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 左千夫君の様子を見つつ、周りの要らない魔物を倒していると結構忙しい。暇かもしれないと思ったのだがまあ、こんなもんか。蝙蝠をばらして一息つき、左千夫君の所に戻る。大人しそうな見た目に反して左千夫君は結構アグレッシブであった。


 攻撃を掻い潜るようにして懐に潜り込んでいき、急所を狙うなんて中々出来ることじゃない。とは言え、スタイルゆえか被弾も多い。目標を仕留めた後の事はあまり考えてないらしい。相討ちとか道連れってのはあまり好かないんだがなあ。


 回復の声が上がるたびに投擲ポーションを投げつける。どれくらい回復したらいいのかわからないので、回復すべき数値を言ってもらうことにした。今までの最高回復幅は1500だった。少なくとも私よりはHPがあるようだ。考えているうちに左千夫君が翼竜に噛まれた。心臓に良くない光景が広がっている。


「っ、せ、1500っ」


 太ももをがっぷり噛まれて多分叫んでる場合じゃないんだろうけれど、左千夫君はちゃんと回復量を叫んだ。私が思うよりこの子は場数を踏んでるのかもしれない。例え痛覚設定を最低にしていても怯みかねないと思うのだが。無言で投擲ポーションを投げつける。スーパーな奴なので回復量は十分だ。歯を食いしばって、左千夫君は無防備な首にナイフを刺した。


「頑張ったね。ちょっと休憩しようか」


 太ももから光の粒が消えたタイミングで声をかけると、左千夫君はしゃがみ込んだ。ちょっとやりすぎたかな、しかし随分根性のある子だ。今度は林檎とオレンジ、飲めるマナポーションとポーションを器に盛って近くに置いておく。好きなだけ食べるといい。イルはさっきから猿の群れに対応中だ。大方片付いたから、もう戻ってくるだろう。


「レベルは幾つになったかな?」


「待って下さい、……70ですね」


 左千夫君の回答を聞き、かかった時間を考える。月の上がる頃から始めて今は丑三つ時。まあ結構いいペースなんじゃなかろうか?最初から暗がりの戦闘にも躊躇わなかったし、不意打ちでなら倒せるくらいまでは強くなれるかもしれない。希望込みではあるが。


「夜が明けるまでは翼竜を倒そうか。夜が明けたら他の魔物と戦ってみよう、1対1で戦えるかどうかもわからないし」


「……、はい」


 左千夫君はまた何か言いたそうだったけれど、結局何も言わなかった。まあ、言われなければそのまま進むだけだ。もう止めると言われるまでは続けます。夏蜜柑が無くなってしまったので、私もオレンジを食べることにした。うん美味しい。オレンジって独特な華やかさがあると思う。


「し、らこ、俺そろそろお腹空きました」


 つっかえつつもイルが戻ってきた。ああ、そう言えば私もそろそろEPが少ない。魔力を渡して【吸精】を使う。あっという間に回復した。お腹が落ち着いて瞼を開くと、目を丸くしている左千夫君が見えた。


「どうしたのかな」


「いえ……光ってたので驚いただけです」


 おや?確か魔力を視認するにはMnd値が300以上必要だった筈だ。現在の戦闘スタイルにはそぐわない能力値である……が。


「気にしないでいいよ、ただの食事だから」


 隠したいことを暴くことも無い。スルーすることにして、無難な返事をしておいた。イルは元から無関心なままなのでこちらの違和感を悟られてはないだろう。


「まあ、隠してるったらお決まりだけど」


 聞こえちゃいけないので口の中だけで呟く。隠された切り札なんて中二心を刺激するじゃないか、少年漫画のヒーローみたいだ。柄にもなくわくわくしてきた。どんな手札なんだろう?


「そろそろいいかな?」


 了承を得て、置いておいた器を回収する。次の翼竜を放って左千夫君と戦い始めたのを確認。ちらりと見れば、やっぱりマナポーションが1本減っていた。いつ使ったかはわからないが、どうも何やらやっているようだ。いいぞもっとやれ。


「頑張れー」


「……しらこ、ほんとに程々にしてあげてくださいよ。なんであの子に肩入れしてるのか知りませんけど、心を折りたいわけじゃないんでしょ」


 再び適当な声援を送ると、イルが珍しく真剣な顔でこちらを覗き込んだ。そんなに危なく見えるのか?


「気をつけてはいるつもりだけど。じゃあいさき、早めに歯止め掛けてくれるか?どうも興が乗るとやりすぎるきらいがあるから」


 熱中しやすいのは私の悪い癖である。∞世界にのめり込んでいるのも然りだ。イルは頷いて周囲の警戒に戻って行った。よろしく。


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