表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺もどき4

糖分

作者: 狐彪

三題噺もどき―ななひゃくはちじゅうはち。

 




「ふぅ……」

 溜息と共に、脱力しながら、背中を椅子に預ける。

 手だけは一応、マウスを操作はしているが、あまり意味のない動きしかしていない。

 もう片方の手は、椅子の肘置きにすらない。だらりと、落とした腕の肘が、その肘置きにぶつかって、絶妙に痛い。

「……」

 今日は、どうにも集中が続かない。

 仕事に手を付けても、どうにもならないまま。それでも容赦なく、時計はカチカチと秒針を進めていく。忙しないものだ。

 普段なら、その間にもさっさと仕事が進められているのに……今日はどうしたものか。

「……」

 ただ光るだけの物になった、パソコン画面をぼうっと見つめながら、くるくるとカーソルを動かす。何かを探しているわけではないのだけど……ただ何となく動かしているだけ。

 しかし、今日一日中この調子だと、全く仕事が出来ないので、どうにかしたいものだ。

「……」

 かと言って、何か確定的な原因があるわけではないので、対処のしようがない。

 まぁ、強いて言えば、久しぶりに変な夢を見たくらいだが……それだってもう既に記憶の中では薄れてしまっている。何があったかも忘れてしまった。夢なんてものは大抵そんなものだと思うのだが。

「……」

 外では、ごうごうと風が唸っている。風は最近、ずっとこの調子だな。

 それでも、昨日はかなりいい天気だったのに、今日は雲が覆っている。

 星は見えず、月も隠れているようだ。

「……」

 時計を見ると、長針と短針の両方が、丁度真上に向かおうとしているところだった。

 そろそろ昼食の時間がやってくる。

 それまでに、これだけは終わらせたいのだけど……。

「……、」

 このままうだうだしていていも埒が明かない。

 とりあえず、何かをして見ない事には始まりそうもない。

 そう思い、初めに手を出したのは、机の上に置いてある小さな籠だった。

「……」

 中には、数種類の飴玉が入っており、糖分が欲しい時にも丁度いいし、集中をするのにも案外私には丁度良く働く。ただまぁ、噛むと、口内を一緒に噛むし、失敗すれば欠片が歯茎に刺さったりするので、噛むことはお勧めしない。飴玉は舐めるものだ。

「……」

 適当に取った飴玉は、パッケージに桃のイラストが描かれていた。

 1パックに何種類か入っているものをよく買うのだが、その中でも桃は割と気に入っている。適当に取っているはずなのに、真っ先になくなるのは桃味だ。

「……」

 端の方を、ピリーと小さく開け、中身を口の中に放り込む。

 ジワリと滲むその甘さと、桃の香りに少しだけ、ほうと、息をつく。

 まぁ、コレで集中が戻るかどうかは別問題なのだが……。

「……し」

 なんとか、なりそうである。

 ただの糖分不足だったのだろうか。

 ……昨日あんなにドーナツを食べたのに。

「……」


 :


 それから、数十分。

 集中ができなかったのが嘘のように、仕事が捗った。

 甘味というのは、ものすごい効果を持っているらしい。

「……ご主人」

 気付けば、時計の針は二つとも真上を刺していた。

 それと同時に、戸が開き、聞き慣れた声が呼びかける。

「……昼食の時間ですよ」

「……ん」

 しかしこういう時に限って、きりのいいところまで終わっていないのは、なんという現象なのだろう。

「……早く来てくださいね」

「あぁ、すぐ行く」

 とりあえず、集中ができなかった分は取り戻せた。

 後は、昼食後の仕事でもこの集中が取り戻せれば完璧だ。

 ……開けっ放しの戸の奥から、いいにおいが漂ってきた。

 先に、昼食を頂くか。





「……だめだ」

「なにがですか」

「……今日はもう休む」

「珍しい……」













 お題:飴玉・噛む・滲む

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