緑庭水晶、黄水晶、茶水晶、紫水晶、軽銀、3つしかなかったがガーネットを手に入れた。この山は質はどうあれ水晶で出来ているのに違いない。屑率も高かったが練習台にはもってこいである。ほくほくしながら街に戻った。


「すまなかったね、昨日言っておけばよかったよ。辰砂君の採集技能を甘く見ていた」


 グレッグ先生に開口一番謝られた。気にしなくていい旨を告げて早速ポーション作りを開始する。


「明日からポーションとマナポーション用の薬草の数をもっと増やして良いかな?今日も開店早々売り切れてしまってね。辰砂君も練習がてら露店を出したらいいんじゃないか」


 練習品を店に置くわけにはいかない、当り前のことである。品質Cで完全に揃えられるようになったら卸すのも良いかもしれないと思いながらメモ帳に書いておいた。今ならポーションバカ売れ、と。


 【調薬】スキルのレベルが上がったせいか、明らかに作業効率が上がっている。薬研が三往復しないうちに草が粉末と化していて違和感を感じる。


「辰砂君の上達ぶりには驚くなあ。来訪者は成長が早いって聞くけど本当だね」


 大量の溶け草を刻みながら先生がそんな事を言った。まあ、たった今その違和感を感じたくらいだし住人からして見れば反則ものだろう。ちなみに店用のポーションの作成手順で私がやらせて貰えるのはまだ薬研の工程だけだ。早く上達したいものだ。


 瓶を瓶立てにセットしながら冷めるのを待つ。この試験管立てに似た道具は私の忘れ去った中二心を刺激するので、出来るだけ直視しないようにしている。奥様が今日も夕飯をと誘ってくださったが、食べても腹が膨れない食事では何か失礼なので遠慮する。危うく半泣きにさせるところだったが水龍を生贄にして何とか誤魔化した。


「すごく……可愛いです……」


「ジャアアアアァ……」


 水龍の訴えかける声を鮮やかに無視して私はグレッグ先生と作業を進めたのだった。今日は解毒薬、麻痺消し、気つけ薬を新たに習って終了。


「西の森からニーの町に行くときの必需品なんだけどね。あそこの蝶型魔物の鱗紛が厄介なんだ。皆ポーションだけで何とかしてるのかな」


 首を傾げるグレッグ先生。不肖の弟子は、商品名のせいだと思います。解毒薬が『気分ハツラツ』、麻痺消しが『気合い一発』、気つけ薬が『目もシャキ!』では質問しない限り気がつかないに違いない。


 経営方針に口を出すか否か、店を出るまで決められなかった。多分明日も迷うだろう。忘れかけていた水龍を回収して、さて、食事にはまだ早い時間だが何をしようか?


辰砂しんしゃ Lv.16 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師の弟子

HP:360

MP:1400

Str:330

Vit:120

Agi:330

Mnd:530

Int:530

Dex:530

Luk:130

先天スキル:【魅了Lv.1】【吸精Lv.1】【馨】【浮遊】【空中移動Lv.3】【緑の手】【水の宰Lv.1】【死の友人】【環境無効】

後天スキル:【糸Lv.13】【空間魔法Lv.5】【付加魔法Lv.1】【料理Lv.1】【宝飾Lv.1】【細工Lv.1】【調薬Lv.11】【識別Lv.10】【採取Lv.19】【採掘Lv.5】

サブスキル:【誠実】【蹴りLv.17】【創意工夫】【魔力感知Lv.30(Max)】【魔力操作Lv.30(Max)】【罠Lv.9】【漁Lv.1】【魔手芸Lv.5】【調薬師の心得】【冷淡Lv.1】【話術Lv.1】【不退転】

ステータスポイント:150

スキルポイント:30

称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【仔水龍の保護者】



本人の知らぬ間に増える称号たち。

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