四畳半神話大全
閑古鳥が鳴いたのは正午。わたしは活気ある街を創造したはずだと、神ビルドは怒り任せにサラチスピアを大地に投じた。パクチーアボガドパプリカが売りの八百屋は衝撃波で消し飛び、ただの炭酸水に蜂蜜をぶっこんだものをビールだと言いはる酒屋は大地の裂け目に落ちて行った。年中二日酔いの大工が建てた民家はドミノ式に倒壊。巻き込まれた住人たちは駆けつけた天使たちによって次々に選別されていく。
「天国、地獄、地獄、天国、天国あ~もうビルド様のバカ野郎!」
天使たちの愚痴を耳にした住人たちは、天に向かって次々と中指を立てた。全員地獄行きとなった。
こうして一つの街が地図から消えた。神ビルドは天使を呼びつけると羽を毟り取ってメモ用紙とし、吹き出した血をインクに指でさらさらと何やら書きつける。
「来なさい天使イナテイツ」
天使イナテイツは怯えながら神ビルドの側に寄る。
「ここにメモした内容で街を創りなおす。他の神々に伝えて来なさい。お披露目パーティーは7日後だとね」
7日後―
「では発表致します。これが神ビルド作、自然との共存・共栄を掲げた未来都市、『トヨタウン』です!」
神々は絶句した。実に2千年ぶりの敗北だった。
「神の発想が、人の後塵を拝そうとは……」
神ビルドは「神の名折れ」として天界を追放された。今では愛知県豊田市の自動車工場に勤務し、世界一の車造りに携わっている。好きな時間は三時の休憩時間に飲む一杯の缶コーヒーとのこと。
天使イナテイツ:「これが本当のスクラップアンドビルド。なんつって(ぼそっ)」
天使イナテイツが次に目覚めた時、隣りでは元・神ビルドがいびきをかいていた。
「うそ、でしょ?」
寮に空き部屋はないので、二人は同居生活を始めることになる。羽を毟られる心配はなくなったが、イナテイツは今後いびきと生まれてしまった「欲求」への対処に悩まされることになる。