英雄だけど装備は全裸と棍棒です
男は全裸だった。
身長百九十センチ。一分の隙もない、鍛え抜かれた鋼のような肉体。
短い頭髪に爽やかな笑顔と、白く光る歯。
それが彫刻であったなら、後世に残る芸術と呼ばれたことだろう。
英雄を迎える神殿の扉を開けたそのムキムキマッチョな男は、全裸だった。
背後からの逆光で、大事な部分だけは上手く見えないようになっていた。
「きゃーーーーーーーーーっ!?」
英雄に付き従い、導く使命を帯びた神殿の聖女ロミナは男を見て絶叫した。
今年で十八歳を迎え、心身ともに聖女としての資格を得たばかりの彼女は、周囲からの尊敬と羨望を集める女性であった。
高い魔法の才能だけでなく、恵まれた美貌と腰まで届く美しい髪、そして発育しすぎなほどに発育した豊満な肉体は、他人の視線を惹き付けてやまない。
名実ともに完璧なる聖女――それがロミナに対する周囲の評価であった。
そして今、彼女の眼前には筋肉モリモリ、全裸の大男が立っている。
あまりの衝撃に身動きできないロミナの前へ、男は笑顔のまま近付いて来る。
「いやーーーーっ! 来ないで!!」
例のアレを丸出しにした男に、ロミナは手近な本を投げ付ける。分厚い本が顔面に直撃しても、男は笑顔であり、そして全裸である。
「怖がらなくていいお嬢さん。私は怪しい者ではない」
ぶらぶらさせながら全力で矛盾している言葉を吐く男の姿を直視できず、ロミナは両手で顔を覆い隠す。
「なっ、ななな……なにを言っているんですかあなたはッ!? ここは英雄の神殿、あなたのような不埒な人間が出入りしていい場所ではないのです!!」
顔を横に向けたまま、ロミナは必死に叫ぶ。男はそこで足を止め、やっぱり笑顔のままで答えた。
「うむ、だからここへ行けと言われたのだが」
「……はい?」
「どうやら俺は、その英雄とかナントカらしいのだ」
ロミナは自分の耳を疑った。言うに事欠いてこの変質者は、自らを英雄と名乗ったのである。
「どこでそのような話を聞いたか分かりませんが、今すぐに出て行ってください! でないと衛兵の方を呼びますよ!」
「ん? 衛兵とは入口にいた、重そうな鎧姿の連中のことか?」
「わ、分かっているなら早く出て行っ……え?」
言いかけてロミナはすぐに気が付く。神殿の入り口には腕の確かな衛兵が数名配置され、そこら辺の酔っぱらいや変質者が近付けるはずなどないということを。
「あ、あなたはどうやってここまで来たのですか?」
下半身を見ないようにしながら、ロミナはムキムキマッチョの男に尋ねる。
「うむ、なぜか彼らは通せんぼしようとしたので、ちょっと組み合ったら向こうの方へ飛んで行ってしまってな、はっはっは」
腰に手を当てて高らかに笑う男に、ロミナは唖然とするしかなかった。
「と、飛んで行ったって……武器も持たずに神殿の衛兵を退けたというのですか!?」
「ふむ、どこかまずかっただろうか。気を失っているだけで死んではいないはずだが」
顎に手を当て考え込む全裸の男には、かすり傷ひとつ付いていない。目の前のありえない状況に、ロミナはただ困惑するばかりであった。しかし現実として、目の前の全裸の男が、並み居る衛兵を退けて神殿の中へ踏み込んできたのは事実である。とにかく状況を確かめなくてはと、ロミナは赤面しながら全裸の男に言った。
「と、とにかく何か身に付けてください。そのような格好で私の前に立たれては困ります!」
大きな声でロミナがそう言うと、全裸の男は少し困ったような顔をする。
「そうしたいのはやまやまなのだが……俺は服を着られないのだ。これは参ったな、はっはっは!」
「……えっ?」
全裸男の言葉を聞き間違えたのかと、ロミナはマヌケな声を出してしまう。服が着られないとは一体どういうことなのだろうか。
「お、おっしゃる意味が分かりません。服が着られないなんて、ふざけないでください」
「ふざけてなどいない。本当に俺は服が着られんのだ」
このまま話をしていても埒があかないと察したロミナは、神官が纏う布のローブを持ってきて全裸男に手渡す。
「馬鹿なことを言ってないで、まずはそれに着替えてください。お話はそれからです!」
ロミナの剣幕に押されたか、全裸の男は仕方ないといった様子で頭からローブを被り袖を通す。
「ほら、ちゃんと服を着られるじゃないですか。どうしてこんな破廉恥な真似を……」
ロミナがため息混じりに呟いたその瞬間、それは起こった。
すぽーん!
