久しぶりのアルケー節
ギンの子供達はオス全員が銀白の毛を持ち、2匹のメスは灰色と白い毛をしていてオスとメスの区別がしやすかった
狼の子供達は2ヶ月もすると狩りの方法を学んだりし始めるのだが…彼らは違った
「ねぇお父さん遊ぼ」
「姉ちゃんヒマ?」
「お母さんゴロゴロしよぉ~」
そう、全員が人になってしまっていた…
ギンは自由に狼と人を切り替えていたが、子供達は一度人型に成るとしばらくは人のままで、なかなか狼の姿に戻れずに居たので、ギンが毎日のように狼に戻る練習相手をしていた…
そして子供達の間ではメリアは『お姉さん』らしく、皆がメリアをお姉ちゃんと呼んでいた。
「お姉ちゃん大変!子供が死んでるの!」
突然1番下の子がメリアを呼びに来た
「死んでる!?」
メリアは慌てて子供が死んでるらしい場所へギンや他の子供達と向かうと、ちょうど祭壇の陰に少年が横たわっていた…
「アルケー様!?」
「ん?メリアか…なんか変なのいっぱいいるね」
「ギンの子供達ですよぉ~カワイイですよねぇ」
死んでる…と、思われていたのは久しぶりに現れたアルケーであった…
「…つうか、何かな不完全な加護付いてない?ダレこんな下手くそな加護付けたの」
「こ、コレは…ノクス様に付けて頂いた子宝に恵まれる加護です。」
アルケーは、とりあえず加護を治すか?ノクスに指導するべきか?悩む…
「とりあえずその加護…ちゃんとしとくかなぁ」
「えっ?この加護を治すのですか?」
「ソレさぁ…本来ならメリアに作用しなきゃ成らないヤツが周囲に作用してるし(笑)ちゃんとメリアに作用してる加護…美化と愛情母性だけってウケるわ(笑)」
そう、イシュタルの本当に付けたかったのは性愛・娼婦の加護だったのだが、ノクスが未熟故に中途半端な加護になってしまっていたのだった。
「せっかく頂いた加護なので…出来れば外して欲しくないのですが…」
と、自分の姿が美化されてるのが取れてしまうのが嫌なメリアは、何とかこの姿だけは死守したかったのだ。
「ん~~…いま作用してるヤツ以外を外してしまおうか?」
「あ、それでお願いします。」
アルケーの気が変わらぬ事を願って即答するメリア
アルケーは、手を左右に振って何かを払うような仕草をしただけなのだが…
「こんな感じだなぁ」
と、加護の修正を終わらせてしまっていた。
「アルケー様、ありがとうございます。それから、お帰りをお待ちしておりました。」
やはりアルケーが居る…それだけでメリアはとても安心するのだ
そんなメリアにアルケーが唐突に聞く
「ねぇメリア、ギンを殺してくださいってルクスがうるさいんだけど…何かしたの?」
急にギンが狼狽え
「あ…え、えっと…」
と、言葉に詰まりあたふたしていたが、
「さぁ?何の事でしょうか?なんでルクス様がギンを?」
「わからん…」
メリアには身に覚えが無くて
「ギン、ルクス様に何か失礼な事したの?」
と、ギン本人に聞いていた…
「あ、あの、メリアの…その…純潔を、俺が…その」
「アハハ、解った解った(笑)そっちか(笑)」
「アルケー様、何の事でしょう?」
本当に心当たりが無くて困り果てるメリアにアルケーが説明する
「ルクスは聖女に純潔を求めるんだよ、だからメリアの純潔を奪ったギンを許せないんだよ」
あ…と、メリアはギンとの夜を思い出し赤面し始める。
「後、メリア…お前にも子供出来てるぞ?」
「…え?」
「へっ?」
ギンとメリアが揃ってポカンとした…
やったー!と、喜ぶメリアと『ルクス様に殺される…』と青ざめるギンだった。
「なぁメリア、お腹の子供とギン、どちらかをお前が殺さないといけないとしたら…どっちを殺す?」
「ぃやです!ぜぇったいに嫌!」
「なら、俺が両方殺すけど?良いな」
「やーーッ!なら私も殺してください!」
メリアは、アルケーが意地悪をしてると思い泣きながら自分の思いを話しだす
「シルバが死んじゃったの…私にはアルケー様とギンしか居ないの…やっと楽しく暮らせる家族ができたの…もう失うのは嫌です…」
ボロボロと大粒の涙を流しながらアルケーに訴えかけるメリア
「なぁメリア、ギンの血は特殊過ぎるんだよ、このままだと世界の半分がギンとその子供達の支配下になってしまうんだ…だから今のうちに殺す必要があるんだ。」
アルケーはメリアを諭す様にゆっくりと説明し始める
特にギンとメリアの間に産まれた子供達は、産まれながらに、いずれかの龍神の加護を持って産まれて来る事、ギンの子孫は必ず人狼しか産まれ無い事などをメリアに話す…
人狼とは、人族と獣人のいいとこ取り的な種族で寿命も人族並に長い、そして人族とも獣人とも、獣とも子孫を作る事が出来る特殊個体なのだった
「それでも…嫌です…私の大切な家族を私から奪わないでください…」
「アルケー様、俺が居なくなるだけで《ダメぇっ!ずぇったいにダメぇっ!》」
そう言うとメリアはギンの腕を掴んでギンを睨む…
「ずっと一緒に居ないとダメなの!ギンもシロも…この子達も…」
はぁ…
ポリポリと頭をかいてアルケーが渋々メリアに提案する
「なら、お前達の子供に制限を加えるが、良いな」
「制限?ですか??」
「そうだ、今後産まれる個体は全て女性で生涯『2人』しか産めない…で、どうだ?」
本当なら1人しか産まれ無い事したかったのだが、乳児の生存率を考えると1人は絶滅の危機に成るので2人にしたのである。
ギンはメリアの方を向いて聞く
「どうするメリア?」
メリアは、アルケーの方を向いてはっきりと伝える
「私は…私は、それで良いですのでギンやこの子達の命は助けてください。」
「安心しろ、制限を加えるなら、その子供達は普通に生きて死ぬよ」
こうして、メリアとギンはアルケーの提案通り『制限』を受け入れるのであった。
「よし終わり、何か食べに行こうよぉ〜」
まるで何事も無かったかの様に微笑むアルケーだった…




