表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

飛べない鳥と生前

「ふ~ 歌った歌った」


ウイィンと音を立て、自動ドアが開く。高校一年生、少年 久茂村由羽は、夏の蓄熱をすっかり使い果たし、冷えたアスファルトに足を踏み出す。


頬を撫でる冷たい空気が、由羽の火照った肌を滑るように撫で


現在は11月の半ばPM9:30


夏の蓄熱を使い果たし、地面が冷えきった頃、季節は秋に差し掛かり、冬へと足早に季節を進めていた。


(去年の今頃は受験勉強で忙しかったな…)


そんなことを遠い目で考えている由羽は今日は、先輩と同級生諸君、つまり部活の面々とカラオケに来ていた。


「んじゃ、今日は此処で解散にすっか?」


大学受験真っ最中のハズの高校三年生、成田先輩が解散を告げると、「お疲れー」「早く家帰って風呂入りてぇわ~」などと口々に良い、それぞれの家路へと散っていく。


由羽も「お疲れ様です」と軽く挨拶をすまし、家路につく。


(そろそろ冷えてきたな…)


まだ今は11月だし、大げさかなと思ったのか、由羽は今日はマフラーを付けていなかった。


首元を冬を思わせる北風が通り抜け、思わずぶるりと身震いをする。


カンカンカンカンと音を立て、赤白の、実に縁起の良い縞模様の棒が降りてきたので、踏切の前で足を止めると、暫くもしないうちに電車がガタッゴトッと音を立て、通り過ぎる。


余談だが、電車が通った後に残る、この「フオォォン」という謎の音はなんなのだろうか? 不思議で夜も眠れない。まぁ後者は冗談だが。


街道に出ると、コートのポケットの中から着信音にしている、由羽好きなアーティストの音楽が流れる。


…ケータイに着信したメールは、勿論今別れたばかりの友人からのメールであるハズも、最近別れた元カノからのメールであるわけもなく、迷惑メールだった。


どうやら、由羽の最近登録した怪しげなエロサイトが問題だったらしい。


まぁ、思春期男児としてはこれがデフォルトなのだろうが。人生、一度や二度失敗を繰り返さないと人間は成長しないものだ。


由羽は『寧ろこれが正しく、健全な高校男児の姿だ』と割り切り、メールを削除する。


何か事件でもあったのだろうか? 由羽が大通りに出ると、パトカーが普段は鳴らさない警戒音である、サイレンの音が遠くから聞こえた。


今のサイレン音とは更々関係無いとは思うが、最近ニュースで市内に暴走トラックが出現しているというニュースも流れていた。経緯や理由などは一切解らないらしいのだが…


()(かく)、嗚呼世の中物騒だ、こんな日には…必ずと言っていい程、良くない事がおこる。


どういう不幸な境遇か、由羽は物心付いた頃から、生粋の『不審者誘引体質』だった。


小3の頃ストーカーに遭い、小5で誘拐された。


そして、中2の頃、由羽の妹は、兄に向かって突っ込んできた、酔っぱらいが運転するスポーツカー、『LAY MAYBY C10型』にはねられ、コンクリートに肺をうちつけ、死んだ。


「ふう…ちょっと急ぐか…」


意も言われぬ衝動に駆られ、由羽は独りつぶやき、歩調をはやめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