突如として、男が纏っていたローブがすっ飛んで行った。誰かが糸で引っ張っているかのような飛び方に、ロミナはただ目を丸くするばかりである。
「な、なんですか今のは!?」
「だから言っただろう、服が着られんと」
「そ、そんなはずは……!」
ロミナは床に落ちたローブを拾い、もう一度全裸の男に着せてみる。しかしさっきと同じように、ローブは男の身体からすっ飛んで行ってしまう。
「こ、こんなことは考えられません……もしや、あなたはタチの悪い呪いにでもかかっているのでは」
「呪い? そんなことをして誰が得をするというのだ。いや、それ以前に……」
全裸の男は腕を組んで考え込み、真剣な眼差しでロミナに言った。
「俺は誰なんだ?」
「……は?」
言葉の意味が分からず、ロミナはただ怪訝な表情を浮かべている。
「誰と言われましても……あなたの名は?」
「いや、それがまったく思い出せなくてな。自分が誰でどんな名前で、なぜここに居るのかもさっぱり分からん!」
どーんと自信たっぷりに語る全裸の男に、ロミナはただ唖然とするしかなかった。
「も、もしや記憶喪失というものでしょうか。頭に強い衝撃を受けたりすると、過去の記憶が無くなってしまうという話を聞いたことがあります」
「む、そうなのか。だが俺は別に怪我などしていないが」
全裸の男の言う通り、彼は特段怪我をしているようには見えず、出血なども見当たらない。
「と、とにかくあなたはその恰好といい、あまりにも怪しすぎます! 不本意ながら、あなたの素性を確かめさせて頂きます」
「ほほう、どうやって確かめるんだ?」
「わ、私はいずれ来たる英雄に仕えるため、聖女としての修行を積んできました。その修行で身に付けた秘術の中に、相手の素性を調べることのできる『解析の魔術』というものがあるのです」
「なるほど、それで俺を丸裸にしようというわけだな! いいぞやってくれ!」
すでに丸裸でしょうがとロミナは強く思ったが、ぐっとこらえて口には出さなかった。
「……本来、この術はみだりに使うべきではないのですが……仕方ありません。しばらくじっとしていてください」
ロミナは精神を集中し、淡い光を宿した手の平を全裸の男の腕に触れた。その瞬間、『解析の魔術』の効果によって、彼女の脳裏に男の情報が流れ込んでくる――はずだったのだが。
(えっ……?)
