僕の暗い過去
この物語はブライアンの視線から見た天才てれびくんMAX夏のイベント「風雲!エドロポリス」の物語とその後である。ここでお願いだが、この物語には夏のイベント(以下夏イベ)で出てきたキャラクター以外も登場するが、キャラクターの崩壊がお嫌いな方にはこの物語はお勧めしない、また、本人様は一切関係ないので悪しからず。それでは、夏イベだけでは分からなかった秘密の世界が解き放たれるのをぜひご堪能いただきたい。
登場人物
ブライアン:この物語の主人公、ゴルゴンゾーラファミリーであることを隠し、日本に逃亡する。
小百合:この物語のヒロイン、エドロポリスを経営する父を支えるしっかり者
烈怒之助:小百合の父、何故だかバーンズ様のことが嫌い
ゴルゴンゾーラ、エドロポリスの隣でウエスタンシティジャパンを経営するブライアンの父
ノゾミ:ゴルゴンゾーラの次男、「システムエラー」の七世に片思いしている
マイケル:ゴルゴンゾーラの三男
卓也:HK学園笑芸部(以下笑芸部)の部長、日本でブライアンが初めて心を開いた相手
公輝:笑芸部の部員、文武両道で多才である
里穂:笑芸部のマネージャー、方向音痴で、天然ボケで、鈍感である
山川:笑芸部の顧問
寛平:笑芸部の初代部長、何故だか今の笑芸部に居候
バーンズ様:ブライアンがエドロポリスを去ってから小百合と付き合い始めたエドロポリスのルーキー
沖田竜一:エドロ新撰組の剣士
土方ちひ三:エドロ新撰組の女剣士
やぎっち十兵衛:エドロポリスの演者、自称・剣の達人
有沙:エドロポリスに居候する旅芸人のリーダー
エマ:旅芸人の一員、占い師
紫星:旅芸人の一員、中国拳法の達人
樹音:旅芸人の一員、猛獣使い
幸生どん:エドロポリスの演者、丸太を使った殺陣を見せる
キャサリン:ゴルゴンゾーラがブライアンのフィアンセに決めた相手、だが・・・
洸太:たまたまキャサリンを助けた探険家
ムゲン:株式会社「No.Z」のボス、世界中の娯楽施設を牛耳っている
郁哉:ロイヤルチェッカーズの捜査官、No.zのエージェントを追っているらしい
結花:ロイヤルチェッカーズの女捜査官、老人に扮してWCJに潜入
システムエラー:アメリカで人気の3人組アイドルグループ、バーンズ様を支援している
杏奈:HK学園生徒会長、かつて一時的に「システムエラー」に加入していた
1章 Meの暗い過去
「当便はワシントンD.C.発成田空港行758号便でございます・・・」
機内放送をぼーっと聞きながらMe・・・いや、気取るのはやめ、僕は、空港に着いたらどこへ向かおうかと悩んでいた。別にあてがあってわざわざあそこを“家出”したわけじゃないからな・・・。
僕の名前はブライアン。実を言ってしまうと、僕は、世界中に広がるレジャーランド「ウエスタンシティ」を経営するゴルゴンゾーラの長男だ。別に金がなくて困ってるでもなく、むしろ、他人に分けてやりたい。じゃあ何故家を出る必要が、それもあてなく出る必要があったかって??それには、僕らゴルゴンゾーラファミリーの暗い過去と現実があるから・・・。
僕には2人の兄弟がいる。マイケルとノゾミだ。僕たち兄弟は物心ついた時から、常にゴルゴンゾーラ・・・ダディーの姿を見てきた。ダディーは自分が経営するウエスタンシティのためなら、どんなに惨いことでもやっていた。ある時は、土地の経営者を騙して土地を奪い取り、ある時は辛うじてダディーの策略に気づいた人たちを様々な方法で脅し、時としてはそれをやってのけ、土地を奪っていった・・・。まだダディーだけでそれをやってくれるのは、ダディーの勝手だ。だけど、ダディーは土地を奪い、ウエスタンシティの勢力範囲を広げるために僕たち兄弟をこき使い、ダディーの命令に従順に従わせた。そして、二言目には「お前ら兄弟のためだ」と言って、僕たちの反論なんか許さない。
マイケルやノゾミがダディーのことをどう思っているか、本当のことは僕には分からない。だけど、少なくとももう僕はうんざりだし、もう“罪悪感”に耐えられない。ダディーのために全てに制限をかけられ、こんなに多感な時期なのに兄弟以外の話し相手や友達なんかいない一人ぼっちの生活。そして、何か役に立つことは、全て、罪の無い善良な人々を「土地を持っている」という理由だけで、騙して、時には傷つけること・・・。僕は忘れられない、騙されて土地を手放さざるを得なくなった人がダディーにしがみつき、必死で許しを乞う無様な姿を、彼らの涙でいっぱいの目を、何も悪いことをしていないのに・・・。
