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夕飯を頂き、就寝ログアウトする。週末だからと言って一日一食を常態化させると十年後が怖い。水に浸けておいた昆布と炒り子がふやけているのを確認してそのまま火にかける。味噌汁が飲みたい。


冷凍ご飯が一食分残っているのでご飯は炊かないことにした。充填豆腐――これは小分けの上に日持ちするので私のようなずぼら人間にもってこいである――の封を切って賽の目に切る。まな板を傾けていい加減に水けをきっておこう。


乾燥ワカメを小皿に入れて水をかけておく、ふやけたら適当に切ればいい。面倒な時は切らなくてもいいが、運が悪いとワカメが全部繋がっていたりするので、十字くらいには切っておきたい。冷凍葱はあるし味噌汁はこれでいい。


ツナ缶を一つ取り出す。近頃は小さいサイズもあるから独り者もちょうど使い切れる。キッチンペーパーの上にあけて油を吸わせる。この時下に何か敷いておかないと、油が沁みて後始末が大変である。流石オイル漬けだ。


出汁が沸いた。いかん、昆布を取り出すのを忘れてしまったなあ。まあいいか、昆布と炒り子を取り出して豆腐を投入。もう一度沸いたら味噌を溶いてワカメを放り込んで完成。豆腐はよく煮る派とさっと煮る派と別れるが、私はさっと派である。


フライパンに油を多めに敷き弱火で熱する。スライスした大蒜を放り込んで焦げないように香りを移す。良い香りがしてきたら油を切ったツナを放り込む。少しの酒と砂糖か味醂か蜂蜜か、好きな調味料で甘みを付けて塩と醤油で塩味を足す。色が暗くなるのが嫌な人は醤油は仕上げの香りづけに使うといいが、私は容赦なく茶色に染める。良い匂いがしてきてこの辺りでテンションが上がってくる。


ほうれん草を適当に一口大のざく切りにする。茎の方をまずフライパンに入れて混ぜる、一呼吸置いたら葉っぱの方も投入する。物凄く混ぜにくいがお構いなしに混ぜる。どうせ火が入ったら嘘みたいに少なくなるのだ。大方火が通ったら、香りづけにごま油をちょこっと垂らして完成。


ご飯と味噌汁、ほうれん草の炒め物の食卓が完成した。ほうれん草は半分取り分けてまた明日のご飯に回す。近頃こんなことが増えたのはやはり∞世界の方に気が行っているからか。何でもまとめて作ってしまうな。


にんにく甘辛醤油味と言うのはなぜこれほどご飯が進むのか。少なめの夕食が終了。なんたって一日中寝ているのだからこんなもんでいい。ささっと片づけてちょっと掃除をし、∞世界での夜明けを見計らって再びログイン。今日は、後回しにしていた階級上げに挑……もう。


「おはよう」


「おはよう」


すっかり元通りのイルと挨拶。珈琲をいつもよりゆったり楽しんで、しかしいつまでも珈琲がカップの中にあるわけも無く。しょうがない、行くか。


「今日は、事あるごとに足を引っ張る冒険者ギルドの階級を上げに行きます。引き受ける依頼によっては自由時間が取れるかわからないので、やりたいことは今言ってくれ」


ミルの掃除を終え、ケースに仕舞い込んでいたイルは留め金をかけながら考えているようだ。渡されたケースをストレージに収める。


「うーん、思いつかないです。刺繍糸が少なくなってきてますけど、急ぐほどでもないですし」


「よし買いに行こう」


「ええ?」


イルが変な顔をしているが黙殺。いやほら刺繍糸無いと付加守アッドチャーム作れないから、必須材料だからと自分に言い訳しつつシルクスパイダー農場へ移動。


「あらお久しぶりですわね辰砂様。お早う御座います」


朝が早かったせいなのか、優雅に花を集めるユユンさんにすぐ出会えた。私の名前がすぐに出て来た辺りは流石である。ユユンさんは一緒に花を集めていた他の蜘蛛族アラクネお姉さんに籠を渡して私達を事務所に連れて行ってくれた。


「少し早すぎましたかね?もう少し遅い時間の方がご都合はよろしいですか」


「お客様がお気になさることではありませんわ。私たちはその時自分に出来ることをやっていますから、その理論ではいついらしても間が悪いと言う事になってしまいます」


ころころと笑うユユンさんに勧められてソファにかける。一旦席を外し、お茶を持って来てくれたユユンさんに結局私たちの購入許可がどうなったかを尋ねてみた。


「ええ、ご安心くださいませ。付加守が作れる人材と言う事で特別に許可が下りましたわ。一つ条件が付きましたけど購入量の縛りは無くなりました」


「条件ですか?以前も言いましたが、定期購入や大口のご注文はお引き受けできかねますよ」


嫌な響きのする言葉に牽制を兼ねて先回りすると、ユユンさんは首を振った。


「勿論、約束を反故にするような事は致しませんわ。品質を確認する為、完成品を5つ程提供してほしいのです。いくら付加術師が不足しているとはいえ特産品を使う以上、誰にでも許可が出るような特例は流石に出しかねると言う事でして」


はあ成程、ふるいにかけると言う事なのか。複数なのはバラつきの有無と程度を見るためだな。細工自体の出来はイルが常にベストを尽くしているのだから心配ない。となれば付加する魔力量をどれほどにするか、だが。


ストレージから付加する前の腕輪や根付をあれこれ取り出して並べていく。ユユンさんはそれらを見つめている。意匠が同じ物では意味が無かろうと石も色もばらばらの5本を選び出した。


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