全裸の男には、なにもなかった。ひたすらに白い空白が続き、なんの情報も見えてこない。本当ならばその名は勿論のこと、好きな食べ物から毎日の習慣、これまでどんな人生を歩んできたのか、誰と関わって来たのかという光景が見えてくるはずなのに、この全裸の男はそれら全てが一切の空白なのである。
「あ、ありえないわ……こんな、まったく何も分からないなんて」
「む? もう終わったのか? それで、俺が誰かは分かったのだろうか」
「い、いえ……残念ながら、私の術ではあなたの素性を見ることは出来ませんでした。今までこんなことは無かったのに」
「ふむ、そうか」
全裸の男は少し考え込む様子を見せたが、すぐに顔を上げてガハハと笑い出した。
「まあ、後ろなど振り返った所でなにも始まらん! 俺が誰か分からんのなら、これから俺が俺を作ればいい!」
分かるような分からないようなことを言いながら、全裸の男は微塵も戸惑ったり迷う様子を見せない。ロミナは不覚にも、目の前の男が口にしたその言葉に共感めいたものを感じてしまった。
「と、とにかく分からない尽くしでは色々と困りますので、せめてここであなたの名前を決めてしまいましょう」
「ふむ、名前か」
全裸の男は自分の身体をまじまじと見つめ、そして力こぶを作ってみたり、分厚い胸板を眺めてみたりしてニヤリと笑う。
「マッスルというのはどうだ!」
とても爽やかな表情でそう言い切った彼は、どこかやりきったような眼をしていた。
「それは人の名前ではありません。却下します」
「な、なんだと! 良い名だと思ったのに」
「そうですね……では、マックスというのはどうですか。言葉の響きも似ていますし、殿方の名前として一般的です」
「おお、マックスか! 良いではないか!」
全裸の男もその呼び名が気に入ったらしく、目を輝かせている。
「では決まりですね。あなたはこれからマックスと名乗り生きていくのです。よろしいですか?」
「うむ、これで俺も一人の男として認められたというわけだな!」
「では改めて……私の名はロミナ。英雄に仕える聖女として、この神殿で暮らしています」
「ロミナか、美しい名だ」
躊躇いもなくそう返って来た言葉に、ロミナは思わず顔が赤くなってしまう。
「コホン……それではマックス、私からお願いがあります」
「ん、なんだ?」
「とにかく着れるものを探して隠してください今すぐ! 特にその! 主に下半身を!!」
全力にして切実なるロミナの願いが、英雄の神殿に響き渡るのだった。
「そ、そんな……」
山のように積んだ様々な衣服を前に、ロミナはその場で床に両手を付きうなだれていた。全裸の男ことマックスに対し、なにかひとつくらいは着られる服があるだろうと試したのだが、見事に全滅してしまったのだ。
「服が着られんというのも、なかなか難儀なものだな。まあ俺は別に気にしていないが」
「私が気にするんですッ!!」
両目を吊り上げて怒るロミナに、マックスの尻がキュッと引き締まる。
「まあ落ち着けロミナ。怒ってばかりいたら美しい顔が台無しだぞ」
「誰のせいだと思ってるんですか、まったくもう!」
「何事も焦りは禁物だ。こういうのはどっしり腰を据えてやるのがいい」
「いいえ! 可及的速やかに! それを隠す必要がありますッ!」
「なぜだ?」
「そんな恰好で表を歩くのは、世間一般では犯罪と言うんですッ!!」
そろそろ感覚がマヒしてきそうな自分に眩暈を感じながら、ロミナの叫びは虚しく響いた。ロミナがしくしくと散らかった服を畳んで片付けていると、神殿の外からにわかに騒がしい声が聞こえて来た。ロミナが表に顔を出してみると、神殿の前に広がる村の入口の方で、大きな音と悲鳴が聞こえて来た。
「あれは――!?」
ロミナは壁に立てかけていた魔術の杖を手に取ると、村の入口に向かって駆け出していった。
「グオーーーーッ!!」
村の入口に辿り着いた時、視界に飛び込んできたのは身長三メートル近くもある巨人の怪物、オーガであった。オーガは人間の大人ほどもある大きさの石斧を振りかざし、丸太で作った村の防壁を破壊、近くで槍や剣を手に牽制する村人たちをなぎ倒しながら前進してくる。現場に駆け付けたロミナは、武器を手に構える村人に尋ねた。
