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現在私はⅠ階級であるので、当然Ⅱ階級に昇級する試験を先に受けなければならない。昇級試験は配達依頼であった。仕様なのか、配達依頼等を受注している間は神殿間の移動が出来なくなる。何しろ神殿に行ってみたのだから間違いない。


「怠けるなと言う事だろうなあ」


と、言うわけで現在はサンの街の冒険者ギルドを目指して移動中である。瞬間移動は出来なくても、飛ぶことはできるわけで。サンの街に行く道は草原なので見晴らしが良い。景色を楽しみつつ、ゆったり飛んでいる。ちょいちょい出てくる兎を糸で引っ掛けて仕留めつつ、着々と肉を集めている最中である。


「うーん。これは怠けてるうちに入らないんですか?普通より楽してる気がしますけど」


並行して飛んでいるイルが地上にちらりと目をやった。視線の先にあるのは大きな木箱である。これが依頼品だ。どうしてだか依頼品はストレージ及びマジックバッグ及びアイテムボックスにしまえないことが判明し、仕方ないから糸で支えて空中を輸送中なのだ。


「普通は荷車とか馬車とかで運ぶってギルドの人、言ってましたよ」


「まあ、こっちのが早いだろうと思ってたから。言わなかったけど。街の中で運ばせたのは謝るよ、重たかったろうにごめんな」


私のStrとVitでは持ち上げて数歩歩くのが限界だった重量級の箱であるが、イルのStrとVitならば楽々運べたので町の外まで持ってもらったのだ。イルはこれをサンの街まで持たされると思っていたのか、糸で括った時にはほっとしていた。流石にちょっと重たかったらしい。


「いえ、ちゃんと考えてたのがわかったのでそれはいいんですよ。ただギルドの人には俺が運んだと思われるだろうなあと思いますけど」


イルは当たり前だがギルドに登録してないので、受付嬢に登録を勧められていた。イルはどうしてか自分が龍人であることを隠すので、ごく一部の相手以外にはイルは竜人だと思われている。極一部とは、カリスマさんとウールちゃん、バーノン老師、グレッグ先生、アルフレッドさんである。


「なあ、イルは竜人だと思われることには抵抗が無いのか?竜と一緒にされるの嫌がってたから、てっきり竜人じゃなくて龍人だって訂正するもんだと思ってたんだけど」


最初に勘違いをされたのは多分、ゴーの街の冒険者ギルドだったと思う。イルにアピールする受付嬢がイルの事を竜人さんと呼んだので、竜人と龍人に外見上の差が無い事を知ったのである。


「ああ、そうか。辰砂って来訪者ですもんね。抵抗が無いわけじゃなくて、んー……龍人の方が角が立派で鬣と鱗が生えてます。それに竜人は角を隠せないんですよ。逆に言うと、見た目はそこしか違いません。だから老師が一目で俺を龍人だとわかった時は驚きました」


イルが話し始めたのは、竜人と龍人の差についてであった。なるほど、外見上の差異は服を着ていればほとんど隠せるレベルのものでしかないのか。老師の凄さが今更わかる、どうやって判別したのだろう?


「俺が龍人なのを隠してるのは、龍人って他の種族がいる所に絶対いないからです。龍人は龍の祭祀を司る種族なんですよ」


ん、龍の祭祀?龍ってそんなに祭り上げられちゃう種族なのか?疑問を感じつつ、イルの説明を聞き続ける。


「辰砂は実感ないかもですけど、龍は世界の守護者ですからね。大昔に一番偉い神様が、神様達が暴走した時の為に龍一族にお役目を与えた――って、龍族には口伝が残ってます、ちょっと!そんな顔しないで下さいよ、俺が龍っぽくないのは自分でわかってますから」


そんな御大層な役目を持った崇高な一族だとは思えなかったのが顔に出てしまっていたらしい。なんたって一番身近なイルはそんな物凄い感じの存在に思えないのである。鷹龍さんはまあ納得できる、物凄い威厳があったし。でもイルは、出会いとか成長過程とか考えるとどうにもしっくりこないのだ。


「前に少し言いましたよね、俺は邪龍に堕ちる筈だったって。堕ちるのは必然であって当然の帰結だったんですけど、俺は龍人に成れました」


一度言葉を切って、イルは私をちらりと見てまた前を向いた。もうボス兎の所は通り過ぎたので、サンの街も近い。


「例えば今龍人族の所に行ったら、俺は物凄く孤立すると思います。考え方が元から違った上に、今はもう他の種族をつまらない存在だと思えないですし。自分たちだけが至上の存在だと思い込んで閉じこもって生きるなんて、それこそつまんないじゃないですか。ただの引き籠りですよ」


うーん。イルにかかると偉いはずの龍人族もただの残念な集団みたいに聞こえてくるなあ。いやまあ追随する能力があるから何事も無く引き籠れているんだろうけれども。


「俺は、辰砂と絆が結べて良かったと思ってますよ。俺の世界を広げてくれた。それからばあちゃんにも、若干はウールにも、感謝してます。俺に大事なものをくれたんですから。俺、皆が好きですよ」


「……そうか。それなら、良かったよ」


私の回答は素っ気ない物にしかならなかった。それしか出て来なかったのである。真昼間の明るい屋外で、イルはどれほど聞く方がこっぱずかしい告白をしたのかわかっているのだろうか。感謝とかなんとか、柄じゃないのである。恥ずかしさがこらえきれずに、私はサンの街付近に着くまでの数分をフードを被って過ごしたのであった。


辰砂しんしゃ Lv.97 ニュンペー

職業: 冒険者、調薬師、魔法道具職人、召喚師

HP:1545

MP:4730

Str:470

Vit:250

Agi:550

Mnd:675

Int:675

Dex:600

Luk:250


先天スキル:【魅了Lv.11】【吸精Lv.15】【馨】【浮遊】【飛行】【緑の手Lv.20】【水の宰Lv.18】【死の友人Lv.8】【環境無効】

後天スキル:【魔糸Lv.37】【調剤Lv.9】【鑑定Lv.10】【自動採集Lv.19】【自動採掘Lv.13】【魔力察知Lv.29】【魔力運用Lv.30】【魔力自動演算Lv.16】【冷蔵魔法Lv.13】【減衰魔法Lv.4】

サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.16】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.12】【調薬師の心得】【冷淡Lv.8】【話術Lv.9】【不退転】【空間魔法Lv.14】【付加魔法Lv.15】【細工Lv.6】【龍語Lv.8】【暗殺Lv.11】【料理Lv.11】【夜目Lv.5】【隠密Lv.23】【魔法道具職人の心得】【文字魔法Lv.25】【木工Lv.5】【蹴脚術Lv.16】【宝飾Lv.9】【精神感応翻訳Lv.2】


ステータスポイント:0

スキルポイント:32

称号:【最初のニュンペー】【水精の善き友】【龍人の標】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】【老職人の一番弟子】【友を喚ぶ者】【樹精の善き友】【戦う調薬師】


イルルヤンカシュ Lv.4 龍人

HP:10400

MP:7400

Str:1200

Vit:1100

Agi:1400

Mnd:900

Int:900

Dex:1400

Luk:100

スキル:【大水魔法Lv.8】【治療魔法Lv.5】【高速飛行】【強靭】【環境低減】【手芸Lv.29】【アヴァンギャルド】【風魔法Lv.30(Max)】【雷魔法Lv.30(Max)】【龍化】【身体強化Lv.13】【息吹Lv.1】【龍眼Lv.4】【人語Lv.7】


スキルポイント:6

称号:【愛情深き龍】【水精の友】【健気】【絆導きし者】


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