それでも僕は黙っていた。ゴルゴンゾーラの傘下にいるというとてつもなく大きな権力を手放したくなかったのかもしれない。だけど、ある時、僕の堪忍袋が切れた。もう権力なんてどうでもよくなった。
ある日のこと。
ダディーに呼び出されて、白い将校のような制服を着た僕はダディーのいる社長室へ行った。
入ると、社長机に座ってるダディーに写真を差し出された。その写真に写ってるのは・・・、まず絶対に僕のタイプじゃないし、女の格好をしてるけど、女であるかどうかも見当がつかない人だった。
「ダディー、これ誰??」
「お前には言ってなかったが、うちの企業戦略のために、お前にはこの女性と“結婚”してもらう。」
ダディーは淡白にそう答えたが、僕はこの一言がいろんな意味で信じられなかった。“結婚”だって?しかも僕に聞きもせず・・・。
「ちょっと待ってよ、ダディー、いきなりそんなこと言われたって。・・・第一、僕、まだ12だよ。」
「いや、あくまで婚約という話だ。だが今、挙式だけはしておこうと思ってな。」
挙式???正直、この時のダディーが正気だったとはとても思えなかった。
「いやいや、挙式って。ダディー、こんな部屋に呼び出してまで、冗談きついよ。」
「誰が冗談といった。」
「えっ?!・・・ちょ、何で僕に聞きもせずに、婚約なんか取り付けるのさ??!しかも、この人、女性であるかどうかっていう確信もないじゃん!!」
最後の一言がどうやらダディーの気に障ったようだった。
「その人は女性だ!!お前はこの人と結婚すれば、生活に困らないし、敵の多い我が社の唯一と言ってもいい商談相手になりうる方のご子息だぞ!!!」
僕の血管が音を立てて、ぶちぶちと切れ始めた。商談相手?!じゃあ、ダディーはこの社のために、僕にこの女と政略結婚させるのか、思春期でさえまだ向かえてなくて、これからどれだけ恋をするかわからない僕に???!!!!
「生活に困らないっていう保障、どこにあるんだよ!!!!!」
僕は思わず、ダディーに大声で叫んでいた。
「黙れ!!!!これはお前ら、ゴルゴンゾーラファミリーのことを思っての決定だ!!!!!・・・・3日後に挙式を挙げる。それまでに身辺整理をしておけ。これで用は済んだ。・・・さあ、出て行け!」
部屋から追い出された僕の頬をいつのまにか大粒の涙が伝い、拳を真っ白になるまで握り締めていた。
ダディーが怒鳴っているのを聞きつけたのだろうか、同じ制服を着たマイブラザー、ノゾミがやってくる。
「アニキ、どうしたの???ダディーすっごく怒鳴ってたじゃん。」
「あ、ノゾミ。実は・・・。」
僕はノゾミを社長室から十分離れたところまで連れ出し、ダディーが僕の結婚相手を勝手に決めたこと、僕の反論をすぐに却下したことを、話した。
「そうなんだ・・・。でも、ダディーはアニキのことを思って決めたんだから、結婚、したら??」
ノゾミはそう僕を優しくなだめてくれた。けど、ノゾミには悪いけど、いまいち納得いかない。僕が結婚相手を決めることは僕の自由にさせてくれ、それに物心ついた時から、僕はダディーの言いなりだ。・・・けど、ほんの少しだけ、ダディーは僕のこと、考えてくれてるのかなとも思ったし、それに、・・・正直な話、ウエスタンシティの傘下にいるという巨大な権力を手放したくなかった。
あれからあっという間に2日が過ぎ、結婚式前夜になった。僕は自分の部屋のベッドに寝転がり、ぼーっとしてた。これから避けようの無い束縛された生活がまた始まる・・・。
“悔しくねえのかよ。”
何やら頭の中で声が呟いた。ああそうさ、悔しいよ。だって勝手に結婚相手を決められたんだから。
“へえ、その整然として、いかにも『身辺整理しましたよー』っていう部屋を見たら、お前がただのバカ正直に権力に従う弱虫チキンにしか見えねえな。”
ダディーに逆らったら、どうなるか。それにダディー、少しは僕のこと、考えてくれてたのかも。