「なぜオーガがこんな所まで入り込んでいるのですか!」
「そ、それが……警備の兵隊さんたちがみんなノビちまってて、誰も止められなかったんだあ」
その瞬間、ロミナの脳裏に全裸の男の姿が浮かぶ。マックスと名付けたあの男が、神殿に辿り着く前に衛兵たちを排除してしまっていた。それがこんな状況へと繋がってしまったのである。
「魔物の相手は私が引き受けます! 皆さんは人と武器を集めて村の守りを固めてください!」
ロミナは魔術の杖を手に、巨大なオーガの前に飛び出し対峙する。オーガは巨体ながらも慎重かつ狡猾な面があり、不利だと見た相手には簡単に手を出してこない。それが姿を見せたということは、衛兵が居なくなった今が好機と見たからであろう。オーガは近くの地面に埋まっていた巨石を引っこ抜くと、軽々と頭上に持ち上げそれを投げつけて来た。
「きゃあっ!?」
巨石はロミナの近くに落下し、その衝撃で砕けた土や破片が周囲に飛び散る。それが目に入ってしまい、ロミナは顔を押さえてうずくまってしまった。
「し、しまった……!」
ズシン、ズシンと響く足音を立てながらオーガは近付いて来る。ロミナは目を閉じたまま魔術の杖の先を前方に向け、叫んだ。
「火球よッ!」
杖の先端から放たれた炎の球が、オーガのいる方向へと放たれる。だが視界を奪われたせいで狙いは外れ、火球は虚空へと消えていく。
「グルルル……!」
オーガはニタリと笑い、一気に跳躍してロミナとの間合いを詰める。そして目に入った土をぬぐい切れない彼女に対し、巨大な石斧を振り上げた。
「――!」
万事休すかと思われたが、いつまでも斧が降りてこないのを不思議に思ったロミナが顔を上げると、オーガの斧の柄を素手で受け止めているマックスがそこにいた。
「な、なにをしているんですか、無茶です! オーガは並の怪力ではないんです!」
「俺は感心したぞロミナ。こんな巨大な怪物にも臆さず立ち向かう……聖女という肩書、伊達ではないのだな」
「今はそんなことを言ってる場合じゃ……!」
ロミナの心配どおり、オーガは石斧を握る腕に力を込め、そのままマックスを圧し潰そうとしてきた。並の人間が十人束になっても一匹のオーガには太刀打ちできないとされ、その怪力は決して誇張されたものではなかった。
「むっ……!」
強大な圧力を受け、マックスの両足が地面にめり込む。オーガは長い牙の生えた口を開いてグフグフと笑みを浮かべ、いつまで耐えられるものかと言わんばかりである。やがてマックスはその場に片膝を付き、オーガの怪力の前には人間は無力なのかと思われた。だが、マックスは押さえ込まれながらも、なぜか嬉しそうな顔をしていた。
「ふふ、いいぞ……この圧力、大したものだ! だが聞こえないか? 俺の筋肉が震え、目覚めようとしている音が!」
石斧の柄を受け止めたマックスの全身から、ミチミチと肉が膨張する音が聞こえてくる。血管が浮き出るほどに隅々まで行き渡った力がひとつになったその瞬間、マックスは叫んだ。
「ぬんんっ……パワーーーーーーーッ!!」
その瞬間、マックスはオーガの石斧を押し返すばかりか、数メートルも後方へと弾き飛ばす。体格では圧倒的に劣るはずの人間に力で跳ね返され、オーガも驚きを隠せない様子であった。
「魔物よ、その程度で俺の鋼の筋肉を打ち破ることなど出来んぞ!」
マックスはその場に仁王立ちし、決して縮こまっていない堂々した姿を晒す。異様な光景に面食らったオーガは、やみくもに石斧を振り回して突進してきた。
「むっ……!」
対するマックスは素手であり、体格に優れ武器を持つ相手には圧倒的に不利である。力任せに地面に叩き付けられる石斧を避けてはいるが、それがいつまで続くかは時間の問題である。
「いけない、このままじゃ……誰か武器を――!」
ちょうどその時、村や神殿からかき集めた武器を満載した荷車が現場に到着した。ロミナは手近な剣を手に取り、鞘ごとマックスに投げてよこした。
「それを使ってください! 素手でオーガの相手をするのは無茶です!」
マックスは飛んできた剣を器用にキャッチしたが、その時またしてもあの現象が起きてしまった。
すぽーん!
