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ご機嫌すぎるイルと一緒にリンダの屋台を探す。結構な行列があるのですぐ解った。相変わらずプレイヤー達が並んでいる、から揚げってここにしかないのか?
「から揚げ包みとチーズから揚げを3食ずつください」
3回分ずつ頼むと、リンダはにっこり笑って串を渡してくれた。もしかして私の事を覚えてないのだろうか。ちなみにから揚げ包みはタコスっぽい物体である。2食分はストレージにしまってチーズから揚げがイル、から揚げ包みが私だ。
「何回食べても濃厚で美味しいなあ。辰砂は野菜が好きですよね、俺は葉っぱあんまり美味しいとは思えないけど」
「野菜が好きって言うか、肉とか魚と野菜のバランスが好きなんだよ」
道の端、邪魔にならない所に寄ってぱくつく。立ち食いと言うのは何故こんなに美味いのか。味も5割増し美味しく感じられる。
「今日は焼き魚と藻塩亭に泊ろうか。部屋で早速淹れてみるか?」
さっさと食べ終えたイルに聞いてみると、肯定が返ってきた。よっぽど楽しみなんだろうなあ。初心者調理セットの中に鍋だか薬缶くらいはあるだろう。あれを出してやろうかな。
数分遅れて私も食べ終えた。やっぱりタコス型が一番美味しいと思うんだがなあ。さて宿に戻ろうかと向きを変えると、掲示板が目に入った。掲示板とは言ってもプレイヤー御用達のあれではなく、本物の方だ。正確にはそれに貼られた新聞風の紙である。
『ニーギャング海賊団壊滅!謎の大嵐が原因か』
見出しの文字に目を引かれたのだった。ニーギャング海賊団と言えばブラックなお香を取り扱っているところだった筈だが、壊滅?大嵐のせいで?
「……大、嵐?」
記事を読んでいくと、この記事が書かれた一週間ほど前に海が前代未聞の大荒れになったのだと言う。雨かと思うほど飛沫が降り注ぎ、山も飲み込むような大波が押し寄せてきて、ニーギャング海賊団のアジトと言うか村が跡形もなくなってしまったのだそうだ。船も皆沈没してしまったのが見つかっているらしい。
時期もおおむねあっている。朝には嘘みたいに晴れていたと言うところもものすごく心当たりがある。これは例の鷹龍さんの怒りの発露ではないだろうか。あれは局所的な現象ではなかったのだ。海沿いの地域に被害が出ていない事を祈ることしかできない。
「大嵐ねー。そんなんありましたかねえ辰砂……どうしました、なんか顔色悪いですよ」
なんでもないよと首を振って私は足早に宿屋に向かったのであった。片棒を担いだ身としては、たとえ同情する余地がなくとも何となく落ち着かない気分である。
宿に戻ると、イッテツさんと女将さんが相変わらず難しい顔で食卓に付いていた。
「お久しぶりです。今日は部屋、空いていますか」
声をかけると二人共が慌てて立ち上がり、こちらに向き直ってくれた。
「まあ辰砂さん、お久しぶりですね。お元気そうで」
女将さんが親しげな笑顔を見せてくれる。この人も変わらず美人だ。
「久しぶりで……それに丁度良かった。新メニューを考案していたんだが、なんだか間が抜けた味なんだ。味見して見てくれないか」
イッテツさんも軽く会釈をしてくれる、のだが。急に皿を渡されても。皿に乗っているのは、おや?魚だ。白身がバターの海で泳いでいる。
「塩気が足りてないわけでもないんだが、何か足りないような感じでな」
渡されたフォークで早速一口食べてみた。うん、鯛っぽい味の魚自体に味がない。周りのバターの塩気はかなりきつめである、ソースを兼ねているのか。魚が淡白だから脂でフォローしようとしたのだろうか?
「魚に塩と胡椒を軽くするだけで随分良くなりそうですよ。後、使うバターは半分以下で充分ではないでしょうか」
切り身と同じくらいの大きさのバターを溶かさなければこんな風にはならない。
「バターを使った魚料理……が、今回のお題なんだ。もちろん量は問題じゃないんだよな、それは解っているんだが……」
悩むイッテツさん。ところで、お題とは何ぞや?
「ああ、この街にも魚が入る様になるって事らしくてねえ。あたし達にもよく解ってないんだけど、領主様が魚料理の品評会をするって発表なすってね。どうも御神託が下ったらしいのよ」
主神曰く、ニーウエスト湾は掃除したのでこれからは魚も沢山食べなさい、そして湾近くの農場の特産物のバターも魚料理に取り入れなさいと。第二回武闘祭に合わせてバターを使った魚料理の品評会を行うと言う事らしい。




