169
人物名を認識しづらいと言うご指摘を頂きまして、
プレイヤー名『にゃんにゃいとラブ』を『にゃんニャイトLove』に変更いたしました。
既に読まれている方は申し訳ありません。
今後はLoveの方で統一いたします。
「もうほんとにうちの子がごめんなさい」
猫ちゃん改めダレンちゃんにしがみつかれるように抱っこしている第三者――にゃんニャイトLoveさんは頭を下げた。もう何度目なのかは数えてないが両手では足りない数だと思う。しくしくめそめそするダレンちゃんの尻尾はだらんと下がっていて、力ない。
「いえ。私ももう少し言葉を選ぶべきでした。怖がらせてしまいました、申し訳ありません」
私も頭を下げ返す。なお、道端でする話ではないのでにゃんニャイトLoveさんのお店、ごろにゃんカフェに移動済みだ。筋金入りの猫好きであるらしい、店の調度品の全てが猫モチーフであった。イルは私の隣で居心地悪げにそわそわしている、まあイルの趣味とは少し違うからな。
「最近、どこで覚えて来たのかNTRごっこなんて言って悪趣味な遊びして。いつか絶対痛い目に遭うからやるなって言い聞かせてたんですけど……言い訳のしようもないですが、どうか許してやってください……」
頑として離れようとしないダレンちゃんの爪が服に食い込んでいるのを見下ろして、にゃんニャイトLoveさんはため息をついた。まあ、私は言うべきことは言ったわけだしもういいんだが。
「私も当事者ではありませんので、これ以上は何とも。だからイルが決めるといい」
「えっ俺ですか」
急に引き合いに出されたイルは肩を揺らした。どうやら完全に他人事にしていたようだ。当事者だろう、油断禁物である。
「だって貶されたのはイルで貶したのはダレン君なんだから。ダレン君の保護者さん、にゃんニャイトLoveさんは謝罪をされたけどそれを受け入れるかはイルが決めることだよ」
私は関知しない旨を告げると、地味に楽しみにしていたピーチティーに口を付けた。そう、すっかり忘れ去っていたがいつかカリスマさんと砂漠で楽しんだピーチティーである。店も店主も聞いた事があったのだ。ついでに言うならダレン君のSSも見ていた。
「ええ、と。俺は、もう謝ってもらったんでいいです。俺の代わりに辰砂が怒ってくれたし。だからもう二度と、誰にもやらなければそれでいいですよ」
「ありがとうございます……ダレン、わかったよね?ダレンのつまらない遊びで一杯色んな人が傷つくんだよ。本当に、もうやっちゃ駄目、ね」
ダレン君は返事をしなかったけれど何やら身じろぎしたので、にゃんニャイトLoveさんにはわかったらしい。よしよしと耳の付け根をくすぐられて小さく喉が鳴っていた。ううむそんな場合じゃないとわかっているが羨ましい、私もおでことかくすぐりたい。
にゃんニャイトLoveさんに散々愛でられ、すっかりご機嫌になったダレン君はまた元気にお散歩に出かけて行った。私の事をかなり恐れているようだったが、頼み込んだ結果肉球をちょっと触らせてもらえたので、今日の所は良しとしよう。むにむにであった。
「これ、心ばかりのお詫びです。ご迷惑をおかけしました」
ご主人様の方はもう一度深々とお辞儀をされた。渡されたカードを見てイルと私は顔を見合わせる。高級感漂うそれには『ごろにゃんカフェ会員証』と書いてあった。通し番号の欄には『特』と記載されている。
「これは?」
「それを提示して頂くと、店内全ての商品が無料になります。有効期間、回数制限はありません。……これくらいしか差し上げられるものが無いんです、私は料理しかできないので」
それってここに通う限りは限りなく良い物のような気がするけど。とは言え、ここで固辞すると今後この店に出入りするのがほんとに気まずくなりそうだしなあ。さっきのピーチティーと言い、長く付き合いたいお店である。しばし考えて、私はそれを受け取ることにした。イルに渡す。
「これはイルのだ。でも私もここに通いたいから、イルが連れて来てくれ、な?――では、これで失礼します。また来ますから、ダレン君にもよろしく」
よろしく、とイルの背中を叩いてからにゃんニャイトLoveさんに体の向きを変えて挨拶。慌てたように手を振るのが少し面白かった、もしかすると年下なのかもしれない。
帰り道はイルがどこか上の空だったので、途中から無言だった。ダレン君に言われたことが地味に堪えているのだろうか?しかしどうしたってない物ねだりにしかならないし。
かける言葉を色々考えてみたものの、今一つしっくりこない文句しか思いつけなかったので結局そっとしておくことしかできなかった。夕飯時には元気になったのでほっとしたが、どうも打たれ弱いようで心配である。