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精霊さんと別れた私たちは、焼き魚と藻塩亭に泊まった。就寝ログアウトして、翌朝6時に起床。こまごま家事を片して朝食をとる。昨日も食事を抜かしてしまった、このままでは病気になりそうだ。


近頃流行りのグラノーラにヨーグルトをぶち込み、頬張る。見栄えは良くないが噛みしめるほど味が出てきて嫌いじゃない。面倒な時に活躍してくれる優れものだし。


乳製品が被るのでストレートの紅茶を飲みきったところで洗濯機が止まった。ひっくりかえって寝ているだけでも洗濯物は増えて行く。身繕いを放り捨てられるほど私は羞恥心を失っていないのだ。


今日こそは3食食うぞと決意しながらログイン。珈琲タイムを楽しんだ後、作業場へ向かう。汎用棟105号室を借りて久しぶりに調薬道具をセッティングする。うーん、今更だけどこの魔法焜炉はいい仕事してあるよなあ。自分でも手がけるようになったからこそ分かる拘りに感心しつつ、鍋を上に置いた。


今日はなぜかイルが木の棒を欲しがったので何本か渡して作業を始めた。ハイパーなポーションを前回作成したときの留意点と反省点をメモ帳で復習する。よし、出来る出来る。為せば成るのだ。


取り出したのは、ニーウエスト湾の洞窟の泉から汲んできた水だ。グラススライムが浸かっていたものの、品質Aのままだったのでたっぷり失敬してきている。近頃気づいたのだが、水の宰とストレージを併用すると入れ物が無くても水を運搬できるようだ。長いこと知らずに損をしていた、もっとあれこれ試した方が便利な使い方を発見できるに違いない。


澄んだ水を沸かしつつ、ハイパーヨクナル草を細かく刻んだ。前回は鍋が人肌程度に温まってから投入したが、あの後の撹拌で濁りが出たことを考えるとあまり長く撹拌しない方がよさそうだ。しかし本の記述には鍋が沸いたらとも書いてない。微妙な温度の見極めが必要そうだ。とりあえず鍋底に細かな気泡が付いた頃合い……60度程度を目安にやってみることにしよう。


ハイパーカイユ草、ハイパーカイフク草の混合チップの粒度の違いは一先ずそのままやってみよう。全ての条件を変えてしまうと結局何が良くなかったのかわからないままだ。ハイパー溶け草とハイパー若保草を溶液化させたタイミングで鍋底に泡が見えた。よし、ハイパーヨクナル草を投入。混ぜる回数が減るように、今までは掴み入れていたけれど振り入れるようにしてみる。


みるみる水分を含んで沈んでいくヨクナル草をじっと見つめる。ある程度沈んだら混ぜ始めるつもりだ。チップ投入のタイミングも同時に見計らわねばならない、息を詰めて水面を睨む。


半分程度沈んだ頃合いで底から大きく混ぜた。沈殿したハイパーヨクナル草が浮き上がるように流れを与え、同時に混合チップを投入。もう入れないと間に合わない温度になってしまっている。ヨクナル草を入れるタイミングは、今度は遅かったのかもしれないな。


掬っても掬っても湧き出る灰汁と戦うこと数分。ポーションの効能が高まるほど、出てくる灰汁の量も増えてきている。もういっそ何かに使えたらいいのにと思うほど出てくる灰汁を、お玉ごとバケツに突っ込んで洗った。


永遠にも思えた灰汁との格闘が終わったころには、見慣れたポーション色の液体が鍋で湯気を立てていた。もう沸くまで時間がない。手早くハイパーナオル草を薬研で粉砕して鍋の側で待機した。ぽこぽこと泡が表面に現れたらナオル草を投入し、すかさず火を止める、と。


後は冷めるまで待つだけだ。使った道具を洗浄する。こういう時はニュンペーで良かったと思う。水の宰は調薬に大いに役立っている。緑の手も時々活躍してくれるし、死の友人は……まあ、私は戦闘職ではないから仕方ない。


しばらく細工に集中するイルを眺めたり、本をめくってハイパーポーションに関する記述を洗い直したりしているうちに無事冷めた。濾したのち、混合溶液を入れて軽く混ぜる。ここでも混ぜすぎると濁りかねないので、簡単に。どきどきしつつ、鑑定してみる。


『ハイパーポーション 品質B 服用することで、またかけることでHPを2300回復する。再使用制限時間リキャストタイム5秒。(保存期間残り:2か月29日23時間59分)』


「……よし」


狙ったとおりの品質になってほっとした。とは言え、全ての材料が品質Aであったことを考えると、どこかに失敗があったということだ。心当たりはやっぱりヨクナル草を入れるタイミングだが、水温計なんて存在するのだろうか。場数を踏む他なかったらどうしよう、困った時のグレッグ先生と言う事でコツを聞きに行くのもいいかもしれない。


考えつつもちゃちゃっとストレッチワスプの巣にポーションを注いでいく。全く蓋の手間が省けて楽ちんな容器だ。これで50本。もう1回同じものを作って100本、その後はハイパーマナポーションに挑戦だな。


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