“ほお、自分が全く知らないとんだ極悪人かもしれない結婚相手を勝手に、しかもさっさと縛り付けとかんばかりに、この時期に決めて、挙式まで挙げようとする、滅茶苦茶な親父がか??それに、生まれてこの方、自由なんてもん味わったことねえお前さんにとって、クソ親父にめっためたにされるリスクと何も自分で決定することの出来る自由、どっちが大事だ。”
・・・。
“お前の人生、お前が自由に生きていけ。・・・さあ、そのために今お前がすべきことは何だ。”
僕はもう迷わなかった。時計を見る。真夜中の3時。十分に動く時間はある。
まず身辺整理した荷物を崩し、ありったけの必需品と持ち金をスーツケースに詰め込む。まだ金は足りない。そーっと部屋を出て、監視カメラや警備員の目につかないように、下に降りる。そして、銀行のATMで金(ウエスタンシティの口座から10000ドルほど、おろした。)をおろし、部屋に戻り、パソコンで急いで、飛行機の予約をした。行き先は、といっても僕はアメリカ人の母と日本人の父のハーフだ。基本、英語と日本語しか喋れない。けど、結びつきのあるイギリスやオーストラリアではすぐに見つかってしまう。かといって、英語を使う発展途上国に行くわけにも・・・。そうなったら、もうここしかない。日本だ。僕は成田空港行きの便を予約。まあ、結婚式は幸い非公開だ。それに、飛行機が飛び立つのは、今から1時間後、ダディーが起きるのは、さしずめ5時間後。遅すぎだね、ダディー。
問題は身分だ。もしウエスタンシティの社長の御曹司ってばれたら・・・、ふう、その為の10000ドルだよ。まあ、アメリカから発つ時は問題ない。日本に着く時、空港の人に大金を掴ませりゃ良いだろう。
さあ、神よ、逃亡決行のときが来たな。
スーツケースをひっつかみ、そーっと部屋を出る。さっきとおんなじで監視カメラや警備員を出し抜いて下に下りなきゃいけなけど、今度は目立つうえに、動きにくい。かなり苦労した。
やっとの思いで建物の外に出て、門までつかつかと歩く。やっとこれで、ダディーの呪縛から逃れられる、そう思って門の扉を開き、くぐり抜けようとしたその時だった。
「アニキ!!!やっぱり・・・。」
聞き覚えのある声が静まり返った庭に響く。今まで火照っていた僕の体が一瞬で、氷のように冷たくなった。
「やっぱり、出て行くつもりなんだ・・・。」
そこには、ノゾミとマイケルが息を切らして立っていた。まだ着ている制服が2人とも汗でびっちょりだ。
「お、お前ら、何でここにいるんだよ・・・。」
僕は自分ではなるべく落ち着き払ったつもりだけど、声がかすれてるのが自分で分かった。
「アニキがダディーの怒られたとき、アニキが腑に落ちなさそうな反応してるってノゾミが言ってたから、僕がノゾミにアニキを待ち伏せしようって言ったんだ。アニキとは長い付き合いだから、よく分かるんだ・・・。」
しまった、僕は悔しいやら、恥ずかしいやらで、頭がいっぱいだった。何だよ、僕はこれで完璧だなんて思い上がってたけど、2人には、兄弟には、敵わなかった。ちくしょう、僕は兄弟を軽く見てた。これで僕の自由になる計画もおじゃんだ・・・。
「・・・それで、ダディーに言うの?・・・」
悪あがきの一言が口から出てきた。そこには希望なんかない。けど、次にノゾミの口から出てきた言葉が意外すぎた。
「そんなわけないじゃん、アニキ。お、俺はざ、あ、アニギに、幸せになっでほじいから、とべない・・。」
ノゾミの声が途中から涙声になる。ノゾミ、こいつ・・・。
「そうだよ、俺たち、一番アニキと仲良しじゃん。・・・ってノゾミ~、泣きすぎだってー。」
マイケル、そういうお前だって目がまっ赤だぞ。そう思ってるうちに俺も涙と感謝の思いが嗚咽になって表れた。マイケルとノゾミがこんなに僕のこと、思ってくれてるなんて・・・。
「お前ら・・・ひっく、ありがとな。・・・たまには連絡もよこす。・・・本当にお前らを残すのはごめんだけど・・・ひっく、また、いつか、会えるといいな・・・。」
「アニキ、もう時間が無い、行かなきゃ。」
一瞬の静寂ののち、マイケルが急かす。
さあ、ここまでやったんだ、もう行かなきゃ。




