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マグマゴーレムの大きいのが何体か出てきたところで私達の敵ではない。大きくて冷えないと言うならばちょっとバラバラにしてやればいいだけの話である。
「芸がないな」
同じ物が形を変えていくら出て来ようとも大差ない。対応も単調になりがちである。サクッと倒して終了した。イルが完全に不満そうな顔をしているが、出てくる敵の手強さは私には選べないので勘弁してもらいたい。
「なんか思ってたのと違いますねえ。セーフティポイントとか言うのより深いところの話だったのかな」
広間の奥に現れた通路を進みつつ、イルは眉間に皺を寄せた。口調は軽いものの、結構な失望であったようだ。
「ま、がっかりするのは行ってみてからでも遅くない。ほら」
出口が見えてきたので、そちらを指してやるとイルも視線を上向けた。結構明るいようで、暗い通路からは良く見えないが何やらざわめきが聞こえてくる。登り気味になっている坂を上がりきれば、無事にセーフティポイントに到着した。
入り口からはポイント全体を見渡すことが出来る。かなり広くなっていて、競技場のトラックが4つ入りそうだ。その一番向こう側に見える黒い穴がさらに深部に進む入り口なのだろう。なんでか5つあるが。
あちらこちらに野営セットが鎮座している。どうしてダンジョン内で直接野営しないのかと言えば、使えないからだとか。エラーメッセージが出てくるそうな。おかしなところに制限を付けたものである。
見たところ少年少女は見当たらない、ダンジョン内を探索しているのか、あるいはもうここはクリアしたのかもしれないな。全体的な雰囲気を見て、イルに振り返った。
「深部に行ってみたい?行くなら今だぞ」
頷きを得て、じゃあ行きましょうと言う事になった。確かダメージ無視が何とか言っていたので念のためイルにも数本投擲用のスーパーシリーズを支給した。
「自慢じゃないが私のHPはだいぶ少ない方だから、もしイルの魔法で追いつかなかった時にはこれも投げつけてくれ。マナポーションの方は自分に投げつけてもいいけど、言ってくれたら投げつけるから」
まあ、イルのMPが足らなくなるようなことになる前に私が死んでいるとは思うけれども。イルは神妙な顔で巾着袋に収めて腰帯に括った。咄嗟に取り出せなさそうである、ちゃんとしたポーチも頼めばよかったな。同じことを思ったらしくイルにも頼まれた。
「カリスマさんにメッセージを送っておくよ。ここ数日会ってないしな」
きっと本人を前に作りたがるだろうからとまでは言わずにおくことにした。カリスマさんの好みが玲瓏系美丈夫なのが残念なところである。早いところウールちゃんには何とか想いを告げてもらいたい、イルが全く申し訳なさそうな顔をするので。誰も悪くないんだけどなあ。
5つの進入口のうち、適当に左から2番目に入ることにした。誰もいなかったから、と言う単純な理由である。再び戦闘準備、もしかして敵の種類が変わっていたらいけないので昏光も使おう。緑の手だけちっとも成長しない、使う機会は訪れないものだろうか。一瞬背後がざわついたのを感じたけれど、まあ、紫色の光を纏うちょっと怪しい人という自覚はあるので気にしないことにした。
深部でもやっぱり魔物が出てくる気配はわからないままだ。場当たり的対策を続けている。後、深部のマグマゴーレムに糸が当たると信じられない事に燃えたので、今は初心者の糸で周囲を探っている。折角のちゃんとした糸を燃やして失うなんて嫌すぎる。
「冷気系の魔法を何か覚えてみようかな」
しばらく戦ってみて、またもネックが私であることが判明した。イルは水と風を合わせてそれらしいことが出来ているが、私の水の宰は現段階では摂氏0度が最低温度のようだ。もっとレベルが上がればもっと行けるのかもしれないが、現状の冷却速度には不満が残る。
「だんだん冷やしづらくなってきてますよね。気のせいじゃなかったか」
そんなことを言うイルは涼しい顔でゴーレムを木っ端微塵に砕いているのでちっとも説得力がない。気を使ったつもりなのだろうか、むしろ悲しくなるのでやめてほしい。一旦進むのを止めて、取得可能スキルリストを開くことにした。
魔法の欄を上から見ていく。このウィンドウを見るのはもしかして、∞世界を始めたとき以来なのではないだろうか?スキルポイントは専らスキルの進化に使うだけだったので余っているし、一つ魔法を取っても後悔することはないだろう。
【冷蔵魔法】、【氷魔法】、【減衰魔法】くらいが候補か。氷魔法は最も基礎的な属性魔法の一つなので10ポイント。冷蔵魔法は対象を設定温度に保つ魔法で20ポイント、減衰魔法は対象の動きを減衰させる魔法で30ポイントであった。うーん……ま、いっか。料理にも使えそうな【冷蔵魔法】、応用できそうなので【減衰魔法】の2つを取得。
なお、冷蔵魔法の方は取り出した食べ物を保温するのに最適であることがわかった。私自体は暑くなくても、取り出した果物はあっという間に温くなるのが気になっていたのだがこれは素晴らしい魔法であった。
辰砂 Lv.88 ニュンペー
職業: 冒険者、調薬師、魔法道具職人
HP:1455
MP:4280
Str:470
Vit:250
Agi:550
Mnd:630
Int:630
Dex:600
Luk:250
先天スキル:【魅了Lv.11】【吸精Lv.10】【馨】【浮遊】【飛行】【緑の手Lv.6】【水の宰Lv.15】【死の友人Lv.8】【環境無効】
後天スキル:【魔糸Lv.29】【調剤Lv.5】【鑑定Lv.6】【自動採集Lv.17】【自動採掘Lv.10】【魔力察知Lv.22】【魔力運用Lv.24】【魔力自動演算Lv.4】【冷蔵魔法Lv.1】【減衰魔法Lv.1】
サブスキル:【誠実】【創意工夫】【罠Lv.16】【漁Lv.2】【魔手芸Lv.11】【調薬師の心得】【冷淡Lv.4】【話術Lv.7】【不退転】【空間魔法Lv.9】【付加魔法Lv.15】【細工Lv.6】【龍語Lv.8】【暗殺Lv.2】【料理Lv.6】【夜目Lv.4】【隠密Lv.12】【魔法道具職人の心得】【文字魔法Lv.20】【木工Lv.5】【蹴脚術Lv.16】【宝飾Lv.9】
ステータスポイント:0
スキルポイント:24
称号:【最初のニュンペー】【水精の友】【龍人の標】【熊薬師の愛弟子】【絆導きし者】【老職人の一番弟子】
イルルヤンカシュ Lv.1 龍人
HP:10000
MP:7000
Str:1000
Vit:1000
Agi:1200
Mnd:800
Int:800
Dex:1200
Luk:100
スキル:【水魔法Lv.30(Max)】【治療魔法Lv.5】【高速飛行】【強靭】【環境低減】【手芸Lv.26】【アヴァンギャルド】【風魔法Lv.29】【雷魔法Lv.28】【龍化】【身体強化Lv.3】【息吹Lv.1】【龍眼Lv.1】【人語Lv.5】
スキルポイント:13
称号:【災龍】【水精の友】【ツンデレ】【絆導きし者】