マックスが握った剣は、服と同じように彼の手を離れ吹っ飛んでいく。
「う、噓でしょ……じゃあこれならっ!」
ロミナは続けて槍を両手で持ってマックスに投げたが、やはり彼が槍を握った途端、その手の内から槍がすっぽ抜けて飛んで行ってしまう。その後も弓矢、ナイフ、鎖鎌といった武器を次々に投げるが、やはりマックスの手に収まることはなかった。
「ど、どうなってるの一体!? こんなことって……!」
服はおろか武器さえも身に付けられないマックスに、ロミナはただ頭を抱えるしかなかった。その様子を見ていたオーガは勝機と見たのか、地面を蹴って一気に近付き、マックスを大きな拳で殴りつけた。
「うぐっ――!」
マックスは身体ごと吹き飛ばされ、武器を積んだ荷車に激突し、積み上がった武器の下敷きになってしまう。オーガは勝利を確信したのか、ニタニタと笑いながら一歩ずつロミナの方へ近付いて来た。
「ああ、そんな……女神よ我らを救い給え――」
ロミナが祈ったその瞬間、武器の山が崩れ、中からマックスが立ち上がって来た。
「人が悪いぞロミナ。あるじゃあないか、俺向きの武器が」
マックスの手には、彼の身長と同じくらいの巨大な棍棒が握られていた。それは大きく、分厚く、そして大雑把だった。棍棒の中でもひときわ巨大なそれは、まさにご立派であった。巨大な棍棒はマックスが握り締めても飛んでいくことはなく、静かに彼の手の中に納まっている。マックスは立派な棍棒を片手で振り上げると、真っ直ぐオーガに向かって言い放つ。
「さあ、もう一度力比べといこうか!」
オーガは石斧を振り上げ、猛然とマックスに向かって突進してきた。
「グオオオオオッ!」
オーガの振り下ろす石斧に対し、マックスは素早く棍棒を両手持ちにすると、下から上へと振り上げる豪快なアッパースイングを放った。
ガキィンッ――!!
棍棒とカチ合った石斧は弾き飛ばされ、遥か空の彼方に消えていってしまった。オーガが唖然としていると、マックスはもう一度振り上げた棍棒をオーガの脳天に叩き込む。
ドゴンッ!
棍棒の重量とマックスの腕力が合わさった打撃は、頑強なオーガすら一撃で脳震盪を起こす程であった。その場でよろめくオーガを見て、マックスは棍棒を真っ直ぐ頭上に掲げて叫ぶ。
「うむ、素晴らしいな! この棍棒、実に手に馴染む! 俺の相棒はコイツだったのだ!」
棍棒の柄を握り締め、マックスは自信に満ちた表情で笑みを浮かべる。
「冥途の土産に覚えておくといい。俺と棍棒のパワーがどれほどのものか! くらえっ!」
そう言うとマックスは棍棒を横に放ってオーガに組みかかり、強引に頭を下げさせて背中側から胴体を抱えると、頭が地面側に向いた格好でオーガの巨体を持ち上げ、そして叫ぶ。
「ダーーーーーッ!!」
気合い一閃、マックスは両足に力を込めてオーガの身体ごと跳躍すると、そのまま杭打ちのように脳天から地面に突き刺してしまった。
ズガアァァァン!!
上半身が地面に突き刺さったまま、オーガは手足をピーンと硬直させて動かなくなった。マックスはオーガの身体から手を離して立ち上がると、一仕事終えた漢の顔をしていた。ロミナと周囲の村人たちは目の前の光景の意味が分からず、ただ目を剥いて驚くばかりだったが、やがてその場の全員が口を揃えてこう言った。
「「「いや棍棒どこ!?」」」
マックスが一人勝利の余韻に浸っていると、その時不思議な事が起こった。彼の身体がキラキラと輝いたかと思うと、次の瞬間にはぴちぴちのパンツが装着されていたのだ。
「ど、どうなってるんですかそれ……?」
ロミナが震える声で指差しながら尋ねると、マックスは顎に手を当て首を傾げる。
「ふむ。たった今、俺の頭の中に声が聞こえてな。なんでも宇宙的なアレが絵的にマズイとかで、パンツだけは身に付けて構わんそうだ」
「……なにを言ってるんですかあなたは」
真剣に心の病気ではないかとロミナは思ったが、これ以上を突っ込む気力もなかった。
「俺にも分からんが、まあいいではないか! このフィット感、なかなか悪くないぞ! わははは!」
ご立派な棍棒を拾って肩に担ぎ、マックスは豪快に笑い続けていた。
疲れてうなだれるロミナは、まだ気づいていなかった。パンツ一枚すら身に付けていない姿で現れた変質者のような男が、彼女の運命を、そして世界の命運さえも握る英雄その人だということに。
そんな二人の珍道中は、また別の話である――。
なんなんですかねこの話
急に思いついたので書きました
少しでも笑えたら幸いです
ウケたら続きを書くかもしれません




